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第十一話 それぞれの夜 part2〜「とちゅげき──!!」

「やっぱり気になりますよね?!」


エルダの言葉に真っ先に乗っかったのはサラだった。

ベッドの上でごろんと寝返りを打ち、身を乗り出すようにして声を弾ませる。


自慢ではないが、自分や妹が人よりも目を引く容姿をしているのは分かっている。

評価され、世の男性からどんな目で見られているのかも。

しかもここにいる女性陣は、冒険者ギルド中でも、実力は言わずもがな、その上で美貌までセットで讃えられることが、通例になっている面々だ。

そんなメンツからアプローチをかけられても、平然とし、躱したあげく、あんな表情をさせるのだ。

気にならないはずがない。


「あんなにイケメンなんだから、女の子もやっぱり可愛いのかな?!

やっぱり、すっっっっごい、美人だったりするのかな?!??!

もしかして、この国一番の美女って言われてる王女様以上だったりして!!!」


「あらあら、サラさん、不敬ですよ。

怒られてしまいます。

…………でも、ふふ、そうですね。

あれほど仕事ができて完璧なショウさんが一途に想い続けている方ですもの、きっとお優しくて素敵な方なんでしょうね……」


ソラもふかふかの枕を抱きしめながら、ウキウキ想像を膨らませ、エルマがそれに注意しつつも、楽しげに話に乗る。


限界だったはずの女性陣の眠気はどこへやら、部屋の空気は一瞬にして熱を帯びた、恋バナへと切り替わっていた。


「幼馴染って言ってたよね?!」


「小さい頃から、ずっと一緒ってことでしょ?!

許嫁だったりするのかな?!」


ミーナとマイナもキャッキャと話に加わる。

食堂と金物屋の娘である2人には、このホテルといい、祥といい、何処か現実味がない存在で、だからこそ末席でも、あのいい男の妻に収まりたいと最初は思ったのだ。

極楽のような生活が送れたうえに、実家のためにもなると。


この世界において、地球のマウント的な意味合いではなく、切実に嫁ぎ先がステータスにも関わってくるのだ。

力も何もない男よりも、いい男の第2夫人。

そんな世界である。


そんな世界で上澄みどころの話ではない男を、一気に手が届くのではないかと錯覚させる顔、それでいて完敗したとここにいる女性陣に悟らせるような顔をさせる女。


そして何よりも、ミーナとマイナに一番響いたのは、幼馴染という言葉だった。

それまで遠いおとぎ話の登場人物のようだった祥という存在が、その言葉一つで、一気に現実味を帯びて目の前に降ってきたのだ。

あんな完璧な男にも、自分たちと同じように育った子供時代があり、その頃からずっと心の真ん中に一人の女の子を囲い続けている。

そんな話、盛り上がらないはずがない。


「………ねぇ?トラちゃん?」


エルダの何処か甘い声が、それでいて鋭い視線が、部屋の隅で大人しく控えていたお世話係のもふもふ達へと向けられた。


「ショウさんの仕事仲間、このホテルの従業員なら、絶対に知っているでしょう?

ここのオーナー、ショウさんが好きな女の子ってどんな女の子なの?

どんな見た目で、どんな性格をしてるのかしら?」


「にゃっ?!??」


エルダの声に思わず、素っ頓狂な声を上げるトラ。

そんなトラを無視して、エルダはもふもふの代表者として、トラをベッドの上へひょいと引っ張り上げた。

女性陣のきらめく十二の瞳に包囲される。

トラは、全身の毛を逆立てて硬直し、心なしか冷や汗をかいているようだ。


(あ、あー………そうらよね。

きになりゅよね、しょうちゃ、わかりやちゅい、にゃ。

ぼくたちも、ちゅぐ、わかっちゃち………。

ルナちゃ、きじゅいて、ないち…………。

どうちよ………いっちゃ、らめ、らし…………。)


包囲されつつも、困ったように考えるトラ。

そもそも、あれほどわかりやすい祥がいけないのだ。

あそこまでわかりやすいのであれば、さっさとルナを番にすればいいものを。

まぁ、ルナのことを観察すれば、攻めあぐねるのも分かるが。


さて、どうする。

亀並みに進んでる、あの二人の邪魔をするわけにはいかない。

この世界の常識的に、脈があるなら行く!!脈がなくても行く!!!!という押せ押せアプローチが主流だし、そんな常識の中、女性陣の身を引かせた祥がすごいのだ。


それに、ケットシーやフェンリルはメスが選ぶのが普通。

女にアプローチをかけれない雄は雄ではない。

そういう価値観がありつつも、トラは祥とルナを応援しているのだ。


同じく押せ押せアプローチが主流の女性陣に事情を話せば、巡り巡って邪魔になりかねない。

いや、本人たちは邪魔してる気はないし、この世界の人物だったら、キューピットにしかならないのだが。

この世界は、ジレジレ恋愛に向いてない。


………さて、どうするか………。


そう、考え込んで反応がないトラに痺れを切らしかけて、チラチラと他のもふもふへと視線を向け始める女性陣。

それにまた、うーん………とトラは考える。

自分は口を割ることはない。

だが、自分だけでなく、このまま追及され続ければ、うっかりルナや祥の関係性を漏らしてしまう、もふもふもいるかもしれない。


(────ん、ルナちゃとしょうちゃ、まもりゅ!!!かくにゃるうえは!!!)


「とちゅげき──!!」


「「「「「「とちゅげき──────!!!!」」」」」」


「「「「「「え?」」」」」」



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