第十二話 朝食バイキング part3〜「レストランのど真ん前に並んでる人は、私の見間違いですか? 見覚えのある人物が見えるんだけど。」
「あ、そろそろ時間だな。
じゃ、俺はバイキングの準備に戻るわ。
あの人らもそろそろ来るだろうし。
見張りがいないからって、ポテチ、むさぼり食うなよ。量を考えて食えよ。」
トラちゃんが呆れた顔で出ていった後、祥ちゃんは腕時計を見つめ、そう言うと、祥ちゃんは部屋を出るためにベッドから立ち上がった。
そして、立ち上がりざま、さっきみたいにぽん、と私の頭に手を乗せた。
大きくて優しい手で私の髪を梳くように1回撫でる。
「……………お?」
「……………ボソッ)あぁ、もう閉じたか、残念だな。」
さっき、祥ちゃんに髪梳かれて、熱くなったから、具合悪くなったかなって思ったけど、今度はなんともないな?
熱出たかと思って焦ったけど、気のせいか。
良かった。
熱が出たかと思って焦っていた私は、すっかり熱さが引いたことにホッと胸をなでおろす。
そんな私をジッと見つめた祥ちゃんは、苦笑いをして何かを呟く。
(相変わらず、蓋が固いし、閉じるの早いな…………。
まぁ、ストーカーも犯罪に巻き込まれることもない、この空間なんだ。
コイツに負担をかけることなく、コイツに合わせて動くことができる。
焦ることはない。
いつも攻めあぐねてたから、今回、ガルとガイルに当てられて、早まった行動しちまったけど、あれだけ動揺した姿が見れたんだから、上等だな。いいものを見れたわ。)
そんなことを祥ちゃんが考えてるとは知らず、私は呑気に熱がないことを喜んでいた。
そんな私たちの空気を変える音が響く。
『ピロン♪』
私の部屋に置いてる監視モニターから、小気味良い電子音とともに、聞き慣れたもふもふの声がスピーカー越しに聞こえる。
『しょうちゃ、早くあけて、みゃ!
みんにゃ、あつまってる! シロもごはんー!たべりゅのー!!おなかすいちゃ!!!!』
「……シロか?」
可愛らしい声が聞こえて、思わず祥ちゃんとモニターを見る。
モニターから聞こえてきた声は、ガルさんとコンビニでむさぼり食ってたシロちゃんだ。
………いや、あんだけ食べたのに、めちゃくちゃ、催促しとるやん………。
めっちゃ、元気だし………。
「…………シロちゃん、お腹どうなってんの?」
「研修中から、よく食うなとは思ってたんだ………。
特に鰹節が好きだから、蕎麦とうどん屋は任せられなくてな………。」
「………作る前に食い尽くされそうだね………。」
中華鍋振ってたの、中華の達人だからだけじゃなかったのか…………。
あの中華鍋さばき凄かったのに。
いや、好きこそものの上手なれか???
「………んで、祥ちゃんや。
可愛らしく、モニターにアピールしてるシロちゃんの後ろに見える、レストランのど真ん前に並んでる人は、私の見間違いですか?
見覚えのある人物が見えるんだけど。」
「…………俺も見えてるから見間違いじゃねぇな………。」
レストランの扉の前、陣取ってんの、あれ、ガルさんだよね???
あの人、つい数時間前まで、コンビニでむさぼり食ってたよね?
ロボ太にドン引きされてたよね???
なんか、獲物を狙う野生動物みたいな目で扉の目の前、占拠してんだけど???
グゴゴゴゴゴって音、聞こえるけど、え?ひょっとして、お腹の音????
このホテルに来た時はそんな音させてなかったよね???
ひょっとして、このホテルでは我慢しなくていいと思ってる????
いや、合ってるけども!!!
あ、シロちゃん、モニターにアピールするのやめて、扉カリカリしてる。
ガッツリ猫ちゃんじゃん。
「やめる、みゃ!!シロ、こっち、たべちゃ、めー!!」
「わがまま、め!!おつめ、ないない!!!」
「めぇー!!!!」
「やー!!たべりゅの!
もう、ごはん、ちゅくって、ならべてちゃの!!いっぱい!!
ばいきんぐ、ごはん、しろたち、がんばっちゃの!!
シロたちのおちごと、おわっちゃの!!!」
「しょうだけど、め!!おきゃくちゃま、おもてなち、しゅるのが、しゃき!!」
ご飯を最速して、カリカリするシロちゃんを慌てて、太郎ちゃんと二郎ちゃん、そして合流したトラちゃんが止めて、わちゃわちゃしてる。
………なんかかわいそうになってきた。
「…………祥ちゃん、昨日と違ってバイキングなんだから、ご飯食べたいなら食べさせてあげてもいいんじゃないかな………。
昨日は我慢させちゃったし。
今日は朝早くからみんなでバイキング準備したんでしょう?
冒険者さんたちが良いって言ってくれたらさ、食べさせてあげようよ。」
「……そうだな、昨日もコンビニでも、夕飯も頑張ってくれたし、後はセルフだしな………。
横について、バイキングの食い方を教えるって名目で食べさせてやるか。」
私がそう言うと、祥ちゃんは苦笑いして同意した。
祥ちゃん、やっぱり優しいね。
さすが私の幼馴染。
……………それはそうと、マジうるさいな?!
ガルさん、お腹になんか飼ってんの?!?!




