第十二話 朝食バイキング part2〜「フフっ………そっか、そっか。 なるほどね。」
「ごちそうさまでした! 美味しかったぁ」
そう言って私は、お布団にゴロンと横になる。
いやぁ~着替えなくていいって良いよね!!
学校もない、変態に追いかけられることも、ストーカーに神経張りめぐらせる必要もない!
ずっとゴロゴロしてられる。
最っ高!!
「あ、こら寝るな。髪くらい梳け。」
「えー………いいじゃん、誰かに会うわけでもないし。
めんどくさい。」
「はー…………ったく、仕方ねぇな。
今日はいいか……あ。待て、ルナ。
髪絡まってる。」
「マジでか。」
「おー。ほら起きろ。解いてやるから。」
「アザース。」
そう言って、祥ちゃんは立ち上がると、私が使ってるドレッサーから手慣れた様子でブラシを取ってきた。
「動くなよ?」
祥ちゃんが私の背後に回り、驚くほど優しい手つきで髪を梳かし始める。
すらりとした長い指先が髪を滑り落ち、絡まりを丁寧に解いていく。
「……あ、そこ、ちょっと痛いかも――」
「わかってる。だから動くなって」
そう言って、祥ちゃんが優しく髪を分けたその時。
彼の温かい指先が、ごく自然に、私の耳の裏にスッと触れ、ほんの一瞬掠めた。
「――っ!?」
その瞬間、私の背中に小さな電流が走った。
ビクリと身体が跳ね震え、そんな私に違和感を覚えたのか、祥ちゃんが耳元で声をかけた。
「ルナ?ごめん痛かった?」
「やっ………」
耳元で吹き込まれた声に、何故か昨日の祥ちゃんが脳裏によぎり、心臓が反応し、思わず声が出る。
いつもと違った、昨日の祥ちゃんが頭を離れない。
「…………」
そんな私の反応に祥ちゃんは黙り込み、私はそんな祥ちゃんを気にするところではなく、頭は疑問符でいっぱいになる。
………?????何じゃこりゃ????
いつも通り、髪の毛を梳いてくれてるだけだったのに………。
なんか、なんか………おかしい………。
心臓バクバク言ってる。
顔が熱い。
なにこれ、なんだ、これ?私、熱でも出たのか???
「────フッ」
しばらく混乱していると、後ろから吐息のような笑いが聞こえた。
思わず祥ちゃんを見る。
存外近かった祥ちゃんの顔は、口角を上げ、少し意地悪げに微笑んでいた。
…………めちゃくちゃ機嫌が良いじゃん
「フフっ………そっか、そっか。
なるほどね。」
「………なによ?」
「んー?いや、何でもないよ?
ガイルさんとガルさんに当てられて、動いた甲斐があったなと思っただけだよ。
ほら、絡まりは取れたぞ。」
そう言うと、ぽん、と最後に優しく頭を叩いてブラシを置く祥ちゃん。
………ん???なんで、ガイルさんとガルさん????本当になんなの????
「…………」
「………トラちゃん、なにその顔。
宇宙を背負ったチベスナ猫みたいな………。」
そんな私たちのやり取りを、ベッドの足元でじっと見上げていたトラちゃんは、尻尾をゆらゆらと揺らしながら、宇宙猫とチベスナ猫が合体したような顔で見ている。
………どうした????トラちゃん
「………あまあま、よくない。
トラ、くち、ちゅらい。
おくち、おしゃとう………。
………しょうちゃ、もっちょ、ストレート、れきない?じれったい。」
「トラ、お前何でストレートとじれったいだけ、流暢なんだよ。」
「は?ストレート?じれったい??何が???」
「…………たろちゃたちも、たべにゃいね…………。
トラ、おうましゃ、けるの、ないない、だから、もう、いく。」
「何で、今、太郎ちゃん、出てきた?!というか、何で馬?!」
わけが分からない私を置き去りに、太郎ちゃんの名前がいきなり飛び出してきたかと思えば、今度はお馬さんである。
しかも蹴るとか、ないないとか、何の話????本当わかんないんだけど????
馬と……フェンリルが関係あんの????
どういう意味????
「おう、トラもう行け。
余計なこと言うな。」
「祥ちゃん、意味分かんとんかい。」
「………はぁ。」
祥ちゃんには通じてんの本当なんなの???
で、私には教えてくれないの?
何でため息ついたの、トラちゃん。
いや、本当に出ていったし。
…………本当、誰か教えてくんない????
【作者より。祝・15万字突破&トラちゃんの言葉の答え合わせ】
いつも応援ありがとうございます!
おかげさまで、本日無事に15万字を突破することが出来ました!
これからも居心地の良い日常とコメディ、ジレキュンをたっぷりお届けして参ります。
さて、宇宙猫&チベスナ顔をしたまま、ルナちゃんのピュアな戸惑いと祥くんのニヤニヤを見ていたトラちゃんですが、彼が言ってたのはこういう意味です。
「たろちゃたちも、たべにゃいね」= ジレジレの甘酸っぱいやり取りは犬も食わない(トラちゃんは二人は番になると思っているので。)
「おうましゃ、けるの、ないない」= (他人の色恋に口を出して)馬に蹴られたくない。
ことわざを片言で喋ってました。
それを祥くんは勘づいたんですね。
チベスナ顔で見上げるトラちゃん、中身は意外と苦労人(?)でした。




