第七話 異世界ギャップ〜レジ編 part1〜虎縞のケットシー、トラ(ルナ命名)
「それでは皆様、お会計をいたしますので、こちらのカウンターへお並びください」
祥が微笑みながらレジへと促すと、山盛りのカゴ(女性陣はコスメ、スイーツ。ガイルとガルはビールやからあげなどのホットスナック、甘味各種。そしてラルクが血の涙で死守した青年誌である。懲りない男である。)を持った冒険者たちが、吸い寄せられるようにレジカウンターへと進んだ。
ちなみにラルクはカゴの中を見てはデレデレと鼻を伸ばしており、冒険者クランの仲間たちはおろか、もふもふたちからもドン引きな目で見られている。
その顔は先程からラルクについていたもふもふと同じ表情であり、それを画面越しに見たルナは、やっぱりもふもふちゃん、全員そんなに表情筋動くんだ、知りたくなかったなと呟いた。
それはさておき、この大量な会計すべき商品をさばくために、レジ内にはいつの間にかもふもふ──ケットシーがコンビニの制服をかわいらしく着こなし、スタンバイしており、やる気満々な顔で、冒険者たちを見つめる。
「こちらのケットシーがレジをさせていただきます、まずはガイル様から。」
すっと導くようにガイルを見たまま、手をレジへと向ける祥。
その祥を見て、戸惑った顔しつつも、恐る恐るガイルはカゴをレジへ置いた。
その中にはキンキンに冷えたビールと、ホットスナックの某からあげ、漫画雑誌など、かなりの量が入っている。
「じゃあ、頼むぞ、トラ。」
「みゃ!!!!」
レジ内のモフモフ─────虎縞のケットシー、トラ(ルナ命名)がやる気満々の顔でシュバッと敬礼を祥に向かってする。
トラはもふもふの中でも指折りのコンビニ店員で、接客もお手の物、予行練習の時にレジ打ちをしていたのも彼であった。
………ちなみにエルマの魅惑の双丘に埋まったのも彼だという何の価値もないことをここに一応記しておく。
そのせいか、若干一名が敵意むき出しだが、まぁ、それは置いておこう。
そんなどうでもいいことは、横に置いて、ガイルの購入品である、カゴ内の漫画雑誌をトラは手に取り、バーコードリーダーをレジにかざした。
ピッ。軽快な電子音と共に、トラの前の四角い硝子板──レジの液晶画面に文字と数字が浮かび上がる。
「「「「な?!」」」」
驚く冒険者一同。
無理もない、何もない真っ暗な石のようなものに、いきなり数字が現れたのだから。
──ピッ、ピッ、ピッ。
そんな冒険者たちに構うことなく、目にも留まらぬ鮮やかな手並みで、トラは次々と商品を入れていく。
音がなったと同時に、一瞬の遅れもなく商品が識別されていき、金額を計算していく。
異世界では考えられない技術だ。
「えー。なにこれ、面白い!!
ショウさん、この黒い所に浮かんでるのってもしかして、この品物のお代?
ピッて鳴らすだけで、計算しちゃうの?」
キラキラとケットシーとレジスターを見つめるレオン。
その瞳は好奇心に満ち溢れ、まさに興味津々という感じだ。
「ええ、この機会が自動的に計算してくれるので、計算する手間暇は一切不要、お客様を待たせることなく、お買い物していただけます。」
ニッコリと微笑みレオンに言う祥。
他の冒険者たちは、二の句がつげない。
ここのホテルの凄さは分かっていたつもりだが、冒険者たちはもっと驚くものが出てくるとは思っていなかった。
だってこんな魔道具、商人たちが知れば大金積んでも欲しがるだろう。
そんなものをこともなげに言う祥という男を冒険者たちは、関心と呆れ混じりに見つめた。
──ピッ、ピッ、ピッ。
「……にゃ。……あ、からあげ………いい匂い、みや……」
祥と冒険者たちのやりとりに、構うことなく、レジ打ちを続けていたトラだったが、かわいらしい肉球でからあげのパックを掴み、センサーにかざそうとした、その時。
パックされた、まだほんのり温かい揚げたての香ばしい匂いがフワリと、もふもふの小さな鼻腔をくすぐり、さっきまで、素早くレジ打ちをし、地球の敏腕コンビニ店員並みに手を動かしていたトラは、からあげのパックを両手で持ったまま動きを止め、かわいらしいくりくりおめめをキラキラ輝かせて、生唾をゴクリと飲み込んだ。
完全にプロの顔からただのお腹ペコペコなかわいらしい赤ちゃん魔獣の顔に戻っていて、からあげを見つめながら、チラチラと何か言いたげにラルクに視線をやっている。
それに女性陣は悶絶し、ガイルは困ったように祥を見た。




