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第四話 10人の冒険者とホテルオープン!part4〜「祥ちゃん、女の子の目、釘付けにしてるのに、気づかなくて草」

(……えっ……?)


その横にいたルーキーズのミーナとマイナ、さらには最後尾にいたエルフのエルダとエルマまでもが、一斉に目を奪われる。


そこにいた存在は、上質な漆黒のスーツを完璧に着こなし、艶のある髪をきちんとセットした、息を呑むほどの美男子。

形の良いアーモンドアイに、鼻筋の通った美しい鼻梁。

知的な輝きを秘めた瞳との裏腹に何処か色気がありセクシーな唇。

そんな極上のパーツが小さな形の良い顔に、究極のバランスで収まっている。

何処かの国の皇太子と間違えても過言ではない圧倒的なカリスマオーラと知性と清潔感、そして大人の洗練された気品を纏った、女性ならば誰もが憧れるような、爽やかなフロントマンが立っていた。


「あぁ、申し遅れました、私、当ホテルの総支配人を務めさせていただいております、神藤祥と申します。

聞き慣れない名前かと存じますが、我が祖国では珍しいものでは御座いませんので、ご容赦を。」 


固まって自分を見ている、冒険者の面々に一瞬、怪訝な顔をした祥だったが、すぐに思い至ったのか、にこやかに自身の身の上を紹介する。


(ちなみに裏ではルナが「祥ちゃん、女の子の目、釘付けにしてるのに、気づかなくて草」と防犯カメラ映像を見て笑っていた。

本命の気持ちに気づかないお前が言うなという話である。)


ぽぉっと見惚れていた女性陣がハッと我に帰り、居住まいを正した。

いつもよりも何トーンも高い声で、サラが祥に話かける。


「失礼いたしました、こちらの総支配人様だったんですね?

こちらこそお招き頂きありがとうございます。

実の弟があまりにも無作法を働いたもので、つい……(大剣をそっと背中に隠す)

いつもはこんなことしないんですよ????」


「そうなんですぅ、普段はもっと淑やかな姉なんですよ。私たち♡」


サラとソラが凄まじい速度で猫を被り始める横で、ミーナとマイナも、大慌てて空の旅で乱れた髪を整えたり、服のしわをパッパッと手で伸ばしたりして、猛烈な勢いで身だしなみを整え始めていた。


彼女たちは気づき始めていた。

手のひら返しだと言われようと、ここは罠ではないと断言出来ると思った。

ギルドで見たあの得体の知れない紙に書いてあった内容通り、本当にここのモニターになって欲しいだけなのだろうと。

だってそうだろう。

罠ならこんな風に礼を尽くす必要ない。

───罠なら先程のラルクに対しての粛清していた時に纏めて、奈落なりなんなりに落とせば良かったのだ。

そこにマグマや毒の池を設置していれば、良くて重症か重体、残当は全滅だ。


こんな皇太子のような極上の男が、まるで何処ぞの姫君に対する振る舞いのように、たかが平民の自分たちに頭を下げる必要もない。


そもそも平民の自分たちが、こんな扱いをされる宿に泊まれるはずはないが、これがモニター、冒険者ギルドを通した仕事であることが功を奏した。


2度とこんな宿には泊まれないだろう。

ならば楽しむべきだ。


────それに───彼女たちの目がギラリと光る。

目の前で優雅に微笑む総支配人を値踏みをするように全員が見つめていた。


皇太子と見間違わん優雅さだが、平民の自分たちに向ける質の悪い貴族の傲慢さや、質がいいにしても、いい貴族にありがちな、子どもに向けるような(いい貴族は平民の年齢が上でも守るべき子供のような目で見る特徴がある。

お互いに恋愛対象になりにくいのだ。

まぁS級冒険者や聖女、勇者なら別だろうが………)目ではない。


彼の視線は対等な人間に向ける視線だ。

その上で、所作は貴族並みの洗礼さ。

王族の前でも卒なくこなすだろう。


────レオンは馬鹿な事を言っていると思っていたが、あの突飛な勘は当たっていたようだ。


彼は自分たちと同じ平民で商人、しかもこの国の上級商人が足元にも及ばない、偉大な商人になるだろうと。

一見しただけで、素人の自分たちですらわかる、この宿が内包する、国家規模を遥かに凌駕する圧倒的な技術力、財力、 そして快適性。

それらを衣服の乱れ一つなく、完璧な所作で統括しているこの極上の神藤祥という男。

おまけに強者の気配まである。

この気配今はまだ素人だろうが、彼が武器を持ち、鍛錬を重ねれば、自分たちなどすぐ追い抜き、S級冒険者に名を連ねるだろう。


─────とんでもない優良物件だ。


目指すは正妻………いや、レオンの勘が確かなら、女がいるのか。

まぁ、極上の男。

この凄まじいレベルならば仕方ない。

愛人や側室である第一夫人の立場、それになれなくても、最低でも末席には滑り込みたい。


アウステル国のたくましい女性冒険者である彼女たちは強者の気配を持つ男。

成長性があり、いつかはS級冒険者になれるという技量と将来性を持つだけでも、是非お近づきになりたい存在なのに、強大な財力と極上の見た目も兼ね備えた男など絶対に手に入れたい存在である。


お淑やかな猫被りの裏側で、極上の優良物件を見定めた肉食女子の、狩りの目が一斉にギラリと宿った。




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