第十話 部屋決め part1〜「ショウさんが言ってた、お姫様つーのを存分に楽しんでくれ。」
それから、さらにどれほどの時間が流れただろうか。
最終的にガルが何杯のラーメンを胃袋へ吸い込んだのかは、ガイルたちの精神衛生上の都合により、あえて数えるのを割愛された。
「……ふぅ。ごちそうさまでした」
「信じられない美味しさだったわ……。生きてて良かった……」
女性陣が食事の余韻に浸りながら幸せな吐息を漏らし、男性陣も全員がスープの一滴まで綺麗に完食した。
いつも、過酷な冒険をしている冒険者一同の心と胃袋は、かつてないほどの幸福感で満たされ………
「シロ、俺はもう一杯………」
「ガル、お前。いい加減にしろ。
ここへは仕事で来てるんだ。
泊まる部屋だって決めなくちゃならねぇし、明日にしろ。」
………一人満たされていなかったらしい。
本当にいい加減にしろ、ラルクといい。
「何で、そこで、俺出てきた?????天の声さん??????」
「ラルクちゃ、うるちゃい。
てんどん、ないないよ。」
「だから、何で、太郎、お前はそんなに辛辣なの????」
相変わらずの太郎のラルクに対する辛辣な発言が繰り広げられる中、タイミングを見計らったかのように、祥が笑みを浮かべて各テーブルの近い場所に近づく。
「皆様、お口に合いましたでしょうか?
全員、お食事を終えられたようですので、次はいよいよ当ホテルのメインである宿泊エリアのモニター体験に移らせていただきますね」
「あ、あぁ……! ショウさん、本当に美味かった。最高の料理をありがとう」
ガイルは満足感に深く頷き、祥へ笑顔を返した。
事前に説明を受けている通り、彼らは祥やここのオーナーであるルナから、冒険者ギルドを介して、ホテルの様々な宿泊設備をテストするという依頼を受けているのだ。
彼らはただもてなされるだけでなく、冒険者ギルドの代表としてこのホテルの実力を正しく評価する役目がある。
「さて、先ほどご紹介した通り、当ホテルには趣向の異なる3つの宿泊エリアがございます。限られた空間を機能的に使う一階の【エコノミーフロア(カプセルホテル)】、プライベートが守られる【ビジネス個室フロア】、そして広々として贅沢な造りのシティホテル風ビジネスフロア。
今回はモニターですので、皆様で分かれて、すべてのエリアの寝心地を試していただきたいのですが、いかが致しましょうか?」
祥がそう言って微笑むと、ガイルが「そうだな…………」と腕を組んだ。
「誰がどの組み合わせで泊まるかが、重要だが………どうする?」
そのガイルの言葉を皮切りに、お腹いっぱいで少し眠くなってきた10人の間で、大真面目な(しかしどこか楽しげな)部屋割り会議が始まった。
「私はやっぱり、シャワーがついてる部屋がいいわね。」
楽しげにエルダが言うと、女性陣から同意の声が上がる。
いくら大浴場があろうとも、自分専用のお風呂という魅力には抗えないのだろう。
キャッキャッと楽しげな女性陣、そんな女性陣を見て、ガイルとガル(まだまだ食べ足りない男)、レオンとラルクが、無言のままアイコンタクトを交わした。
全員、瞳を合わせれば、皆同じことを考えていることが伺える。
同じタイミングで頷き、女性陣へと向き直った。
「よし。それじゃあ、一番広くて設備が良いシティホテル風ってエリアは、全員女性陣に譲る。
せっかくの機会だ。
ショウさんが言ってた、お姫様つーのを存分に楽しんでくれ。
…………ガル、レオンにラルクも。
お前らもそれでいいな?」
「…………嗚呼。異論はない」
「ん。俺はエコノミーフロア、カプセルホテルっての楽しみたいし。いいよ、兄貴。」
「俺も!天井高いし、秘密基地みたいで、男心くすぐられるし、良いっすよ!!」
ガイルの言葉にガルは頷き、レオンは楽しげに同意し、ラルクは先ほど見た、カプセルホテルエリアに目をキラキラと輝かせて、期待を膨らませ、大はしゃぎしている。
「まぁ! ガイルさんたち、本当にいいの?」
「さすがガイルとガルね!!男気があるわ!
レオンと………愚弟も、ありがとう、いい所あんじゃない。」
「え?俺、良いことしたのに愚弟扱い直んないの????」
「お姫様ですって!! ふふ、なんだか照れちゃうけど、すっごく楽しみ!」
ガイルたちの言葉にエルダ、サラ、ソラは嬉しそうな声を上げ、他の女性陣たちは彼らの紳士的な気遣いに顔を輝かせ、キャッキャと大喜びで歓声を上げた。
自分たちのわがままを受け入れてくれた男たちの優しさに、テーブルの空気は一気に華やかで幸福な空気に染まる。
(若干一名、スルーされていたが。)




