第四話 10人の冒険者とホテルオープン!part2〜姉プレゼンツ、粛清「助けて、レオンンンンンンン!!!!」
「目指せ楽園ー!!!」
叫びながら自動ドアを突き抜け、塵一つないロビーへと突入したラルク。
そんな彼にカウンターから、ケットシーやフェンリルなどの赤ちゃんモフモフたちが飛びかかる。
「へんちゃい、しゅくちぇい、みゃ!」
「へんちゃい、ちゅかまえりゅ!!」
片言の赤ちゃん言葉を放ちながらワラワラと出現。
祥から仕込まれた身のこなしと素早さで、ラルクの体を一瞬にして頑丈なロープでぐるぐる巻きに縛り上げた。
「ぎゃっ!!!何だこの可愛い生き物たちは!?
うわっ、 ロープが解けない……っ」
赤ちゃんモフモフたちに縛り上げられ、床で芋虫のように転がるラルク。
そんな彼に声をかける存在があった。
「いらっしゃいませ。
アウステル国、冒険者ギルドの方ですね。
お待ちしておりました」
上質なスーツを身に纏い、艶のある髪をきちんとセットした男─────ルナから総支配人の立場を預かった、神藤祥がフロントからラルクを見下ろしていた。
突進して、赤ちゃんモフモフたちから縛り上げられ、ミノムシ状態にされた不審者を前にしても、祥の鉄壁の笑顔は微塵も崩れない。
美声が静かなロビーに響き渡る。
しかし、その目は完全に笑っていなかった。
ラルクから視線を逸らさないまま、祥は手元の魔力端末へスッと手を伸ばし、思案する。
(美女の残り香ねぇ………。
魔法の事は分かんねぇけど、このホテルを作ったのはルナだ。
魔力を消費して作ってたから、空調やこのホテルからルナの気配がしてもおかしくない。
身内でもないのに、それを察するって事はかなりの手練れ………。
しかし、叫びながら入って来た、そのセリフは頂けない。
どう見ても、ルナの魔力に過剰反応して突っ込んできた、極めて有害な変態だな。
……よし、一発レッドカード(即時出禁・物理排除)。
コイツと組んでるクランのメンバーには悪いが、ルナが危険な目に合うリスクは減らさないと。
他に2つのクランが来ているんだ、その人達で十分だろ。)
祥が永久追放の手続きを完了させようとした、まさにその瞬間だった。
猛烈な殺気をまとった女性2人がロビーへと踏み込んできた。
実姉のサラとソラである。
祥が「おや……」とレッドカードを突きつけようと、タブレットに伸ばした手を止めた次の瞬間──
(ゴッバキィィィーーーンッ!!!)
「がはァッ!?」
サラが一切の躊躇なく振り抜いた、鞘に入ったままの巨大な大剣が、床で縛られていたラルクの脇腹を完璧な軌道で捉え、ラルクの身体は滑らかな床を綺麗に滑りながら、ロビーの隅へと文字通り超特急で吹っ飛んでいく。
彼女は、サラはフロントカウンターの奥に立つ、祥と実弟を縛り上げたモフモフたちの存在すら一切視界に入れていなかった。
弟の粛清のことしか脳裏になかった。
サラの地獄のような声が響く。
「……そんなに楽園に行きたいなら、私が送ってあげるわよ、この我が家の汚物が」
大剣を肩に担ぎ直し、サラが絶対零度の冷え切った笑顔を浮かべる。
次姉のソラも美しい笑みを浮かべながら、弓の弦をギリリと引いて、吹っ飛んだラルクに無言のプレッシャーをかける。
「お………落ち着け姉ちゃん!!!
冒険者同士の暴力沙汰はご法度だろ?!
な?姉ちゃん達の力でやられたら、俺死んじゃう……」
「愚弟の不始末は姉の責任。」
「それで捕まるなら、本望だよ、ね?お姉♡。」
「あ、これ、マジだ。
助けて、レオンンンンンンン!!!!」
「いやぁ流石にムリっしょー。」
騒がし泣き言を漏らす男と、殺気だったその実姉を前に、祥は思案し、タブレットから手を離した。




