第一話 好々爺な神様とスキル名【オタク】part11〜「やっぱり、コイツが一番ものぐさですか。」 「遺憾の意。」
「こんなチートスキル、原住民に知られたら、厄介なことに巻き込まれるぞ、絶対に………。
俺、令兄さん達じゃないんだから、こんなの貰っても、持て余すつーの………。」
あまりのチートスキルっぷりに、祥ちゃんは本気で頭を抱えて重いため息を吐き、呟いた。
………祥ちゃんも、そう変わらないとおもうよ?
さっきも思ったけど、祥ちゃんって一般人じゃなくて逸般人だからね???
まぁ、真面目で常識のある祥ちゃんからすれば、世界を滅ぼせるレベルのチートなんて胃が痛くなるだけの劇薬だろうけども。
そんな祥ちゃんに対し、おじいちゃん神様は、どこか遠い目をして諭すように言った。
「わしも最初はそう思ったんじゃがな、なんせ君たち兄弟とルナちゃん姉妹が行く異世界は、多かれ少なかれ剣と魔法の世界ってやつじゃ。
そんな物騒な世界の中で、この『顔面凶器』のルナちゃん姉妹を守るには、それくらいのチートが必要じゃろう?」
「…………」
「今、顔面凶器ったか、この爺。
というか、祥ちゃん何故黙る。」
おじいちゃん神様は、さも良いことを言った風に微笑んだけど、今、かなり失礼なこと言ったよな????
いや、地球時代は24時間ストーカーに狙われるヤバい日常、365日だったから、実質『凶器』なのは否定できないけども!
祥ちゃんたち兄弟には、私たち雪代姉妹全員がこれでもかってくらい迷惑をかけてる自覚はあるけどもさ!!
自分で言うのは良くても他人に言われると地味にイラッとするんですが?!
私の額にピキピキと青筋が浮かんでいるのを察したのか、おじいちゃん神様は慌てて両手を広げ、話を本筋へと戻した。
「じゃ、じゃからこそ! 誰も干渉できん世界にお主たちを送ろうと思うたのじゃ! ルナちゃんは島が欲しいと言うとったし………。他の姉妹たちも要望は叶えられる限り叶えておるぞ!!」
「その要望を叶えようとしたから、全員バラバラな異世界なんですね。」
納得したように、祥ちゃんが深く頷く。
「そうじゃ。メインに使うスキルがバラバラなのもな。
まぁ、ルナちゃん程引きこもりたい願望は多く無かったがな。」
「やっぱり、コイツが一番ものぐさですか。」
「遺憾の意。」
姉ちゃん達や妹もものぐさだよ。
(蓮以外。)
私だけがものぐさなわけじゃないやい。
「……まぁ、スキルの説明はこれくらいにしよう。
また分からない事があれば言っておくれ。
通信機をあげるからの。
ところでルナちゃん、祥くん、ここで一つ重大なお知らせが。」
「「お知らせ?」」
おじいちゃん神様の言葉に祥ちゃんと揃って首を傾げる。
そんな私たちにおじいちゃん神様は言いづらくそうにして、目をそらしている。
……なんかデジャヴ。
嫌な予感するんだけど………。
おじいちゃん神様は目をそらしたまま、というか、私たちの視線に耐えられなかったのか、顔までそらして、そのまま口を開いた。その声は震えている。
「いや、実はのう……ものすごく言いづらいんじゃが………。
お主らに授けたスキルがあまりにも規格外のチートすぎたせいで、天界の『暇なある神』から盛大な横槍が入ってしまってな……。
『ただの人間をここまで、優遇するのはいかがなものか。
古来より力を与えられたものは、それ相応の義務が発生するはずだ。』と。
それに他の神々も乗りおって………。」
「「…………」」
「義務もなにも、ルナちゃんは疲れとるから無理じゃ、祥くんも異世界という訳が分からぬ世界では、ルナちゃん守る事で体いっぱいじゃって抗議したんじゃ。
何とか世界を救うとかいう、ヤバいお役目は回避したんじゃが、代わりに一番初めの島の納期を勝手に決められてしまってな…………。」
「納期……?」
不穏すぎる単語に、嫌な予感が止まらず、思わず呟くと、一段と声を低くした祥ちゃんがおじいちゃん神様に聞いた。
「嫌な予感がしますが、聞きましょう。いつまでなんですか。」
「………三ヶ月。」
「「はあぁぁぁぁ!!???三ヶ月????!!!」」
三ヶ月?!
三ヶ月で右も左も分かんない異世界で、生活の地盤を整えながら、リゾート作れって?!
バカじゃん?!
「そうじゃ!!バカなんじゃよ!!」
「あれ、ナチュラルに心の声読んだよね、このおじいちゃん。」
私が心の中で突っ込むのを他所に、おじいちゃん神様は完全にリミッターが外れた様子で激昂し始めた。
「何の伝もクソもない世界で三ヶ月とかほざけたこと言いよった!!!
あのバカ神共ら『3ヶ月後にそっちの世界に遊びに行くから、それまでに神様たちも大満足して、お客様が沢山来てもおかしくないレベルの超一大リゾートを作っておけ』とかめちゃくちゃな無茶振りを突きつけてきおって!!!
元々納期やら無茶振りやら酷いと思うとったが、それに輪をかけてなんじゃい!!
脳味噌あるんか?!
言い出しっぺの駄女神はニヤニヤしとるし!!
じゃから、わしの孫息子に振られるんじゃ!!」
「ナチュラルな罵倒と暴露に戸惑いが隠せない。
凄い吹っ切ってんじゃん、おじいちゃん。
というか、言い出しっぺの神って、女やったんかい。
しかも振られたと。
うーん、地雷臭。」
「お前みたいな、性格が悪い女にウチの自慢の孫息子が靡くかい!!!
孫息子には、もう最愛の女の子がおるんじゃ!!
なのに、その娘との事も邪魔しよってからに……!!」
「おじいさん、気持ちは分かりますが、落ち着いて下さい。
時間もうないんでしょう?
それに、聞き捨てならないことをさっき言ってませんでしたか?
何ですっけ、『3ヶ月後にそっちの世界に遊びに行くから、それまでに神様たちも大満足して、お客様が沢山来てもおかしくないレベルの超一大リゾートを作っておけ』………?」
「ヒェッ」
「ォ゙?!」
「怯えないでください、おじいさん。
んで、ルナ、お前今の声、どっから出した?」
つもり積もった愚痴を叫ぶおじいちゃん神様を祥ちゃんが止めて、話を戻す。
その祥ちゃんの言葉に私はハッとした。
そうじゃん!!暴露に思わず突っ込んじゃったし、その後の愚痴が気になって、思わずスルー仕掛けちゃったけど、3ヶ月!?
たったの90日!?いくら私たちのスキルが規格外のチートだからって、何もないただの無人島から、神様や大量の観光客が押し寄せるレベルの高級リゾートを完成させろだって!?
「な、物理的に無茶言うなクソ神どもォ!! 開拓ナメてんの?!
そんな事したら、(精神が)死ぬぞ?!
…………祥ちゃんの!!!」
「俺かい!!!!」
そりゃ、そうでしょ、この物臭な、私が3ヶ月で作れるとお思いか。
おじいちゃん神様と約束したから、約束は守るよ?
でもデスマーチには向いてないんよ、私。
遠い目をする私と頭を抱える祥ちゃんに神様が息を整えて言う。
「………すまんのルナちゃん、祥くん。
ちょっと熱くなってしまったわい。
まぁ、 わしもタダで引き下がったわけではないのでな。
奴らの無茶振りに必死に粘って抵抗して、お主が最初に作るリゾートは建築・開拓がしやすいように、初期状態からMAXまでレベルアップさせておいたからの。
好きなリゾートを選んでおくれ。
そしてな、それを使ってなんとか激務を生き延びてほしいと思っておる。
…………祥くん!!!大変だと思うが、補助頼むの!!!!」
「いや、やっぱり俺かい!!おじいさんもルナには無理だって、思ってるんですね!!!
それはそれとして、ありがとうございます!!!!!」
おじいちゃん神様の涙ぐましい努力(レベルMAX化)には感謝しつつ、それ以上にタイムリミット3ヶ月のデスマーチの絶望感が勝っているのか、ヤケクソ気味に言う祥ちゃん。
うん、祥ちゃん、ガンバ!!
「して、そこで若干他人事になりかけとる、ルナちゃんや。」
「え?」
おじいちゃん神様に急に話を振られた私は首を傾げる。
じっと私を見つめるおじいちゃん神様に、なんとなく嫌な予感がして、私は汗を垂らした。
………あれれー???なんか嫌な予感がするぞぉ???
「祥くんはあくまで、補助。
君が、頑張らないと、レベルMAXの効果は発動せんからの。
何でも人に押し付けるのはいかんよ。
君が約束を守る良い子だって事も、いざと言う時は責任感があり、やる時はやる子だって事も知っとるがな。」
「おいルナ、お布団引きこもりライフの夢が、一瞬で超巨大リゾート経営デスマーチに化けたぞ。」
無慈悲なおじいちゃん神様の言葉と祥ちゃんの呆れ果てた目で私に言う祥ちゃん。
そんな二人に私は息を吸い込んだ。
「嫌だあああ! 働きたくない! お布団の中でポテチを食べてゴロゴロしたい!!!
なんで異世界に来てまでブラック企業の突貫工事、しなきゃいけんのじゃ────!!!!
嫌じゃ────!!!!!ゴロゴロするんじゃ──────!!!!!!」
「あ、わしの口調移った。」
─────こうして、完全安全なはずの南国リゾートを舞台に、私たちの自由を賭けた3ヶ月の超ハードモード開拓ライフの幕が、大絶叫と共に切って落とされたのだった。
(第1話・完)
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