第四話 10人の冒険者とホテルオープン!part12〜(……あぁ、本当によかったよ、この中に愚か者がいなくて。 いたら、危うくアウステル国が滅びる所だった。)
やはりこの奥に、すべてを支配する偉大な人物がいるのだと。
この国のために、ぜひともかの傑物に何としても御目通りしなければ。
そう考え、ガイルとガルが口を開けようとした瞬間、すかさずエルダが遮り、見定めるような鋭い探りの目を祥に向けて口を開いた。
「…………この力の気配………。
この宿の中で一番素晴らしい防犯セキュリティね。
こんなものまで使えるなんて…………。
ねぇ、ショウ様、このホテルのオーナー様が、どんなに恐ろしく、そして偉大な方なのか、私気になるわ。
ぜひ一度ご挨拶させていただきたいのだけれど?ねぇエルマ?」
「はい、姉様。
ショウ様のようにさぞ素晴らしい男性なのでしょうね。」
そう言ってエルダは蠱惑的に微笑みながら、自身の妹エルマに話をふり、エルマは祥にアプローチをかけつつも同意する。
その2人の質問に、他の女性陣、そしてガイルとガルは、果たして許可をされるのか、そしてどんな凄まじい男が現れるのかと、固唾をのんで祥の返答を待つ。
しかし、当の祥は、2人のアプローチ兼質問にビジネススマイルを浮かべたまま口を開く。
「申し訳ありません、うちのオーナーは、非常に……そう、非常に繊細なので、お会いしていただく事はできません。
皆様のような冒険者様に会えば人見知りしてしまいますし、あなた方を疑っているわけではありませんが、彼女の持つ力を考えると、合わせるわけには参りません。
────そして、皆様勘違いされて居られるようですが、彼女はそんな偉大でも、気高くもないのですよ、ただ、お部屋でお布団に包まれて、日だまりの中で微睡む事が大好きな、普通の女の子です。
まぁ、引きこもりでズボラな所は直して欲しいですし、迂闊で自身を客観視していると思い込んでいる鈍いやつですが。
でも、私にとっては大事な幼馴染なのですよ。
一生をかけて守ると約束する程にね。
ですので、オーナーへの接近および対面、ならびにこちらの部屋への立ち入りは、永久に禁止とさせていただいております」
そう言うと、どこか扉の奥を愛おしそうに見つめた。
その美しい瞳には甘い温度を含んでいて、彼の本心がうかがえる。
幼馴染と言いつつも、言葉の端々や瞳から滲み出る重すぎる秘めた感情を認識した瞬間、女性陣6人の頭の中で、一斉に同じ答えが弾き出された。
エルダ(……あ、これ、完全にダメなやつだわ。)
エルマ(オーナー様は女性だったのですね………。
レオンくんの手紙を見た時の言葉はこういう意味でしたか。)
サラ(あーあ、レオンの言葉から、女がいるとはわかってたけど、まさかここまでとは思わないじゃない。)
ソラ(女の子がこのホテルを…………凄いなぁ。
敵うわけないじゃない。)
ミーナ(惨敗だわ。)
マイナ(いい人だから、奥さんになりたかったなぁ。)
第二夫人や側室の席すら1ミリも空いてないおらず、愛人にすらなれない、何もかも完璧に埋まってて、隙が一切ない!とアウステル国の冒険者故に勘が良い彼女たちは、未練を断ち切ってすんなり諦めた。
いくら、一夫多妻制であっても、ここまで人のものだと分かりきっている者を口説く気にはならない。
良い女とは引き際は弁えてるものである。
この男を追いかけるよりも、今はこの快適なホテルを全力で満喫した方が絶対に得だ。
それに、きちんと仕事を遂行すればいずれ作ると言っていた、新しいホテルのモニターにもなれるかもしれない。
そう判断した女性陣の目は、一瞬にして純粋に宿泊を楽しみにしているお客さんへと切り替わった。
そんな様子をうかがっていた、レオンは口元に笑みを浮かべる。
(あはは。ショウさん分かりやすいなぁ。
分かり易すぎて、みんな、ショウさんがオーナーの女の子にベタ惚れだって気づいちゃったよ。
………まぁ、うちのクランの女性陣も兄貴のクランの女性陣も、エルダさんとエルマさんも、サバサバした最高に良い女で良かったよね。
中には人のものだからこそ、欲しがるろくでなしがいるし。
そんな女がクランにいなくてよかったよ。
彼は狩りの最中なんだからさ。
………狩りを邪魔された獣がどうなるか……、冒険者なら分かるだろう?
……あぁ、本当によかったよ、この中に愚か者がいなくて。
いたら、危うくアウステル国が滅びる所だった。)
みんなの後ろでそう心の中で呟くレオン。
呑気に焦ることなく全てを眺めていた彼だってガイルの弟、兄やガルと同じ事が頭に浮かんでいた。
このホテルの異常さ、目の前の祥という男を敵に回した時、アウステル国に何が起こるか、そしてその行く末も。
ただ、持ち前の勘が必要以上に恐れることは無いと言っていたから、呑気に過ごしていただけなのだ。
────しかし、ショウさん、女の子って今バラすのはちょーっと不味かったね。
そう考え苦笑いを零すとチラリと横にいる男を見る。
「ラルク。」
「………」
「お前、バカじゃないから、わかるよね?」
「………………」
「ラルク???? ──おい、ラルク??????
何黙ってんの????
怖いんだけど?????
お前のその美女センサー?ってのしまえよ?
今すぐ完全に眠らせろよ????
むしろ永眠しろ。
お~い????ラルク???」
レオンが真顔で冷や汗を流す横で、ラルクはただただ、目の前の重厚な扉を、まばたきもなく、据わった目で見つめ、不気味に沈黙し続けるのだった。
「では皆様、これよりプレオープン・モニター宿泊を開始いたします。
先ずは大浴場へとご案内致しますので、どうぞ心ゆくまでおくつろぎください」
(第4話・完 )
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