第四話 10人の冒険者とホテルオープン!part9〜(異世界ギャップ半端ねぇな。) ((魔法のある世界だと、こうも感想が違うのか………。))
「………防犯セキュリティに関して、ご納得いただけましたか?
では、次は二階の【ビジネス個室フロア】へご案内いたします」
全員から冷たい目で見られ、泣きべそかいているラルクをスルーしつつ、祥に連れられ、階段を上った冒険者一同は、さらに息を呑んだ。
そこは鍵付きの頑丈なドアが並ぶ、王城を彷彿とさせる廊下。
その一つの扉をカードキーを使って開けば、部屋の中には清潔なシングルベッド、そして壁には謎の薄黒い板(液晶テレビ)が備え付けられていた。
何より彼らの腰を抜かさせたのは、純白の陶器で作られた【専用ユニットバス】だった。
「こちらはお風呂となっております。
この銀色のレバーを捻るだけで、魔力も火の魔石もなしに、いつでも適温の温水が出ます。
そしてこちらは、トイレなのですが、こちらのボタンを押せば、便器の奥に溜まった水が自動で流れ、常に清潔に保たれる仕組みです」
「なっ……個室ごとに、お風呂があるの?!
しかもいつでも適温の温水が出るなんて………。
それに何なのこのトイレ?!こんな清潔なトイレ見たことないわ!!!
どんな王宮よこれ!!」
「いいえ、姉様、王宮ですらありません、このような浴室など………」
エルフの姉妹たちは驚愕と戦慄に慄き、サラやマイナなどの一般人代表たちは「ボタン一つで温水……トイレ??………こんな綺麗なところが????……お風呂に入れる????」とその異次元の文明力に完全に脳を破壊されていた。
「んー?ねー、ショウさん?
このさ、ベッドの向かいの壁にある黒い板板って何ー? 鏡にしては全然映らないし
黒い魔石かなんか?」
レオンが、好奇心に満ち溢れた目で、客室の壁に備え付けられた【液晶テレビ】を指差した。
「こちらは『テレビジョン』という、映像や音声を映し出す魔道具でございます。
こちらのボタンを押すだけで、いつでもお好きな映像を愉しむことができますよ」
祥が慣れた手つきでリモコンの小さなボタンをパチリと押した。
その刹那、黒い板が一瞬鮮やかな光を放ち、信じられないほどの色彩が洪水のように客室内に溢れ出した。
ルナのスキルによって、構築された、地球の至高のエンターテインメントがそこにはあった。
画面に映し出されたのは──金髪のおさげ髪の少年が、魔陣も詠唱もいっさい介さず、ただ両手を「パンッ」と合わせただけで一瞬にして地面から巨大な石の壁を錬成してみせる映像であった。
一瞬で魔力を構築、詠唱も無しに攻撃魔法を繰り出す、少年を描いた動く絵に冒険者一同は驚愕の声を上げる。
その中でも、魔術の最高峰である、精霊魔法を極めたはずのエルダとエルマは、顎が外れんばかりに目を見開いて完全にフリーズした。
「ま、魔力の痕跡がまったくないのに、なぜこれほど鮮明な絵が動いているの……!?
それに、何なの、あの少年!!
手を合わせただけで物質の構成を書き換えるなんて………。
これが、この宿の祖国の魔術だというの……!?」
「詠唱も無しに、あれほどの攻撃、物質の錬成が出来るなんて………。
………いえ、この宿が秘める神秘の力を考えれば納得ですが………でも、こんな事が………!!」
エルフの姉妹は、画面の中で語られる深遠すぎる魔術体系に、祥の世界の魔術に顔を戦慄に染めた。
(いや、ただのアニメなんだけど。)
(異世界ギャップ半端ねぇな。)
((魔法のある世界だと、こうも感想が違うのか………。))
驚愕に染め上げる冒険者たちにルナは私室で、祥はテレビのリモコンを持ったまま(自分に視線が向いてないことをいいことに)、同じチベスナ顔をさらした。
異世界ギャップとは、凄まじいものである。




