第十四話 昼食の極上和牛ステーキpart3〜実食 ※飯テロ注意
冒険者一同がカトラリーを手に取り、突き刺したのは、断面がほんのり美しいピンク色な極上ステーキ。
冒険者一同は待ちきれないとばかりに、各々、一口大の肉を口に放り込んだ。
一人一人の反応を個別に見ていこう。
まずはレオンだ。
「………………ッッッ!!!!」
肉汁が滴る極上のステーキを口に入れた瞬間、レオンは動きを止め、硬直した。
まだ泣いた影響で腫れぼったい瞳が、驚愕に染まり開かれ、一瞬言葉を失う。
「レオンちゃ?」
固まるレオンに五郎が心配そうに声をかけた瞬間。
「うまい!!!!!!!!!!!」
「みゃあ?!?!?!」
ガバッと顔を上げ、叫ぶレオン。
その様は某炎の鬼退治の剣士か、青い空の下で、極上の食材を食す芸人のようだ。
レオンの叫びに、五郎は尻尾を膨らませ、ピョンと跳ねた。
「な、なんっっっっだこれ……!
噛んだ瞬間、肉汁ジュワって染み出て………。その肉汁が頭のてっぺんから足先まで、まで突き抜けるくらい甘くてジュウシーで……
………っていうか、噛んでない!
口に入れた瞬間、お肉がすーって溶けて消えたんだけど!?!?
え?!肉って飲み物だっけ!?」
人生初めての体験である、高級牛肉の味に、思考が追いついていないレオン。
だがその間にも手は止まらず、口に次々と運んでいる。
そんな彼の隣で絶句しているサラ。
次はサラを見ていこう。
「……っ!?」
絶句したあと、サラは口元を手で押さえながら、信じられないといった様子で何度も咀嚼している。
「本当ね……!
こんなに柔らかくてジューシーなお肉、生まれてから、一度も食べたことがないわ……!
脂が全然くどくなくて、むしろ甘みがあって、
いくらでも食べられちゃうわ………!
私はこの塩とワサビの組み合わせが一番好きよ。」
今まで食べてきた魔獣の肉などと比べ物にならない旨さ。
その旨さに、肉の概念を覆されたサラが、頬を染め、感動の声を漏らす。
そんなサラの隣のソラ。
彼女は一口、口へと運び入れた瞬間、もはや喋ることなく、黒毛和牛の美味しさに悶え、幸せそうにしている。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
一口入れ、口で甘く溶けた肉の甘みを堪能しつつも、手を止めることは出来ないようだ。
さて次のミーナはというと。
「………………これ……………」
「ミーナちゃ?」
一口、口に肉を入れた瞬間、ソラと同じく黙り込んだミーナだが、彼女と違い、ミーナは黙り込みつつも、視線を鋭くし、しばらくしてポツリと呟く。
その呟きを耳に止めたクロが不思議そうに首を傾げながら、話しかけるとミーナはガバリと、顔を上げた。
「クロちゃん、これ、どこのお肉?!
高いの?!
庶民じゃ手に入れられないかな?!」
「みゃ?!にゅんにゅんにゅん?!?!?!」
「落ち着いてくださいませ!!ミーナ様!!!」
クロを掴み揺さぶるミーナ。
それを慌てて止める祥。
祥に止められ、ハッと正気に戻るミーナ。
慌ててクロから手を離し、すまなそうにクロを見る。
「ごめん、クロちゃん………。」
「らいじょうぶぅぅぅぅぅぅ…………。」
「目ぇ回ってんじゃねぇか。
無理すんな。」
解放されたクロだが、あまりにも揺さぶられすぎたのか、フラフラと、よたついている。
それを後ろから、ささえつつ、祥はクロに声をかけ、その後にミーナに向き直った。
「ミーナ様、悪気がないのは重々存じておりますが、彼らは私共にとって大切な従業員ですので、あまり乱暴な真似はご遠慮いただきたく。」
「ごめんなさい………。
あまりにも美味しすぎて…………。」
「いえ、分かってくだされば良いのですよ。」
祥の注意にシュンと方を落とすミーナ。
それに微笑みつつも優しく諭す祥。
そんな様子を布団も何もかも持っていかれて、落ち込みつつも、モニタリングしていたルナが呟く。
(…………ミーナさんには優しいんだね。
私だったらチョップかもな。
ミーナさんのこと気に入っちゃった?
………んー……あ、違うか。
笑顔浮かべてるけど、私や兄弟と居る時のあのクシャッとした笑顔じゃないし。
…………あぁ、いつものアレか。
誰にも優しいジェントル祥ね。
祥ちゃん、フレンドリーで、誰にも優しいし、誰が相手でも変わんないけど、ラインの内側にいれるかどうかの、見極めはシビアだし…………。
あの笑顔してないってことは………。
身内じゃない対応ってことだよね。うん。)
そう考えるルナ。
………自分が今どんな顔をしているか、自覚しているのだろうか。
その顔を祥に見せれば直ぐ様、この状況が進むだろうに。
これで、本人はいたって、無自覚、だというのだから、畏れ入る。
(………ん?ナレーションなんか言った???)
…………その鈍感ヒロインのような、難聴具合もな。




