第五話 地下大浴場とモフモフスパの始まりpart1〜「なんだ、この布………。 一流商人だってこんなの扱えねぇぞ………。」 「うわぁ、フワフワじゃん!!」
「それでは皆様、こちらのタオルをお持ちになって、私に付いてきてください」
そう言いつつ、祥は冒険者たちにホテルのロゴが入った真っ白なタオルを渡す。
「なんだ、この布………。
一流商人だってこんなの扱えねぇぞ………。」
「うわぁ、フワフワじゃん!!」
タオルの手触りにガイルは驚愕し、レオンは楽しそうに笑う。
他の冒険者たちもあまりにも良い手触りに感嘆の息を零している。
それもそのはず、アウステル国のタオルといえば、麻の布。
給水性もなく、ゴワついている。
このタオルは、ホテル備え付けのもので、地球から見てもそこそこいいタオルだ。
庶民が買えないわけではないが、異世界人にとっては神々が使うような至極の織物である。
タオルに感嘆する冒険者たちを祥とモフモフたちは先導し、10人の冒険者たちは早くもお風呂への期待に胸を膨らませながら、ぞろぞろと地下へと続く階段を下りていく。
地下のフロアに到着すると、そこには取っ手も鍵穴もない、真っ白で強固な二枚の扉(男湯と女湯仕様)がそびえ立っていた。
「当館の大浴場は、こちらの『専用カードキー』を壁の機械、こちらでいうところの魔道具ですね、それにかざし、さらに4桁の暗証番号を入力していただくことで扉が開く仕様となっております」
祥が「ピッ」とカードをかざして暗証番号を打ち込むと、重厚なロック解除の音がし、その音を聞くと同時に真っ白な扉のノブを引いた。
開けたドアに手を恭しく伸ばし、祥は女性陣に向かって紳士的に一礼する。
「ここから先は女性専用エリアとなっており、男の私は中に入れません。
申し訳ありませんが、壁のイラスト案内板をご覧になってみてください。
中のサポートは、当館の優秀なモフモフたちに任せてありますので。
それでは、ごゆっくり。」
そう祥が言うと、モフモフたちは彼女たちの手を引く、そんな祥とモフモフに女性陣は浮き足立ったように頷く。
「はーい、行ってきまーす!」
「お風呂なんて、王族も中々入れないわよ!!」
「楽しみだね!!マイナ!!」
「そうだね!ミーナ!!」
男性陣に別れを告げ、二重ロックを突破した先の未知の領域へと足を踏み入れる女性陣6人。
それを見送り、祥は男性陣に向き直った。
「さて、皆様は私が中をご案内致します。
どうぞ、こちらへ。」
──【サイド:女湯】
脱衣場の広さとセキュリティのちゃんとしたロッカーに驚きつつも服を脱ぎ、一歩中へ入った瞬間、女性陣は一斉に息を呑んだ。湯気の中に広がっていたのは、ピカピカに磨き上げられた巨大な鏡。
こんな美しく、輝く鏡など王族すら持っていないだろう。
そして、なみなみと溢れ、床にまで贅沢にザブザブと流れている広大な掛け流しの湯船だった。
「な、何よこの湯の量は……! こんな綺麗なお湯が床にまで溢れているなんて……。
こんなにお湯が潤沢に使えるの?」
「見てよ、お姉、あの鏡!
自分の顔がハッキリ映ってる!!
こんなものがあるなんて………!!」
唖然とした顔で呟くサラとソラ。
他の女性陣も唖然としており、その圧倒的な湯量と、一つの曇りもない鏡の美しさに全員で深く感嘆する。
周りを見回しながら、彼女たちは、洗うための「洗い場」へと向かい、そして嬉しそうに声を上げた。
「あ! 2階の個室で見た、あのすごい温水が出る魔道具じゃない!!
シャワーだっけ?
ここにもズラリと並んでる!」
「本当だ! これなら全員で一度に使えるわね!」
「広ーい!!!」
感動に目を輝かせる彼女たち。
しかし、そのシャワーの横に設置された物に目を留めて、今度は一斉に首をひねった。
「……ねぇ、これ何かしら?
この色とりどりのボトルの山。」
エルダが、ズラリと並んだボトルの山を指差した。
「うーん、壁の看板の絵を見る限りでは……どうやら洗髪剤のようですね………。」
「洗髪剤?!それってお貴族様の使うものじゃないの?!
そんなものが、こんなにたくさん……?」
エルマがエルダの言葉に答えると、ギョッとしたように、ミイナが言う。
「こんなものが使えるなんて…………」
「ね、ね、使ってみましょうよ!!」
「そうだねお姉!
お金がかかるなんてショウさん言わなかったし、書いてもないし、ショウさんは不当に請求したりしない人だもん!!
タダでこんないいものが使えるなんて、ラッキーだよ!!!」
マイナが感動しながら呟くと、サラとソラがウキウキしながら、シャンプーを手に取った。
「………でも、あまりにも種類が多すぎて、どれを選んで、どう使えばいいのかしら……」
サラとソラに触発されたのかエルマも、シャンプーを手に取り、イラスト案内板を凝視しながら使い分けに首をひねっている。
楽しげに悩んでいるその時だった。




