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第十八話 遭遇フラグ回収part3〜「…………誰だ?」

Side 第三者視点


ラルクが消えたコンビニ。

そのコンビニは混沌と化していた。


「ラルク!!…………クソッ!!!」


レオンが叫び、ラルクが吸い込まれた床─もう塞がり、何もない所を悔しげに叩く。


いきなり消えたラルクに冒険者一同は、驚愕し、皆の瞳や言葉に動揺を隠せない。


「おい、どういうことだ!? ラルクの奴、急に地面に呑まれやがったぞ!」


「ガ、ガイルさん落ち着いて! これって、まさかホテルの──」


ミーナが怯えたように声を震わせる。


一瞬、冒険者一同の間に「ホテルの罠か?」という不穏な空気が流れるが、それをガイルが、鋭い目で床を見つめたまま否定した。


「…………いや、違う。冷静に考えろ。

もしこのホテルが俺たちに危害を加えるつもりなら、食事に毒を盛るなり、風呂に入ってる無防備な時や就寝時に、全員暗殺すればいいだけだ。」


「………ショウさんやシロたちには、俺たちを始末するくらい、容易く出来る力がある。

……………わざわざチェックアウトの直前に、こんな手の込んだ真似をする意味がない。」


考察しているガイルに、相棒のガルも鋭い目のまま肯定した。


「………ねぇ、ひょっとして、このホテルに悪意を持つ存在がいるんじゃない?」


「………どういうことだ。」


ガイルとガルが考察しているとそんな2人に、レオンは呟くように言い、それにガイルが反応する。


「さっき、ラルクが落ちていった時、聞こえたんだ。」


ラルクが落ちていったあの瞬間、レオンはなんとか彼の手を掴もうと、駆け出しその手を伸ばした瞬間、聞こえたのだ。


レオンの頭の中に、響いたあの声。

それは酷く不快で傲慢な、明らかに良いものではないモノの声だった。


『あ(・)の(・)女(・)の同(・)じ(・)顔(・)のクセに、幸せに生きてるなんて生意気よ。

こんな生温い世界じゃなくて、死ぬほうがマシな世界にしてあげるわ。』


おそらくレオンに聞かせるつもりも無かったであろう声。


そんな悪意の残骸にレオンの背に冷たい汗がつたい、その悪意に満ちた声が消えた瞬間、レオンの勘が冴え渡り、脳内のバラバラのピースが瞬時に繋ぎ合わさったのだ。


「『あ(・)の(・)女(・)の同(・)じ(・)顔(・)のクセに、幸せに生きてるなんて生意気よ。こんな生温い世界じゃなくて、死ぬほうがマシな世界にしてあげるわ。』………あの声はそう言ってた。

…………こんな生温い『世界』って、言い方可笑しいと思わない?

まるで、世界に干渉できるような言い方。

それに悪意を持たれてる、オーナーの存在って…………ねぇ、兄貴?

ひょっとして、ショウさんとオーナーって、マレビト?」


「「「「「「「「!!」」」」」」」」


レオンの言葉に、冒険者一同は揃って息を呑んだ。


彼らの頭の中でこのホテルの違和感が、一本の線で繋がっていく。


そうだ、このホテルの異常さ、常識はずれなショウという男。

それが異世界からの来訪者というのなら、全て説明がつく。

今まで思い浮かばなかったことが、異常なくらいである。


気づいてしまった冒険者一同が、揃ってガイルに視線を向ける。


おそらく気配を揺らさなかったこの男は気づいていただろうから。


全員から視線を向けられ、ガイルはそれに一拍置いて、ため息を吐き、口を開いた。


「ああ、おそらくな。

じゃなきゃ、このホテル、全てに説明がつかねぇ。」


「…………どうして、教えてくれなかったのかしら?」


「………貴女たちほどの人なら気づいてると思ってましたよ。

エルダさん、エルマさん。」


ガイルの言葉に感情を抑えたように言うエルダ。

しかし、中級冒険者の自分が感づいたのだ。

精霊魔術師の彼女や彼女の妹であるエルマが気づかぬはずがない。


それを気が付かないと言うことは、何かの─それこそこの世界そのものに干渉し、自分たちの認識ごと捻じ曲げるような、高位の存在が絡んでいるとしか思えないのだ。


「でも…………なんで死ぬ方がマシな世界を作る事と、ラルクを誘拐する事が繋がるの?」


ふと心配そうな顔をしたミーナが呟くと、レオンが冷や汗を流しながら言った。


「おそらく、その高位の存在は、ラルクを使って、このホテルへの嫌がらせを企んでるんだと思う…………。」


「…………嫌がらせ?それって…………。」


レオンの言葉にミーナは思い当たったのか、顔を青ざめさせ、他の冒険者一同も顔色を悪くした。


「………見ててみんな気づいてると思うけど、ショウさんは本当に、このホテルのオーナーを大切にしてる…………。

ショウさんの最大の地雷は、オーナーだって短い付き合いの俺たちでも、察せれるくらい、愛情深い人だ。

だから、俺たちにオーナーの部屋に近づくな、近づいたら出禁にするなんて言ったんだろうしね……………。


…………そんな状況で、オーナーの部屋にラルクが入ったらどうなると思う?」


半ば皆が思い当たったことを、あえて口に出す、レオンの顔色は悪い。



「──────悪意ある存在が、オーナーの部屋にラルクを放り投げたとしたら。


ショウさんが怒りのあまり、ラルクに致命的な危害を加えるかもしれない。


そうなれば、いくらこのホテルに悪意がないと俺たちが証明しようとしても、冒険者ギルドは信じないだろうし、さっき俺たちが、疑心暗鬼に陥りそうになってたが、もしも持ち直せないで、このホテルに悪感情を持ってしまっていたら、俺たちだって敵に回ってたかもしれない…………。

最終的に国を敵に回すことになっていただろう……………!


あの存在は、ショウさんと俺たちを『お互いに潰し合わせよう』としてるんだ!!」


最後は半ば叫ぶように言うレオン。


そのレオンが言い終わるより先に、冒険者一同はシティホテルエリアへと駆け出した。


その後をもふもふたちが追いかける。


なんとか間に合えと息を切らしながら、階段を駆け上がり、一昨日紹介されたオーナーの部屋の前まで、休むことなく駆け抜ける。


そして部屋の前につき、一瞬蹴破ろうとガイルがしたタイミングでトラが、スペアキーを素早く取り出し、解錠した。


一瞬の間も空けず、ドアを開いた冒険者一同の瞳に映ったものは──────



「失礼いたしました、レディ。


レディの寝室に無断で立ち入るなどという無礼、いくら故意でなくとも許されるものではないでしょう。


御心を乱してしまいまして、誠に申し訳ございません。」


一人のシーツを目深にかぶり、顔が見えにくくなっているある一人の女性と。


─────そのベットから1メートルは離れて、ルナの心の負担にならない位置に跪き、どこぞの王族もかくやという紳士もびっくりな対応をするラルクの姿があった。


「…………誰だ?」


その姿に思わずこぼれたガイルの言葉に、全員が内心頷き、冒険者一同は呆気に取られるしか無かった。



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