第七・五話 食事処導入part2〜 「まだ食うのかよ?!つーか、なんだ、その呪文?!」 「ガル様、何処でお知りになられたんですか、それ。」
「ただ見せるためだけに腐らせるなんて……」
「確かにわかりやすいですが、神の恵みをあんな風に………」
贅沢の極みのような光景に驚愕と腹立たしさが綯い交ぜになった顔で冒険者たちは祥を見つめる。
そんな冒険者たちの誤解を前に、祥は何事もなかったかのように美しい笑みを崩さず、口を開いた。
「どうぞご安心ください、ガイル様。
あちらに並んでいるものは、本物の食べ物ではございません。
我が祖国の職人が、樹脂などを用いて本物そっくりに作り上げた模型、食品サンプルと呼ばれるものでございます。」
「……模型? 偽物だってのか……!?」
ガイルが目を見開く。
言われてみれば、料理から湯気は立ち上っておらず、スープの表面も完全に固まっている。
他の冒険者たちも気付いたのか、どよめいた。
それに祥は微笑み続ける。
「ええ。どのようなお料理か、お客様が一目で見て分かりやすいようにと、考えられた物ですよ。
皆様にはこちらの食品サンプルを見て、選んでいただければ、もふもふたちが調理いたします。」
そう言って、祥がチラリと視線をやると、いつの間にかスタンバイしていたもふもふがフンっと胸を張った。
………このもふもふ、調理までいけるのである。
一体どこまで行こうと言うのか…………。
「マジか、あの肉の照りも、スープの輝きも、本物だったぞ?
どんだけ、規格外なんだよ、ショウさんの故郷。」
若干引きつつもガイルが呟き、後ろの他の冒険者たちも驚きが隠せず、呆然としている。
そんな冒険者たちを尻目に、厨房の換気扇が勢いよく回りだし、ブオンとという音と共に、香しい匂いが、冒険者たちの鼻腔をくすぐった。
((((((((((……っ!!!???))))))))))
そのあまりにも香しい匂いに全員がゴクリと唾を飲む。
その食欲を刺激する香りに、十人の冒険者たちは言葉を失った。
そんな彼らに、祥は続ける。
「こちらのレストラン2店は、我が国で好まれている、ラーメンという食べ物とお蕎麦・うどんのという食べ物のお店です。
2つにカウンターが分かれておりまして、赤色はラーメン、木製お蕎麦とうどんのお店です。
あちらの食品サンプルの中からお好きなメニューが決まりましたら、それぞれのカウンターのモフモフたちへお申し付けください」
祥に案内に促され、ガイルたちは再びガラスケースへと視線を戻した。
本物としか思えぬ食欲を刺激するサンプルと、強烈な旨味の暴力と言っていいほどの香りが、彼らの脳内で結びつき、胃袋を直接掴んで激しく揺さぶられているように感じる。
特にガイル、ガル、レオン、ラルクの男性陣4人は、ガツンと脳を揺さぶられるような濃厚なラーメンの香りに一瞬で気を持っていかれ、吸い寄せられるように赤いカウンターへと歩き出す。
ガルはラーメンを興味深そうに眺め、レオンは半チャーハンセットを、レオンはつけ麺に興味津々だ。
ガルにいたっては、先ほどプリン30個を完食したのにもかかわらず、大盛りチャーシューメンのサンプルに釘付けである。
どれだけ食べるつもりなのだろうか。
一方、お出汁の上品な香りが漂うお蕎麦とうどんのエリアには、エルフのエルダ、エルマ姉妹をはじめとするサラ、ソラ、ミーナ、マイナの女性陣が引き寄せられていて、鰹節と昆布の和風出汁の匂いが優しく、女性陣の鼻腔を刺激している。
「こっちの、エビの…これってフライかしら?珍しいエビのフライが乗った蕎麦って麺が入ったスープ、とても美味しそう、私これにしようかしら。」
エルダが浮足立ったように呟き、他の女性陣も各々、エルマは冷やしうどんを、サラはざる蕎麦を、ソラはきつねうどんを、ミーナはシンプルなかけ蕎麦を、マイナは鍋焼きうどんを選び、女性陣6人は木製の蕎麦カウンターの前へと並ぶのだった。
「おーだー、どうじょ、みゃ!」
「おうかがい、しゅる!!」
それぞれのカウンターの奥で、エプロンをシャキッと着こなした厨房担当のもふもふたちが、レードルや麺茹で用のザル、テボを構えて、キリッとした表情で冒険者一同を見た。
そんなもふもふたちとこの世界とは違う注文形式に戸惑う冒険者一同だったが、そんな冒険者一同の中からすっと飛び出す、男が一人。
「…………チャーシュー麺、麺マシマシ、チャーシューマシマシ、大盛りで頼む。」
「まだ食うのかよ?!つーか、なんだ、その呪文?!」
「ガル様、何処でお知りになられたんですか、それ。」
甘党吸引器のガルだった。
ご飯吸引器でもあったらしい。
そんなガルにガイルと祥は突っ込む。
こうして、まぁ、ガルのおかげで注文が開始したのである。
(第七・五話・完。第八話続く。)




