第七話 異世界ギャップ〜レジ編 part8〜「俺らの稼ぎ一ヶ月分ゆうに超えてんじゃねぇか!!!」
「みゃ!!おかいけい、ちゅうりょう、だみゃ!」
僅か数十秒で二百点以上の商品をすべて捌ききり、トラが誇らしげに短い胸を張って額の汗を拭う仕草をしてみせると、レジ液晶には女性陣が選んだ商品の合計金額が叩き出された。
それを見た瞬間、横で眺めていたガイルの目が飛び出そうなほどに見開かれた。
1個1個の値段は、この世界の化粧品に比べて信じられないほど安い。
その上、純度の高い透明な板で覆われているなど、どう見ても王族すら手に入らないものばかりで、相変わらずの規格外に笑うしか無かったのだが、今出された金額はその化粧品の安さが焼け石に水に思えるほど、高額で凄まじいものだった。
「お、おいおいおい待て、サラ、ソラ、ミーナ、マイナ!!!
俺らの稼ぎ一ヶ月分ゆうに超えてんじゃねぇか!!!
ミーナ、マイナお前、新人なのに、こんなに買ってどうする気だ?!
お前、これ、支払うってなったら莫大な借金だぞ?!
A級のエルダさんやエルマさんだって、払うのはちょっときついレベルでしょう?!
何をやってるんですか?!」
「うわぁ………俺たち新人は見たことない金額だよ……」
あまりの金額に絶叫するガイル。
その金額にさしものレオンもドン引きのようだ。
それに女性陣は「だってタダなんですもの……」と素知らぬ顔で視線を逸らし、「ガルといい女性陣といい、お前ら少しは遠慮しろ!!!」ガイルは吠える。
「まぁまぁ、落ち着いてください、ガイル様。」
吠えるガイルを祥はスマートにとめ、美しい笑みを崩さず何事もなかったかのように告げた。
「どうぞご安心ください、ガイル様。
皆様がお買い上げしていただいた商品、合計二百十五点、本来であればこちらのお値段になりますが……先ほども申し上げた通り、今回はモニタープランですので、お代は全額、当ホテルが負担いたします。
ですので皆様の中で、こちらの魔導器に、お部屋のカードキーを代表してどなたか、かざしていただけますか?」
「はぁ~、ショウさん……いくら何でも人が良すぎるだろ……。」
「フフ、そうでもありません。
もしも、このサービスを気に入っていただけたのでしたら、ぜひとも当ホテルをまたご利用いただき、ご友人に紹介していただければ幸いですので。」
「……なるほどな?宣伝料ってわけか?」
祥の言葉に呆れていたガイルだったが、祥の真意を聞き納得する。
(宣伝料にしちゃ高すぎるがな………。
ギルドの依頼料もあるんだ。
……こりゃなんかあった時、できる限り力添えをしないと恩を返せねぇ。
………それが狙いか。
ショウさんはよほど、ここのオーナーを守りたいと見える。)
このホテルの奥に潜むオーナーへの忠誠心……いや、男としての矜恃か……この優秀な男にここまで惚れられるんだ、女冥利に尽きるななどとレオンと同じようなことを考え、ガイルは納得の表情で頷いた。
「わかったよ、そういうことなら遠慮はしねぇ。
このホテルをしっかり楽しんで、ギルドにも認めて貰うよう俺らからもお願いするさ。」
そう言って苦笑いすると祥もニッコリ笑い、答えた。
「ありがとうございます、我らホテル一同、心より感謝いたします。
それではエルマ様、皆様の分をまとめてお会計をいたますので、女性陣を代表して、こちらへどうぞ。」
「ええ、分かりました。」
祥のスマートな案内に促され、エルマは先ほど男性陣がやっていたのを見よう見まねで、薄いプラスチックのカードキーをセンサーへと近づける。
その手つきは、壊れ物を扱うかのように慎重だ。
──シャリーン♪
コンビニ内に電子音が響き渡り、それと同時に、レジの液晶に表示されていたあの二百十五点分のどえらい合計金額が一瞬で「0」へと切り替わった。
それに満足そうに頷き、ウキウキした様子でトラと共に袋に商品を詰めていく女性陣たち。
側に付き添うもふもふたちも手伝っているようで、手伝いつつ、商品の使い方を説明している。
何故、もふもふたちが知っているかと言うと、例の洗髪ASMRの画像を見ていた時、美容ASMRが続々と流れていて、そこで知り、興味を持って配布された端末で調べたらしい。
もっとも、本当はルナにする予定だったのだそうだが(このことにルナは嫌な予感がしたかのように戦慄していた)、まぁそれが接客にいい影響を与えているのだ。
赤子の好奇心、様々である。




