第十二話 朝食バイキング part1〜「ハハッ、リスかよw」
「ルナちゃ!おきて!!」
「…………んぁ?」
夢も見ないほどの深い眠りについていた私は可愛らしい声で目を覚ました。
顔まで被っていた布団を下ろし、寝ぼけ眼で声がしたほうを見下ろす。
「ルナちゃ、もうしちじ、みゃ。
おきて、ごはん、たべりょ?」
そう言ってキュルンという顔で首を傾げるもふもふ───ケットシーのトラちゃん。
「………おはよー、トラちゃん。
…………あれ?君、エルマさんについてたんじゃ………?」
「エルマちゃ、おきた。
きがえちゅう。
ぼく、でてきた」
「…………トラちゃん、紳士だね。」
「じょせい、はだか、みないみゃ。
みていいの、つがい、だけ。」
「本当に紳士だな?!」
祥ちゃんが、この子たち大人だって言ってて、実感なかったけど、実感出てきたわ!!
めちゃくちゃ一本筋の通った雄だね?!
めっちゃ、ジェントルマン!!
「しょうちゃ、いっちぇた。
らから、トラ、ちゅる。」
「祥ちゃん、教育かぁ………」
祥ちゃんの影響も受けてたか。
祥ちゃん紳士だもんなぁ。
昨日も女性陣、虜にしてたし。
……?あれ?そう言えば、途中から女性陣、祥ちゃん口説くのやめたな?なんでだろ?
そう考えて、首をかしげたその時。
ピッ、と小気味良い電子音を立てて、部屋のドアロックが解除される音が聞こえた。
「あ」と思うよりも早く、ガチャリとドアが開いて、長身の影が滑り込んでくる。
「おい、ルナ。起きてんのか」
低い、聞き慣れた声。
祥ちゃんだ。
「おはよー、祥ちゃん。」
入ってきた祥ちゃんには驚かない。
スペアキー持ってるしね。
……でも、この部屋決めた時、スペアキーを祥ちゃんに渡すのは、当たり前だなって思って渡したんだけど、頭抱えてたんだよね?
あれ、なんだったんだ????
「意外だな。まだ寝てるかと思ったのに」
「トラちゃんに起こされました。」
「えっへん。」
「えらいぞ、トラ。」
私の言葉にトラちゃんは胸をはり、祥ちゃんは足元のトラちゃんに視線を落とすと、その小さな頭を、大きな手で褒めながら、ぽんぽんと撫でた。
トラちゃんも喉を鳴らして嬉しそうに尻尾を振っている。
そして、トラちゃんを撫でた後、すっと私に視線を向け、じっと見つめる。
………?何?
(………動揺は無し………っと。
まぁ、予想通りだな。
ちょっとでも、疑問に思うようになればいいと思っただけだし。
昨日の反応が、見れただけで良しとしようか。)
「お前、朝飯はここで食えよ。ほら。」
じっと見つめてた祥ちゃんは、すっと目を逸らし、そう言ってサイドテーブルにトレーを
置いた。
トレーの上には、バランスを考えつつも、私の好物ばかりだ。
うちは朝食といえば和食なので、豆腐の味噌汁、目玉焼きとウインナー、白ご飯、春雨の酢の物、半分に切ったみかん、麦茶である。
「朝食バイキングから取ってきた。
本当は自分で選びたいだろうけど、ごめんな。
お前が会場に行くと余計なラルクとの遭遇が発生するから。」
「なんかやっぱり含みない?
あの人たちなら大丈夫だろうけど(ラルクさん以外)。」
「お前も含んでんじゃねぇか。
ほら、早く食えよ。」
「祥ちゃんは?」
「俺の分も持ってきてるから。」
そう言うと祥ちゃんも、もう一つのトレーを私の向かい側に置いた。
「「いただきます。」」
2人で手を合わせて、祥ちゃんが運んでくれた大好きなメニューに箸を伸ばす。
豆腐の味噌汁から立ち上る出汁の優しい香りと、つやつやの白ご飯。
一口食べるたびに、美味しいご飯の幸福感でどんどん満たされていく。
「おいひぃ。」
「ハハッ、リスかよw」
「しょおちゃんにいわれたくない。」
祥ちゃんだって、めちゃくちゃ頬張って、リスみたいになるくせに。
そんなことを考えながら、もぐもぐと幸せそうに口を動かす私を、祥ちゃんは自分の味噌汁をすすりながら、少しだけ満足そうに、だけどどこか呆れたような優しい目で見つめていた。




