第四話 10人の冒険者とホテルオープン!part3〜「心よりお待ちしておりました」
(………。やはりこの男、かなりのやり手だな。
縛り上げられているのに、受け身を取った。
今も激しくボコボコに殴り飛ばされているのに、怪我になるようなものはすべていなしている………。
縛り上げられ手が使えないのにも関わらず………。
………あぁ、姉である女性達はそれを分かっているのか。
纏う気配、技量すべて彼女たちのほうが上だな。
横でヘラへラ笑う男は縛り上げられている男と同じくらいか………。
………彼女たちの後ろから入ってきた、男女4人ずついるな………。
内2人の女性は先の縛り上げられている男と笑っている男と同じくらいの力量と見える。
盾と剣を持つ体格の良い男たちは、縛り上げられている男を殴っている姉たちと同じくらいか…………。
なるほど、この8人が、初級クランと中堅クランのメンバーということか。
んで、最後尾で入って来た耳が尖っている妙齢の女性2人組がA級クランだな……。
耳が尖っているし、調べた資料にはエルフと書いてあるから、間違いないだろう。
………しかし、縛り上げられている男はかなりの手練れなのに、これでも初級なのか………。
アウステル国の冒険者ギルドは手練れ揃いと見える。
敵にするのは得策ではない…か。)
─────許せないがホテルへの実害はない、身内の自浄作用が120%機能している。
無闇に敵を作るべきじゃない、ならば──。祥は手元の端末を操作し、ラルクのステータスを【オーナー接近禁止・特例ブラックリスト:厳重注意】へと書き換えた。
「素晴らしい腕前ですね。
身内の方々で迅速にご対応いただけるのでしたら、今回はイエローカードに留め、当ホテルの施設のご利用は許可いたします。
……ただし、当ホテルの『オーナー』へ近づくことだけは、永久に禁止させていただきますが。」
極上の美声と優雅な足音が静かなロビーに響き渡る。
それと同時に、祥は手元のタブレットを洗礼された所作でフロントカウンターへ置いた。
「改めてまして、いらっしゃいませ。
当ファーストキャリア雪月花をご利用頂きまして、誠にありがとうございます。
クラン【ツイン・エルフ】のエルダ様、エルマ様、クラン【アイアン】のガイル様、ガル様、サラ様、ソラ様、クラン【ルーキーズ】のレオン様、ラルク様、ミーナ様、マイナ様。
アウステル国冒険者ギルドからお越しの皆様、我らファーストキャリア雪月花のホテルマン一同、心よりお待ちしておりました」
名指しの歓迎。
その言葉が終わると同時に、祥、そしてカウンターの下から現れていたモフモフの赤ちゃん従業員たちが、一寸の乱れもない完璧な角度で一斉に、それでいて優雅に頭を下げた。
あまりにも洗練されたその礼の美しさと、完璧にこちらの正体を見抜いている情報網の凄まじさに、十人の冒険者たちは一斉に息を呑み、言葉を失って硬直した。
その、誰もが動きを止めた瞬間のことである。
頭を上げた祥の姿に、怒りで周囲が見えていなかったサラとソラの動きが完全にフリーズした。




