第七話 異世界ギャップ〜レジ編 part6〜「本当に、罪な御方ですわね、ショウ様は」 「え?」
「エルマちゃ、こっちみゃ。」
レジに押し寄せる女性陣を見て、トラが自分が今日案内している、エルマを指名した。
今日一日優しくしてくれている、エルマに完全に懐いていて、最初にレジをしてあげたいと思ったらしい。
「……あら、私でいいんですか?トラちゃん。」
自分を「エルマちゃ」と呼んでくれたトラの愛らしさに、エルマの口元がふにゃりと緩む。
その笑みは淑女のような雰囲気を持つエルマからは想像できない程幼い。
しかしとてもかわいらしく、その笑み一つで、膝を折る男などごまんといるだろう。
しかし、そのエルマが抱えているカゴの中身は、そのかわいらしい笑みに似つかわしくない凄まじいボリュームだった。
遠征用のミニコスメ、いちごのロールケーキ、プリンなどのスイーツ、そして、少女漫画雑誌が、重力の法則を無視して、カゴから溢れんばかりにギチギチに積み上げられている。
そのカゴは「よくそこまで持てたな!?」と背後で見ていた男性陣が驚愕のあまり、口をポカンとあけ、二の句を継げないほどの量で、先程甘味を積み上げていたガルをゆうに超えるその量に、ガイル、ガル、レオンの3人がドン引きし、それをエルマは気にすることなくスルーした。
「ん……少し、買いすぎたましたかね───あら?」
エルマがプルプルと美しい手を震わせながら、カゴをレジ台へと差し出そうとすると、ヒョイと横から祥がカゴを取った。
「……ショウ様?」
「申し訳ありません、A級冒険者で一流の精霊魔術師のエルマ様にとっては余計なお世話かと存じますが、ここはコンシェルジュの私にお任せいただけないでしょうか?
皆様のお荷物もお持ちいたしますので、どうぞ、もふもふが持ってきた、そちらの棚にお乗せください。」
そう言って祥は美しく笑うと、チラリと視線を冒険者たちの側にいたもふもふに投げかけた。
そこにはガラガラと車輪がついた机を押しながらやってくるもふもふが。
そんなもふもふと祥を見比べてエルマはため息を吐く。
「本当に、罪な御方ですわね、ショウ様は」
「え?」
ため息を吐いたエルマにキョトンとする祥。
その表情は今までのできた男の雰囲気と違い、年相応な魅力、ギャップがあり、そんな祥に他の女性陣もため息を吐く。
「ショウ様、むやみに女の子に期待を持たせるのはいけないわ。」
「ええ……?」
エルダも注意するようにいうが、祥はわかってなさそうに首を傾げる。
本人からすれば、何も特別なことはしていないのだ。
ルナという想い人がいるのに、むやみに女の子に優しくするはずもない。
本命にすら甘い言葉を吐くのも苦手なのだから。
─────というのが本人の認識である。
そもそも本人は、重そうだから、でも冒険者として活躍している女性への過度な女性扱いは失礼か?といった気遣いのつもりである。
地球時代でも、この人として扱いつつも、女性を尊重した、レディファーストに何人の女が狂ったかわからない。
エセレディファーストとは訳が違うやり方を息をするようにする、恐ろしい男である。
(祥ちゃん、面倒見いいからねー。それに女性陣はときめいちゃうんだねー。)
そして、純正のレディファーストを浴びまくって、麻痺しているのが、このお布団お化けである。
しれっとコーラ飲んでモニタリング中だが、ポテチの空き袋が散らばっていて、鬼のいぬ間にポテチをむさぼり食っていたのが一目瞭然だ。
「………」チラッ
(!!!)ビクッ
そんなルナの行動を察したのか、監視カメラにチラリと目をやる祥。
(お前、覚えてろよ?)
(あ、終わったわ。)
何も見えず、聞こえない、自分が何をしているかもわからないはずなのに、祥に察せられたルナ。
……自業自得である。




