第六話 異世界ギャップ〜コンビニ編 part1〜 (………ん?待てよ?違う世界? ………まさか、ショウさんとオーナー、『マレビト』か?)
お風呂上がり、心身ともにピカピカ(若干1名ボロボロなのは見ないこととする。)になった10人の冒険者たち。
案内役である神藤祥の後に続き、1階の廊下を進んでいく。
冒険者一同、男性陣も女性陣も、もふもふたちの極上ケアによって肌をモチモチ、髪をサラサラになっていて、何処かの国の貴族のような出で立ちだ。
「——皆様、お疲れ様でした。
こちらの最初にご案内したロビーでございます。
そして当館のフード&コンビニエリアでもあり、こちらで皆様にはお食事やお買い物を楽しんで
いただきたく存じます。」
祥が美しい笑みでそう告げ、取っ手も鍵穴もない扉の前へ進む。
軽快な電子音と共に扉が左右にスライドし、祥は中へと入り、冒険者たちは、この扉が最初にこのホテルへと足を踏み入れた時の扉と同じ物だと気づき、祥の母国ではこれが当たり前の常識なのだと、認識した。
………少々間違いではあるし一般的な家庭では自動ドアがあるマンションなどはお高めのマンションなのだが。
そんな地球事情を知ることもなく、祥の後に続いて10人の冒険者が一歩足を踏み入れる。
そこは、夜だというのにまるで真昼の太陽の下にいるかのように隅々まで眩しく輝く、未知の空間だった。
狂いなく直線に並んだ白い商品棚がいくつも整然とそびえ立ち、奥の壁際には、ガラスの向こうで色とりどりのボトルや美味しそうな菓子が入っている、不思議な箱(冷蔵ショーケース)が鎮座している。
あまりに洗練された空間の美しさと、昼間のような明るさに、冒険者たちはもう、驚きを通り越して完全に停止しかけていた。
リーダーのガイルは、ガラスの向こうにズラリと並ぶジュースやアイスの扉を恐る恐る開き、その冷たさに驚愕に目を見開いた後、ただただ遠い目で見つめ、ぽつりと呟いた。
「………さっきの冷たい菓子、アイスはこっからか?」
「はい、左様でございます。」
「………もう、驚きで言葉もねぇが、ショウさんの故郷の商店はこんな感じなのか?」
「はい。この商店は私の故郷では『コンビニ』と呼ばれておりまして、24時間、いつでも欲しいものが手に入る便利な商店でございます。」
祥が何でもないことのようにサラリと答え、その平然とした態度に、ガイルはさらに脱力した。
館内の案内、そして風呂へと入り、宵も深くなってきたこの時間、そんな夜にこれほど明るさを維持する魔道具をふんだんに使い、常に冷たい商品を揃え続ける商店など、いくら皇国の親戚筋のこの大国、アウステル国その王都であろうとも国費を注ぎ込んで再現しようにも、絶対に不可能な領域だ。
そんなことをサラリと言う、この男、そしてこのホテルを作ったオーナーは、冒険者ギルドでレオンが言っていた通り、違う世界から来たのかというほど、常識がないようだ。
(………ん?待てよ?違う世界?
………まさか、ショウさんとオーナー、『マレビト』か?)
ガイルの脳内で、一連の流れが綺麗に一本の線で繋がった。
祥たちがこの世界に伝わる「マレビト」であれば、この常軌を逸した設備もすべて納得がいく。
同時に、冒険者ギルド長や自分たちが危惧したどこぞの大国が軍事目的で隠密に作った物ではなかったのだと、肩の荷が下りるような安堵を覚えていた。
(……この件は、下手にここで騒ぐべきじゃない。街に帰ったらすぐに、ギルド長に直接報告して指示を仰ぐ。
今の俺たちの仕事はここの体験を受け入れること。
最初の目的と変わらん。
ただ見る視点が増えただけだ。)
中堅のクランリーダーとして冷静に今後の立ち回りを思考するガイル。
そんなガイルを祥は横目で見ており、それと同時に、モニタリングしていたルナも気づいた。
(あー……ガイルさん、私たちの身の上に気づいたかな?)
(あからさまだったしな。
ルナのスキルの中のネットで調べた知識は確かだったわけだ。)
(おじいちゃん神様、他の人も昔送ってたんだねぇ。
まぁあのおじいちゃんのことだから、同意の上なんだろうけど。)
(下手に軍事利用されても困る。
信心深いこの世界なら、バックに神がついてると明らかにした方がいい。
まぁ、教会とかが絡んだら、ルナの言う王道パターンの中で面倒くさいパターンになるのは困るけど。
平和になれた俺たちが、軍事利用されるよりはマシだろ。)
知らず知らずのうちに思考が再びリンクしている祥とルナ。
長年の付き合いのたわものであるが、祥は自身の考えていることを顔には出さず、祥は何食わぬ顔で美しい微笑みを一同へ向けた。




