第3章 [27]
ラウラ、ナギアと別れ、アンハードゥンド別邸に帰宅したサティアナには、ラウンジから女子会の雰囲気が漏れ出ているのが感じ取れた。
「うふふふふ…、まあ!おかえりなさいませ、姉様。」
「おかえりなさいませ、サティアナ様。お邪魔させていただいております。」
サティアナの視界には、親友とともに姉を迎え入れたソフィアナと、その向かい側に座っているキャロライン・パッカーが入っている。
「いらっしゃい、キャロル。楽しそうね。」
「今日は良い茶葉が手に入りましたので。サティアナ様もいかがでしょうか?」
「嬉しいねぇ、いただきましょう。」
キャロラインがお茶の用意を始めた。
「姉様。今日のラウラ様もお美しかったですか?」
ソフィアナの単刀直入な質問に、動揺するサティアナ。
「え??…う、うん。いつも通り美しかったよ?あの方はあまり表情を変えることは無いと思っていたけれど、今日はそうでも無かったな。」
サティアナの返答に瞳を輝かせるソフィアナとキャロラインである。
「姉様、そこの所をもう少し詳しく、詳しくお願いいたします!」
「氷姫と言われる御方のどんな表情が見られたのですか!?」
「ふたりとも、お、お茶が!こぼれそうだよ、落ち着いて!」
「あ、あら嫌ですわ。私ともあろう者がはしたのう事でございました。」
ソフィアナとキャロラインは我に返りお互いを見ると姿勢を正した。
まずはキャロラインが入れてくれたお茶の香りを愉しみ、サティアナは話し始めたのであった。
「―――――で、では姉様は今度のお休みにラウラ・ポリッシュ様とお出かけになるのですか?」
「出かけるというか…出来ればこの屋敷にお招きしたいのだけど…」
「それはそれはっ、とても良いのではないでしょうか!!わたくしも全力でご協力いたしますわ!!キャロルもどうかしら?貴女、今度の休みは用事がありますの?」
「あ、ああー…、残念ながらわたくしは店の方で用事がありますの…とても残念ながら…。あっ!でも店には居りますから、ぜひ寄っていらして!!美味しい林檎のパイをご用意いたしますわよ!」
「ああ、それなら良いね。ラウラ先輩とナギアを我が家にお招きするとして、お昼ご飯とかはどうしようかなあと思っていたの。キャロルのお店なら安心して案内出来るね。」
「ぜひ個室をご用意させていただきますわ!」
「ありがとう!とても助かるよキャロル。では3人でうががいますね。」
「かしこまりました!」
「ところで姉様は、ラウラ・ポリッシュ様を先輩とお呼びしていますのね?それで、ラウラ様は姉様をなんとお呼びなのですか?」
「私のことは…サティアナと呼んでくださっているよ。」
「「きゃーーー!!」」
「あ、でもナギアもそうだよ?私が特別と言う事ではないの。」
「そうだとしてもですわ!いつの間にかそれほどまでに進展なさっていただなんて…ねえ?」
「ええ、ええ!サティアナ様のお人柄の成せる業ですね!」
ふたりとも嬉しそうに、お互いをバシバシと叩きあっている。
嬉しそう、には多少他のモノも含まれている様であるが。
ひとしきりはしゃいだ後ソフィアナが言った。
「ふうー…。この様子ですと、わたくし達がラウラ様の情報を集める前に、ラウラ様から直接姉様に入る情報の方が多くなりますわね、きっと。」
キャロラインが反応する。
「そうなりますわね、きっと。」
残念そうな二人にサティアナが反応する。
「ははは…なんか、ごめんね?せっかく張り切ってくれてたのに…」
その言葉にソフィアナとキャロラインが大きく反応した。
「いいえ、これはむしろ喜ぶべき事ですわ!」
「ええ、最も正しい情報をわたくし達も入手出来ると言う事ですものね!」
「あー…なるほどねぇ。そうなるのか(笑)」
精神逞しいふたりに少し感心するサティアナであった。
「ところでキャロル?貴女また新しい商売でもお始めになるのかしら?」
「ぎく!な、なんでそう思いますの?」
「だって!ラウラ様にお会いできる機会なのにお店を優先させるなんて、新しい商売のニオイがプンプンでしてよ?」
「はあー…さすがねソフィーは。そうなのです。いまこの国には東の地から来ている商隊が滞在しておりますの。なのでそちらの方々と少し商談などをする予定なのですわ。」
「なるほど東の地から…。さぞ珍しいものがお在りなのね?」
「ふふふ…何かは言えませんが…、わたくしが今求めているものは、そうね、食べ物とだけ申し上げておきますわ!」
「まあ!それは楽しみですこと!何かは聞きませんけれど…甘いもの?」
「何かは言いませんけれど、甘いものから塩辛いものまで色々ですわよ?」
「それはそれは。なるべく早くその求めるモノとやらを教えてもらいたいわね。ふふふ…」
「おいおいですわね。ふふふ…」
「ふ、ふたりとも、こわいってば…。」
日が暮れる前に帰路につくキャロラインを送り出すと、夕食をとりながら姉妹はラウラとナギアを迎え入れるための段取りを話し合ったのであった。




