第二話 エメラルドグリーンと海と白い浜の南国part8〜「ファーストキャリア雪月花。」 「どう見ても文字ってんじゃねえか。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆【追加固有スキル:テイマー】(おじいちゃんの愛情仕様)
・ルナ&祥が所持。・ケットシー(従業員用)やフェンリル(警備スタッフ用)の確保・育成が可能。
・テイムしたモフモフと意思疎通ができ、ルナの出力したマニュアルを瞬時に理解させる。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「おじいちゃん! さっきミジンコ体力って馬鹿にしたの許さないって思ったけど、全面撤回するわ!!!
最高のモフモフ従業員(&私の添い寝係)をありがとうございまあああす!!」
『ホッホッホ、喜んでもらえて何よりじゃ。では、3ヶ月後の納期に向けて、突貫工事がんばるんじゃぞ!
なにかあればまた連絡するでな。
じゃサラバじゃ!!』
おじいちゃん神様が緊張感のないピースサインと共に通信を切ると、私はさっそく目の前で首を傾げている10匹の赤ちゃんたちに向かって、満面の笑みで両手を広げた。
「よし、みんな! 今から全員、私たちの従業員ね! 【スキル発動】【テイマー】!!」
広げた両手をモフモフたちに翳すと、モフモフたちが光り輝いた。
瞬きの間にそれが終わると、全匹キョロキョロと自分の身体をみまわしだした。
「みゃ……ほちぇる、かいぎょ?みゃ?」
「にゃること、いっぱい、みゃ」
「きゅ、ぼく、がんびゃる。」
「シャベッタァァァ!!!」
「おじいさん、意思疎通出来るようになるって言ってたろ。」
「言ってたよ?!言ってたけど、こんな風とは思わないじゃん?!
小説あるあるの脳内に話しかける的なさ?!
そんなだと思うじゃん?!
つーか、カタコト赤ちゃん言葉可愛いね?!
あ───!!もう可愛い!!美味しいご飯と美味しいお水をあげるからねぇ──!!!
そんでもって、エアコンの効いた私の部屋で一緒に寝ようねぇぇぇぇ!!」
──そして数日後。
プレオープン中の(私と祥ちゃんしかいないから、私が客役ね)コンビニ一体型ハイブリッドホテルでは、信じられないほど尊く、完璧な光景が広がっていた。
「いりゃっしゃいませみゃー! れじ、ふくろ、わけりゅみゃ?」
1階のコンビニスペース。 そこでは、ミニサイズの『緑色のコンビニ制服』に身を包んだケットシーの赤ちゃんが、短い後ろ足でがんばってよちよち二足歩行しながら、レジのタッチパネルを小さな前足でピコピコと凄い速さで叩いていた。
よちよち歩きとの差よ………。
動き自体は無駄のない超プロフェッショナル。
なのに口から出る言葉は完璧な片言の赤ちゃん言葉、よちよち歩きという、凄まじいギャップ萌え兵器が爆誕していた。
一方、お隣のホテルのフロントや廊下に目を向けると──そこは、さらに凄まじい布陣になっていた。
「きゅ、きゅ、おしょーじ、がんばりゅじょっ!」
「ゆか、ぴかぴかにちゅるみゃー!」
廊下のあちこちでは、ホテルの清掃員キャップをちょこんと乗せた白銀のフェンリルの赤ちゃんとケットシーの赤ちゃんが、2匹で一緒に1本のモップを一生懸命に挟み、短い尻尾をふりふりしながら大理石の床を磨き上げていた。
あ、お互いの足に躓いて、2匹仲良く転がった。
圧倒的なモフモフ感よ……。
「いらっしゃいませ。」
「ちぇっくいん、こちらみゃ!」
「きゅぅん!」
フロントには、ホテルのスーツに身を包んだ、我がリゾートの【総支配人】こと神藤祥ちゃんの姿が。
地球時代に世界に名を轟かす会社を兄弟と共に経営していただけあって、総支配人のオーラが完全に本物である。
そしてその祥ちゃんの足元を固めるように、フロント用制服を着たケットシーの赤ちゃんとフェンリルの赤ちゃんがよちよちと並び、お出迎えの準備を整えていた。
「……ねえ、祥ちゃん。
この子たち、よちよち歩きの片言赤ちゃん言葉なのに、私より圧倒的に有能に働いてるんだけど。
私、いらなくない??」
「お前がいないと、ホテル建てられないから気にすんなよ、オーナー。
しかし、ちょっと問題かもな。
可愛すぎてフロントでチェックインをお客様がする時、時間がかかるかもしれねぇ。
後段取りを教えてる俺の精神が持たねえ。
流石に可愛すぎる。」
「さすが私の終身雇用スタッフ………。
真面目で有能な祥ちゃんがそこまで言うなんて………!!
祥ちゃんまで虜にするとは恐るべし、モフモフ………!!!
やっぱりモフモフしか勝たん!!」
「ドヤ顔すんな。何目線なんだそれ
………まぁでも、元々、知識はスキルで教えてるから、実践で段取り組んだだけで済んだし、これで従業員の育成と開業準備は完全に整ったな。
後は、ホテル名だけだ。」
フカフカのロビーソファでお布団にくるまりながらドヤ顔をする私を、祥ちゃんがいつもようにツッコミ、そして、その後すぐに有能秘書の顔になり、私に言った。
………あー、そっか、決めてなかったわ。
名前……名前ねぇ………
「ファーストキャリア雪月花。」
「どう見ても文字ってんじゃねえか。」
「私のネーミングセンス舐めんなよ。
雛形なければ、ヤバい事になるわ。」
「………そうだな。」
「認めんなや。」
「まぁ、いいんじゃないか?
ここを冒険者の始まりの宿にするんだろ?
キャリアとか縁起が良いだろ。」
「話逸らすなや。」
じとぉーっと祥ちゃんを見るけど、すっと祥ちゃんは目を逸らし、咳払いをして口を開いた。
「ルナ、さっそく、インターネット使って、冒険者を呼び込む方法調べるぞ。
俺、こういう時のテンプレは知らないけど、おそらく、冒険者の組み合い何かがあるんだろ。
ギルドだっけ?
それを見つけるのには、お前のスキルと俺のスキル使って手分けすれば速いだろ。」
「結局話変えるんかい。
はぁ……………せやなぁ。
こういう時、冒険者ギルド依頼してみるってのが異世界転移の王道だし。
私が提案したことだしね。
ついでに商業ギルドも見つけとこう。
後がめんどくさくないように………。
あぁ、モフモフ引きこもりライフは何時になったらできるのやら………。」
こうして、私たちのホテルは無事オープンへとなったのだった。
早く引きこもりになりたい……………
(第2話・完)




