南の島リゾート 後半〜夏休みの宿題のやり方(三つ子の魂百まで)
…………で、その有能な幼馴染がなんで今、私の頭にチョップしてまで焦ってるかっていうと、
「だらけるのはいいけど、お前、次の締め切りを忘れたわけじゃないよな?
神様に提出する『3つ目の新しいリゾートの写し』の期限、あと三日なんだけど。」
「え?」
「えって、お前…まさか…」
「……まだ3日もあるし、よゆー、よゆー。」
忘れてないよ?
ちょっと記憶にしまいすぎただけで……
「それを忘れたっつーんだよ!!」
「心読まないでよ。」
「しかも余裕だぁ?!
どこが余裕だバカ!
まぁ、最初の『南国リゾート』は、まぁ余裕をもってちゃんとやってたよ?!
でも次の『雪国リゾート』はお前、なかなか動かなくて、結局俺に泣きついただろ!!
お前が『祥ちゃぁぁん!!締め切りが、納期がぁぁぁ!!子アカウント持ってるでしょ?!手伝って───!!!』とか言って、俺とケットシーとフェンリル含めたモフモフたちと巻き込んで!!
俺ら死に物狂いで働いて、やっと完成させて、なんとか無さに献上したんだぞ!お前、それを繰り返す気か?!」
そう祥ちゃんは吠える。普段はなんだかんだ言って、私に甘くてオカンしている祥ちゃだが、今は完全に目がマジだ。
高校生の身ながら、世界有数の企業を支えていた敏腕秘書の血が騒いでいるというか、シンプルにあの修羅場で過酷な納期に追われていた過去を思い出した上に、それをもう一回繰り返すかもしれない事態に、限界を迎えている。
………悪いとは思ってるよ?
でもさ、夏休みの宿題的なやつって中々、進まないもんじゃん?
で、夏休みの最終日に泣きながらやるとか。7月中に終わらせる、祥ちゃんにはわかんないかもしれないけどさ……。
それに、私、ウィンタースポーツわかんないから、余計に何処から手をつけたらいいか、分からなくなっちゃって……
そんなふうに考えてる、私をジト目で見つつ、祥ちゃんは続ける。
「しかも今回は、神様が『次は京都や奈良みたいな最高級の和風リゾートでくつろぎたいのう……』って、わざわざ専用の【和風エリア】を先行解放してくれたんだぞ?
お前に与えられたそのスキル、ホテルを建てるだけじゃねえだろ。
お前が今まで見てきたアニメや漫画、小説のスキルや技が使えるんだから。
地球のネットスーパーからポテチを取り寄せるのも、アミューズメントパークの絶叫マシンを丸ごと出現させるのも自由自在、もっと言うなら、か◯は◯波だってやろうと思えば、出せるとか言う、とんでもないチートスキル貰ってるだろ。」
「著作権の問題で出せないけどね。でも、オタクで良かったよねー、でもスキル名【オタク】ってどうかと思う。」
「話遮んな。たくっ、そんだけもらって、配置場所さえ考えれば、ボタン1個で出来るのに、なんでお前……」
大きな溜息を吐く祥ちゃん。私だって、言い分あるんですが???
「だって……和風の高級旅館とかそんな侘び寂びとか小粋なもの、考えられる知識ないし、枯山水とかって、そもそも何をもってそういう、とか思っちゃうし……。
アトラクションは自分で動かさなくていいから楽だけどさぁ……」
「はあ…あのなぁ…、お前の今の仕事は 異世界の神様に『日本の美』を献上すること何だぞ?
あんな好々爺みたいな神様、待たせてやるなよ……。
めっちゃいい神様なんだから、真司直伝の交渉術で納期を延ばそうなんて考えるなよ。
とにかく、今すぐ起き上がって新しい和風リゾートの設計に取りかかれ、な?
分かったな?」
「…………はぁい。」
──そう、ここは異世界の孤島。
最初の南国も、次の雪国もクリアし、今は神様から託された「高級和風リゾート」の納期に追われながら、幼馴染の祥ちゃんにガミガミ怒られる日々。
でも、ここは誰も私を襲ってこない、好きなだけダラダラ出来る、最高に安全なリゾート。
今でこそ、こうして最高に怠惰で、最高に慌ただしいスローライフを満喫できているけれど。
ほんの少し前まで、私は地球という星で、この『顔面』のせいで、ウチの家系の同じ顔の女性陣たちと、中々スリリングな、日々を送っていたのだ。
そもそもの始まりは、神様に会うよりもずっと前。
動きたくない私や姉妹たちの代わりに、神藤家の10人兄弟たちが私の周囲でストーカーたちを千切っては投げ千切っては投げしていた、あの普通(普通じゃない)日常からだったな。
プロローグ終。
第0話に続く。
あ、言い忘れた、ちなみだが、先程のモノローグだが、私はナルシストではない。裏打ちされた(負の)実績の賜物で自覚しているだけである。




