第七話 異世界ギャップ〜レジ編 part10&食事処導入part1〜「あ。これ、洒落にならん。」
そんな一人と一匹のやりとり全て無視して、トラは淡々と青年誌をレジへ通し、すべて流し終え、死んだまま目で合計金額を告げた。
「〇〇リェンだ、みゃ、はりゃく、はらう、みゃ!」
「だから、なんで、太郎も、お前もそんな辛辣なの????」
「たろ、ちょ、トラちゃだけじゃ、にゃい、みんにゃ。ちんらつ。
ラルクちゃ、ごみ????」
「太郎、お前、そのゴミっての誰から教わった?」
「サラちゃ。」
「姉ちゃん?!」
太郎の思わぬ暴言に、ラルクがその情報ソースを聞くと、自身の姉の名前がでてきた。
ラルクが思わず、バッと背後を振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべ、拳を鳴らしているサラとソラが静かに立たずんでいた。
(あ。これ、洒落にならん。
天丼ネタ繰り返して、飽きられるどころか、突っ込んだら俺、塵にされるやつ。)
2人の様子を見て、そろそろ攻撃に手加減されなくなることを野生の勘で察したラルクは、懸命にも口答えを諦める。
「うん、まぁ、そういうこともあるよな!!!!
俺は気にしないぞ、トラ!!!
トラ、さっさと支払うから、その聖典を袋に詰めてくれ!!!」
心なしか青ざめながら、カードキーをセンサーへと近づけると、──シャリーン♪と音が響き、液晶に表示されていた金額が一瞬で『0』へと切り替わる。
こうして冒険者一同のお会計は全て終わり、時間もそろそろ、夕食の時間へと近づいた。
「皆様、お疲れ様でした。
お風呂に入り、お買い物も済ませ、ちょうどお腹も空かれてる時間かと存じます。
これから皆様を晩餐へと招待させていただきたく思います。
それでは夕食のエリアへとご案内いたします。どうぞこちらへお越しください。」
そう言って祥が悠然と微笑み、一礼すると歩き出し、コンビニの自動ドアへ向かい外へ出る。
それに導かれるように、冒険者一同は後へと続き、ロビーへと案内された。
「さて、先ほどお集まりいただいた時に、皆様は見てらっしゃると思いますが、こちらがレストランとなっております。
ここはお手頃のホテルですので、お店が2、3件しかございませんが、我らの故郷の絶品ばかりですので、ご満足いただけると思います。」
「………今までのことを考えると、絶品ってのは間違いないんだろうが、本当にあの店が庶民が入る店なのか?」
「はい、とてもお手頃なお店でございますよ。」
「ショウさんのお手頃ってのは当てになんねぇんだよ。
アンタの地元じゃそうでも、こっちじゃ、王族すら食えねぇもん、ボンボン出してきて……。
しかも、なんだありゃ、レストランの前のあれ。
あんなところに食い物置いて。
腐っちまうだろ、もったいねぇ。
せっかくの不純物無ぇ、ガラス板の中で腐れ落ちていく食い物見る文化でもあんのか?
さすがに趣味悪いぞ?」
ガイルが顔を顰めて言う。
その視線の先にあるラルクが言うところのレストラン──いや、日本でお馴染みの、ラーメン屋と蕎麦とうどん屋が並んでいて、その入り口の真横、そこにあるガラスケースの中には、今まさに湯気が立ち上っていそうなほどにリアルで美味しそうな、口の中で蕩けそうな肉厚なチャーシューが乗ったラーメンやパラパラな炒飯。
蕎麦とうどん屋にはサクサクに揚がったエビの乗った蕎麦とうどん、ザルに入ったざる蕎麦やザルうどんの模型が並べられていた。
ガイルだけでなく、後ろにいたレオンやエルダたちも、顔を顰めている。
それはそうだろう。
この世界には、貧富の差が激しい国などぞろぞろあるし、冒険者一同はその国に遠征に行ったこともある。
明日食べるものも食べれない子供がいるのだ。
それをあんなふうに、無駄にするなど正気の沙汰ではない。
確かにあの食べ物たちは食べたことはない。
しかし、見たことない食べ物でもあれほど魅力的で美味しそうに見えるのだ。
きっと美味しいだろう。
だからこそ、あのようなやり方は気に入らない。




