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第四話 10人の冒険者とホテルオープン!part1〜「ミスターゆりかごから墓場までとは俺のこと!!」「変態怖っ!!」

島に上陸したものの、あまりにも自分たちの常識とかけ離れた技術と生きて帰れるか分からない恐怖に冷や汗を流しながら、最強の冒険者たちは、ついにその白い魔法石の塔の入り口(自動ドア)の前へと恐る恐るゆっくり近づく。




ガイルと副官のガルが抜剣と防御の構えで前線を、ラルクが後方を固め、エルダとエルマが指先に自身最大の迎撃魔法を練り上げる。女子陣のサラ、ソラ、ミーナ、マイナも、いつでも戦闘できるように極限の緊張状態で武器を構えていた。




誰もが、いつ何が飛び出してきてもおかしくない、文字通りの決死の構えで歩く、




──ただ一人、最初から武器にすら手をかけていなかった、のんきな男を除いて。




「おー……。何だろこれ」




みんなが緊迫状態で術や武器を構えている横を、レオンが完全に無防備にひょこひょことすり抜け、曇り一つない巨大な透明硝子の入り口らしき壁へと近づいていく。




「レオン! 無闇に近づくな!」




ガイルが鋭く怒鳴りつけた、その瞬間。




魔法の痕跡も魔力の気配も一切ないにもかかわらず、その不気味な透明な壁が「ウィーン……」と軽やかな音を立てて、勝手に左右へと滑らかに開いた。


「なっ……空間転移の罠か!?」


ガイルたちがさらに身構えた瞬間、開いた隔壁の隙間から、南国のうだるような暑さを一瞬で完全に消し去る、涼しくどこか清涼な匂いのする未知の魔風(エアコンの冷気)がぶわっと容赦なく溢れ出てきた。

レオンはそれに怯えるどころか、気持ちよさそうに目を細めて声を弾ませる。


「あ、開いた。わぁー、涼しい。兄貴めっちゃ涼しいよー」


「こ、この風……風精霊や氷精霊の加護すら感じないのに、なぜこれほど完璧に均一な涼しさを保っているの……!?」 


「そんな………ありえない……ありえません!!このような均一な風を精霊無しに、執行するなど………!!

しかも、魔法残渣すらないなんて………!!」


最高位の精霊魔術師であるエルダとエルマが、そのあまりの常識外れな現象に顔を戦慄に染めた。


歴史上でも指折りな魔術師とも言える彼女たちの動揺に、周囲の緊張は限界を突破する。


しかしそんな周りを気にすることなく、レオンは興味深そうに、建物の中へと一歩踏み出そうとした。


「馬鹿戻れ!! 」


ガイルが声を荒らげ、レオンを連れ戻そうとした──その時だった。


カチッ、と。十人の最後尾にいた男の脳内で、何かが噛み合う音が響く。


溢れ出た冷気の中には、このホテルを魔力で構築したルナの魔力がほんのちょっと混ざり合っていた。


その微かな残り香が、ある男の『野生の勘』を直撃したのだ。




「……ッ!!! 分かる、分かるぞ!!


この風の中に香る残り香、最上級の美女の気配だあああ!!!」




ラルクがギラリと目を光らせた。

彼の座右の銘は『ゆりかごから墓場まで』──ゆりかごの赤ちゃんから墓場のおばあちゃんまで、およそ女性と名の付く者なら、全員にセンサーが反応し、例えそれがゴリラのメスであろうと紳士に接しなければならないという信念を持つ(今は紳士の欠片もないが)アウステル国屈指の女好きの変態。




その女性センサーが、ルナの魔力残差に過剰反応したのだ。




───この先に人生で御目にかかれるか分からぬ、極上の女神がいると。




「レオンのように国家主導とか主導じゃないとか言うつもりはない!!


ただ、この先は極上の女神がいるエデンという事は確かだ!!!

俺の女性センサーをなめるなよ!!

ミスターゆりかごから墓場までとは俺のこと!!

目指せ楽園ー!!」


「おい待てラルク! 突入するな!!」


ガイルの静止も虚しく、ラルクは構えていた武器を放り出し、一陣の風のごとく自動ドアの奥のロビーへと突撃していった。


その横で、涼しい風を浴びながらレオンがぽつり。


「あー、ラルク行っちゃった。


女の子がいるとか、言うんじゃなかったかなぁ……でもアイツ、俺が言う前に気づいてたしな。


手遅れか。


ラルク、相棒とか仲間としては気のいい良い奴何だけどなぁ………」


と、苦笑いを浮かべるレオンの後ろで、突撃していったラルクに対し、ルーキーズの女子陣ミーナとマイナ、および実の姉であるサラとソラ、精霊魔術師てA級冒険者のエルダとエルマの六人は、もはや頭文字Gの悪魔どころか、世界から今すぐ一粒残らず消去すべき汚物を見るような、絶対零度の目を向けていた。


特に実姉である、サラとソラの空気は冷たく禍々しい。

あまりの禍々しさに、流石のガイルも彼女たちから一歩離れた。

そんな彼にサラが冷え切った笑顔で、大剣の重い鞘をガチリと鳴らしながら言った。


「……ガイル、心配いらないわ。

迷惑はかけない。

我が家の汚物(弟)の処理は、私たちが責任を持って処理するから。」


ソラも満面の笑みで弓の弦をギリリと引いた。


「そうだね、お姉♡


ここがどんな場所か分かんないけど、あの汚物、この場所諸共駆除しちゃおっか♡」






□■□■






「……『ミスターゆりかごから墓場まで』とか自分で名乗りながら、突撃ってキャラ濃すぎでしょ………肩書きの癖が強すぎる。


美女の残り香ってなんなん怖っ」


自身の部屋と決めた3階の一室でルナはエセ関西弁混じりに、玄関の様子を観察していた。


「……突き抜けた変態だな。

でも、女性だったら誰でもいい(ゆりかごから墓場まで)ってタイプなら、逆に私個人の顔面に狂ってストーカーしてくるわけじゃないから安心かもな。


……うん、近づかんけど。

ソッコーで部屋に引きこもるけど。


変態怖っ!!」






────しかしルナは、まだ知る由もなかった。


女好きで変態なあの男ラルクが、本気で怯えそうな繊細な子には紳士になる、ジェントルフィルターというバフがある事を。


そして、絶対にルナに近づけられないと、翔のブラックリスト入りしていたラルクが、ハプニングでルナと相見えた時に、一目見ただけで、変態に遭遇しても動じないルナの本質見抜き、ルナに対して周囲の全員が「……え、誰!?」と顎を外すほどの超絶絶世イケメンの紳士に変貌してしまう未来があることを──。


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