第15話 ダイニングバーともふもふバーテンダーpart3〜美酒テロ回その2【アメリカン・レモネード】【コスモポリタン】【グラスホッパー】
そう祥が言うと、今度は五郎がエルマの前へと、グラスを滑らせるよう置き、側に和牛ステーキを添えた。
エルマの前に置かれたカクテルは赤と黄色の二層のグラデーションが大変美しい【アメリカン・レモネード】である。
「こちらは、アメリカン・レモネード、というカクテルでございます。
甘酸っぱいレモネード、その上に糖度の違いを利用して赤ワインをそっと浮かべることで二層に分かれた、美しいカクテルができるのです。
カクテル言葉は「洗練」。
お洒落で知的な、エルマ様にぴったりかと。」
「あら、フフッ、嬉しい事を言ってくださるんですね。
喜んでいただきますわ。」
祥の言葉にエルマがニッコリと微笑むと、そっとグラスを持ち上げ、口をつける。
口に含んだ瞬間、赤ワインの芳醇な渋みとコク、レモネードの甘酸っぱさが口に広がり、そのさっぱりとした爽快な味わいに、エルマは頬を緩ませる。
「まぁ、美味しい!
……ワインとレモンでしょうか?
でもワインがこんなに美味しいなんて………。
こんなに美味しいワインが入ったお酒飲んだの初めてです!!」
地球の中世もそうだったが、異世界において、ワインというのは、よほど高額なものでないと、美味しいものは飲めないし、そういうものは、貴族それも、高位のものでしか飲めない。
今の日本のように、ある程度の金額を出せばそこそこ良いものが飲めるものではないのだ。
そう考えれば、とても貴重なものと言えるだろう。
そんな会話を祥とエルマがしている最中も、ミケと五郎は次々と女性陣にカクテルと和牛ステーキを出していく。
サラには【コスモポリタン】、ソラには【グラスホッパー】、ミーナには【ミモザ】、マイナには【ファジーネーブル】というカクテルがそれぞれ目の前に差し出される。
サラの目の前には、夕暮れ時の空を溶かしたようなカクテルが置かれる。
そのグラスの中身は、鮮やかなピンク色から、宝石のような深いルビー色に、グラデーションになっていて、それはバーの照明に当たって、美しくきらめいている。
そのうっとりするような美しさにサラは目を輝かせた。
「サラ様にお出ししたカクテルは【コスモポリタン】。
カクテル言葉は『華やか』。
ラルク様に接する貴方は、とてもしっかり者のように思えます。
――今、この瞬間はその肩の荷を下ろして、この甘酸っぱさに身を委ねてみてはいかがですか?」
そう微笑んで祥が言うと、サラもクスリと笑い、グラスを持って口を開いた。
「────ええ、せっかく美味しそうなお酒をいただくんだもの。
飲む間はのんびりしてみようかしら。
どうせまた、あのラルクがバカやらかすだろうから、愚弟を締めなきゃいけないし。
………このホテルに迷惑かけるわけにはいかないもの。」
そう言って、グラスのカクテルに口をつけるサラ。
口の中にクランベリーとライムの甘酸っぱいフルーティーな味が広がり、サラは口を緩めた。
「美味しいわ…………。
とっても癒やされる…………。」
そう言って、口をほころばせるサラに温かな空気が流れる。
しかし空気が読めないこの男。
「………てか、俺が締められることは確定なのね。」
そうつぶやくラルク。
ボソリとサラの言葉に対する、ラルクの苦情が聞こえてくるが、全員がスルー、黙殺する。
………ラルクが変態行為をしなければいい話だろう。
皆、そんなことが頭によぎるが、口に出すことなく、祥はラルクをスルーしたまま、続いて、ソラの説明をしだした。
ソラの目の前には、新緑の若葉に朝露が降りたような、美しくも優しいパステルグリーンのカクテルが置かれ、その注がれたグラスにはストローが添えられている。
ソラの鼻腔にミントとカカオの甘く清々しい香りが、フワリと香り、そのスッキリとした香りにソラの瞳を瞬かせた。
「ソラ様にお出ししたカクテルは【グラスホッパー】。
ミントとカカオが入ったグラスに、生クリームを入れシェイクした、飲むチョコミントアイスのような濃厚デザートカクテルでございます。
カクテル言葉は「喜び」「希望」「悪戯好き」。
チャーミングなソラ様にぴったりかと。」
「アイス!!
昨日食べたやつ!!
お酒にもなるんだ!!
それにお酒に言葉なんてあるんだぁ!!
おもしろーい!!」
祥の言葉にソラは反応して、はしゃぎ、更に「悪戯好き」というカクテル言葉が気に入ったのか、いたずらっぽく微笑んで目を輝かせる。
ウキウキしながら、グラスを持ち上げ、添えられたストローから一口すすると、ソラの瞳が丸くなった。
まったりとしたチョコの濃厚な甘みとシルクのように滑らかでクリーミーな口当たり。
それが爽やかなミントの香りと一緒に、口いっぱいに優しく広がっていく。
その清涼感のある贅沢な味に、ソラはうっとりと頬を緩ませた。




