第十四話 昼食の極上和牛ステーキpart4〜(…………遺憾の意。) 多分、遺憾の意を唱えたいのは祥である。
「ミーナちゃ、なんで、クロちゃ、ブンブンしたの?」
ミーナの豹変ぶりを、ステーキを焼きながら見ていたトラが首を傾げて聞く。
「このお肉が昔、王女様の誕生日に出した、ドラゴンのお肉と味が似てて…………。
お父さんが王族の御前に出すものだからって、張り切ってドラゴンのお肉を出したの。
借金までしてさ…………。
まぁ、それのおかげで、王族の方に気に入られて、王族御用達って泊がついて、すぐ借金も返せたんだけど。」
そう言って、苦笑いを零すミーナ。
それにエルダとエルマも反応する。
「ああ!王女様の十歳のお誕生日の時ね!
私もその時、王城にいたけど、ドラゴンステーキを出したのミーナちゃんのご実家のお店だったのね!
アレは美味しかったし、確かにコレ同じ味がするわね!ねぇ、エルマ?」
「えぇ、アレはとても美味しかったです。
素晴らしい腕前をお持ちなのですね、ミーナさんのお父様は。」
他の冒険者たちとは違い、美味しそうだが、少し懐かしそうに和牛ステーキを口へと運んでいた、エルダとエルマはミーナに声を弾ませながら言う。
王城にいたことがあるとは、今までの発言で伺えていたが、どうやら、その時、王城にいたらしい。
「ドラゴン!
それは珍しい物を出されたんですね。」
驚いたように言う祥。
この世界を調べた時に、ドラゴンの希少性も閲覧していたため、素直におどろいている。
「あはは………。そんなにランクが上のものじゃないけどね…………。
それでも、ドラゴンってなるとかなり高価だから、大変だったの。
お父さんが王族にオススメするなら、味を知らねばって言って、私にもくれたから、味見できたんだ。
それと同じ味がしたから、もしこれがドラゴンよりも安く手にはいるならって思ったら、つい…………。
本当にごめんね、クロちゃん。」
心底すまなそうに言うミーナ。
どうやら、ドラゴンと同じ味の和牛の流通経路を手に入れれば、実家の定食屋がもっと繁盛すると思っての行動だったようだ。
その言葉に相槌を打ちながら、笑みを浮かべ、祥は考える。
(…………よくドラゴンは和牛ステーキの同じ味だという描写がラノベであるってルナが言っていたが、この世界でも一緒らしいな…………。
そこまでランクは高くないらしいが…………。
ランク高くなくても、珍しいドラゴンの肉が、この黒毛和牛ってことは。
この黒毛和牛は俺たちが頑張れば手に入るレベルだけど、それこそグラム何万単位の手が届かねぇレベルの和牛なら…………。
高ランクのドラゴンレベルなんじゃ…………。
この推測が正しければ儲かるだろうけど、そうなれば、このホテルやルナのスキルがバレる危険が出てくる…………。
ミーナさんには悪いけど、教えるのは無しだな。まだ。)
そこまで考え、祥は口を開く。
「申し訳ございませんが、何分、コレはこのホテルの企業秘密なのです。
私共も一存ではお教えすることはできません。
ご容赦を。」
そう言い一礼する祥。
そんな祥に慌てたように両手を前で振るミーナ。
「謝らないでください、ショウさん!!
そうですよね、料理人が仕入れ先を教えるわけないですもん。
私が悪いんです!
頭を上げてください!!」
「………ご理解、いただけて何よりで御座います。」
慌てて頭を上げるように言うミーナ。
その言葉を聞いて、顔をあげ、悠然と祥は微笑む。
なんとか、ルナの情報が漏れるかもしれない道を一つ潰したようだ。
………なのに当の本人はというと。
(………っていうか、定食屋なのに王族御用達ってすごくない?!
マジか。
夢があるし、フットワーク軽い王族なんだな。
しかも国が繁栄してるってことは、ただの距離が近いだけの王族じゃないんだなぁ。
人格者の上で切れ者って、おじいちゃん神様、いいところに下ろしてくれたなぁ。)
…………この呑気さである。
まぁ、着眼点は悪くはないんだが………。
このルナという子。
意外と、おバカそうに見えて、頭は回るのだ。
ただ、言動がおバカに見えるだけであって。
(…………遺憾の意。)
多分、遺憾の意を唱えたいのは祥である。




