第九話 実食 part1〜「ちゃんと自信持って否定してくれない?! 天の声さんよ?!?!?!」 「ラルク、お前、空中見て何言ってんだ?」
「おいちく、できた、みゃ!!」
「たべてー!」
「「「「できた、みゃ!!」」」」
「「「「たべてー!!」」」」
「ありがとう、もふもふたち。
さぁ、皆様、こちらのテーブルへとお座りください。」
祥に導かれ、冒険者たちはテーブルへ。
そして、トラや太郎、そしてもふもふ部隊の手によって、注文の品は一度赤いラーメンカウンターと木のお蕎麦カウンターへと運ばれ、カウンター内から、もふもふたちは表へと周り、十匹全員が背伸びをしながら、注文された商品を手に取った。
自分の身体の半分は覆うと錯覚を起こすほどの大きさと、それになみなみとスープが注がれた熱々の丼や冷やしてあるといえど、バランスを保たなければいけないトレーを短い手でしっかりと抱え、もふもふ部隊が「よちよち、トコトコ」という足取りで危なげにバランスを取り、テーブル席へと歩みを進める。
「お、おい……危ねぇぞ!?」
「ひっくり返る! スープがこぼれるって!!」
「危ないわ!もふもふちゃんたち!」
それを見たガイルをはじめとする、冒険者一同が、一斉に腰を浮かせて焦り出した。
自分たちが座り、あのような幼子に熱いものが入った食べ物を運ばせるなんて、今まで散々世話を焼かせたと言えど、流石にこれはありえないだろう。
凄腕ホテルマンと言えど、まだ赤子なのだ。
たまらずガイルが声をかける。
「おい、トラ、太郎!!
危ないから俺たちが持つ!渡せ!!」
「らめ! これは、トラたちの、しごと、みゃ!!(フンス)」
親切心からガイルは丼を受け取ろうと手を伸ばし、それをよちよち歩いていたトラが、ドヤ顔でトレーをガイルから遠ざけ、それに戸惑った顔をするガイル。
一方、その横では太郎が持つトレーを受け取ろうとしていたラルクが、目を丸くして驚いていた。
「太郎、無茶すんな………って強っ?!
お前どんだけ力あんの?!」
「たろう、そんにゃに、ちゅよいほう、ちがう、たろう、もふもふ、なか、ふつう。」
「マジか?!そういや、お前、俺のこと飛び蹴りで吹き飛ばしたもんな?!(浴場参照。)
いくら勢いを味方にしたとはいえ、そんな小さいのに!!そりゃ力あるよな?!
つーか、そんなに力あんのに普通なの?!
ひょっとして、手加減してた?!」
驚くべきことに、体格が良い彼がどれだけ力を込めても、その小さなモフモフの手から丼は1ミリたりとも動かない。
その事にラルクは戦慄する。
(………これ、こいつらがマジで命取りに来てたら、俺ヤバかったんじゃ????)
気づいたら、心臓に悪いことを気づいてしまったラルク。
もふもふ達はその種族、フェンリル、ケットシーであるがゆえに、素の力も強い。
その上で、ルナのスキルの影響、ホテルの加護を受けたので、見た目からは想像もつかない腕力、脚力を持ったのだ。
本気で自身の命を心配するラルク。
………大丈夫だ。お前は本気で命取りに来られても死なない。
多分、恐らく、きっと………。
「ちゃんと自信持って否定してくれない?!
天の声さんよ?!?!?!」
「ラルク、お前、空中見て何言ってんだ?」
急に叫んだラルクに首を傾げるガイル。
そんな2人のやり取りを見ながら、横を歩いていた太郎がピシャリと言った。
「ラルクちゃ、ごはんのまえ、さけばない、きたにゃい、くちチャック。」
「あ、すんません。」
その太郎の顔を見て、恐ろしい姉たちの顔を思い出したラルクは思わず背筋を伸ばした。
流石の姉にシバかれても懲りないラルクも、腐っても冒険者。
友好的とはいえ、魔獣の本気の力を見てふざける事は出来なかったらしい。
「優しいもふもふたちで命びろいしたよね、ラルク。」
「流石の俺も危機感がないわけじゃねぇ。」
「危機感あったんだ………。
サラさんたちにあれだけやられても、本なんか買ったからないかと思ったよ。」
「あれは男の嗜みだ」
「お前、もう一回、もふもふから蹴りくらえば。」
「相棒に辛辣すぎんだろレオン。」
………いや、ふざけてるのかもしれない。
そんなことがありつつも、よちよちと進み、熱々の丼と冷やしやざるものの料理をテーブルへ綺麗に並べてみせた。
その瞬間、先ほどよりも強く立ち込める、美味しそうな香り。
その香りにもうたまらないというように、冒険者一同は争うように席についた。




