第15話 ダイニングバーともふもふバーテンダーpart1〜「いらっちゃいまちぇ!」 「まっちぇた、みゃ!!」
Side 第三者視点
シロの完全復活アピールに、ルナがドン引きした(後ろで密かに復活してるガルにも引いた)数時間後。
昼食後のまったりした時間はあっという間に過ぎ去り、ホテルには再び、大賑わいの夜の時間が訪れていた。
バイキングを通り抜けた、奥の扉、その扉の前にずっとルナの布団のクリーニングに、かかりきりだった祥が冒険者たちを連れてやってきた。
─────ちなみに、シロとガルが復活して並んでいるのを見て、もふもふ共々、祥がドン引きしたのは言うまでもない。
さて、話を戻すとしよう。
「……ショウさん、この扉の奥に何があるの?」
「昼間は閉まってたわよね?」
不思議そうに首を傾げるレオンやエルダたち。
それに、祥はニッコリと微笑み口を開いた。
「こちらは、ダイニングバー。
───お酒が飲めるお店、といったところでしょうか。
今宵はこちらで宴でもと。
楽しい一夜を、どうぞお楽しみくださいませ。」
そう言い、笑みを浮かべたまま、奥の扉を静かに押し開けた。
カチャリ、と小気味よい音が響き、扉が左右に開け放たれる。
「「「っ………………!!」」」
開かれた扉の先、その先を視界に入れた瞬間、冒険者一同は、息を呑んだ。
そこに広がっていたのは、これまで食事をしたフードコートとも、バイキング会場とも一線を画す、洗練された大人の空間──『ダイニングバー』だった。
薄暗くはあるが、ぼんやりと温かみのある琥珀色の間接照明が、優しく、そして幻想的に室内の陰影を際立たせており、磨き上げられた漆黒の木製カウンターに、天井のスポットライトが美しく反射している。
そんなシックで圧倒的でお洒落で大人な雰囲気に、冒険者一同の誰もが言葉を失って立ち尽くす。
しかし、彼らの視線を何よりも釘付けにしたのは、バーカウンターのまさに中心に佇む2匹の姿だった。
「いらっちゃいまちぇ!」
「まっちぇた、みゃ!!」
カウンターの向こう側。
そこには、シックなケットシー用とフェンリル用の燕尾服に身を包み、スタンバイしている、ミケと五郎。
二匹の小さな前足には、すでにカクテルシェイカーが、まるで体の一部であるかのように、カシャカシャと振っている。
二匹の普段の愛らしい姿はどこへやら、その佇まいはまさに一流のプロそのものだ
冒険者一同はスポットライトの光を背負い、静寂の中でビシッと空間を引き締めるミケと五郎の格好良さに、ただただ目を丸くして圧倒される。
「き………」
しかし、その静寂が破られるのは一瞬だった。
「きゃああああああっ♡
なにこれ、可愛いっっっっ!!!!」
「あの燕尾服姿、反則でしょ……っ!?」
エルダをはじめとする女性陣が、黄色い悲鳴を上げ、お洒落な大人の空間は、一瞬で賑わい、女性陣の黄色い歓声で覆い尽くされた。
騒いでる女性陣の横で、驚いているラルクとレオンは口を開く。
「すげぇ……何してるか、分かんないけど……。
ミケと五郎、めちゃくちゃ、手際が良いのは分かる………。」
「…………あ、あれ、兄貴が言ってた、カクテルって酒?
ってことはミケと五郎って、バーテンダーってやつ?!
珍しい!!
初めてみた!!
わぁ、兄貴が羨ましがるだろうなぁ………。
………まぁ、カラさんのお土産選びで、ああなったんだもん。
自業自得だけどね。」
ラルクが呆然と呟くと、ジッと見つめていたレオンが、何かを思い出してように叫んだ。
どうやら、この世界にも数少ないがバーテンダーがいるらしく、自他共に認める、酒と嫁大好き男、ガイルからレオンは聞いていたらしい。
…………もし、これを知ったら、ガルやシロのように、人としての道を外れた胃袋を持っていないため(そのくせ、嫁から出された劇辛を食べて、トイレの住人になるのだ。嫁バカのせいで味覚バカになっているから救いようのない。)、今、医務室でロボ先生特製薬膳粥を食べているガイルは、血の涙を流して悔しがるだろう。
教えないのがあの男のためかもしれない。




