第3章 [26]
次の日の放課後、サティアナとナギアは揃って第二屋外演習場に向かっていた。
「あのさナギア、今日は最初にちょっとラウラ先輩と打ち合いしてみてくれないかな?」
「ラウラ先輩が良いって言うなら、アタ、私の方は大賛成だよ?ラウラ先輩の剣がどんな感じなのか、興味あるし!」
門の前に差し掛かると、ラウラが門の傍にて待っているのが確認でき、ふたりは急ぎ足でラウラのもとへ向かった。
「「ラウラ先輩!」」
「ごきげんよう、ふたりとも。急がなくても良いわよ?」
「先輩をお待たせさせる訳には参りませんので。」
「あらありがとう、では早速参りましょう。」
「「はい!」」
第二屋外演習場にはほとんど人もおらず、思いきり走り回っても問題なさそうであった。
「あの、ラウラ先輩、ちょっとナギアと打ち合いしてみていただけませんか?魔法のコツを教えるにあたって、先輩の剣筋などを確認させていただきたいのです。」
「ナギアさんが良いなら。」
「私の方はむしろお願いしたいくらいです。あと、ラウラ先輩、私のことはナギアって呼んでくださると嬉しいです!」
「ふふ、可愛らしいのね、ナギア?…じゃあ少し貴女と合わせてみようかしら。」
普段は無感情にすましているラウラの、容赦無い程の破壊力を備えた笑顔が炸裂し、サティアナとナギアの心は一瞬で射抜かれたのだった。
(な、ナギア!!うらやましい〜)
(ラウラ先輩〜…こんなアタシにも優しい…すき!)
そして木剣にてラウラとナギアは軽く打ち合いを始めた。
ラウラは両利きらしく、左右どちらからでも同じ様に攻撃を仕掛けられる様であり、ナギアの速い切り返しにも対応出来ている。
相手の攻撃を受けつつ、隙を作って反撃するという闘い方の様である。
本来であれば、おそらくラウラは剣戟の間に魔法の行使が入るのであろうが、今回は剣筋を見ると言う事で魔法は使わないつもりなのだろうか。
(さすがは上級生。ナギアの速さにもついていく…。まあ、どちらも本気ではないのだけれどね。そうだね、ラウラ先輩が強化魔法を使うとしたら、隙を作る為放つ魔法と連動させるのがいいよね、きっと…でも今は魔法使ってないから、どうしようかな…)
サティアナは思い切ってふたりの打ち合いを止めに入る事にした。
ふたりが距離をとった瞬間にサティアナが声をあげる。
「ごめん、ふたりとも!いったんやめて!!」
「ん?終わり?」
「どうしたの?」
「あの、ラウラ先輩、今ってあえて魔法を使わないで闘っているのですよね?」
「ええ。剣筋を見ると言う事で。」
「ですよね!…あの、すみません、魔法アリの打ち合いに変更してもらえますか?ナギアも、お願い!」
「ええ、貴女が言うなら私はそうするわ。ナギアは、どうかしら?」
「りょーかいです!」
「では、ここではなくて魔法訓練場へ移動した方が良さそうね。」
――――――――
魔法訓練場へ着くと、幸い空きがあり、すんなりと場所の確保が出来たのだった。
気を取り直し、ふたりに打ち合いをお願いするサティアナ。
「それでは、お願いします!」
先ほどと変わらずラウラは身構え、ナギアの出方をうかがっていた。
ふたりとも木剣ではなく、自身の双剣を手にしている。
ナギアは、腰の横で剣を構えると一呼吸し目を閉じた。両手に魔力が宿り、そしてその魔力はそれぞれの剣に吸い込まれていく。
魔剣。
ナギアが所有する双剣の本領発揮である。
ナギアは、魔力操作こそ苦手であるのだが、保有魔力量のみで言えばクラスの中でも頭ひとつ抜きん出るシャルロッテに次いで多い。その潤沢な魔力を惜しげもなく魔剣たちに注ぐと、二つの剣は輝きを増した。
準備を終えたナギアは「いきます!」と宣言すると攻撃を始めた。
鋭い踏み込みで一気にラウラとの距離を詰めながらラウラに向けて両方の剣を払う。二つの剣からは火と風の魔法が放たれた。二つの魔法は相乗効果となり、大きな炎がラウラを襲う。
しかしその大きな炎はラウラまで届く前にかき消された。彼女の持つ剣先から氷の魔法が二つ飛び出し、ナギアの炎を相殺した。
そのままふたりは真っ向からの打ち合いになだれ込む。ナギアは所々で魔剣の威力を発揮させながらラウラに襲いかかる。しかしラウラも冷静に対処し、力でナギアを押し込むと同時に少し距離を取った。
態勢を取り直そうとするナギアの足元に向かって今度はラウラが氷の魔法を仕掛けると、ナギアは足を取られて少しバランスを崩した。その瞬間にラウラは距離を詰め、ナギアの首元へ剣先を運ぶ。
「うぅ!参りましたぁ!」
「ふぅ…。ラウラ、あなたも手強いわね。」
ラウラがナギアに手を差し伸べながら賛辞を送ると、ナギアは困った様な顔で少し照れた。悔しくて嬉しい、そんな表情だ。
ラウラの方が何もかも一枚上手であった。
「お疲れ様でした。お二人とも、素晴らしかったです!」
「久々に楽しかったわ。次はぜひ、貴女とも手合わせ願いたいものだわ。」
「機会があればぜひ。」
「それで、今ので参考になったのかしら?」
「ええ。まずはナギア。剣に魔力を流さない時は、やはり全身に強化魔法をかけると良いと思う。ナギアは魔力量が多いんだから、ぜひ試してみて。速さと力強さが上がるし、体幹が更にしっかりするから、さっきみたいにバランス崩す事が無くなるんじゃないかな?」
「うん、ありがと。取り組んでみるから色々と教えてね?」
「もちろん!…それでラウラ先輩ですが、すでに身体強化の魔法を用いている様なので、あとは時間差で風の魔法などを重ね掛けると、より速くなりそうですね。」
「昨日貴女がやって見せてくれた魔法ね?」
「そうです。コツをつかめばそれほど難しいものではありませんよ。」
「ふふ、やり甲斐が有りそうね。」
「ははは…」
(ラウラ先輩そんな笑い方もするんだな。どんどん目が離せなくなっちゃうよ…)
ラウラの新たな表情に絡め取られるサティアナであった。
「でも、そろそろここから出なきゃいけない時間みたいだね。」
「そうだね、続きはまた今度と言う事で良いでしょうか?」
「ええ。ナギア、貴女達は同じクラスだから授業の合間にでも教えてもらうと良いわね。」
「ラウラ先輩はどうするのですか?」
「そうね…サティアナ。アカデミーの休日で、どこか空いている日はあって?一度しっかりと教わりたいから、休みの日が良いわ。」
「え?!あ!!あの、ちょっと確認してからお返事申し上げるので良いですか?今すぐにはお答えできかねます。」
「もちろん良いわ。出来ればなるべく早く教わりたいけれど。」
「わ、わかりました!近日中には予定を合わせましょう!」
「えー、いいなーサティアナ。私も見ているだけでいいから一緒に教わりたいです〜。」
ナギアが上目遣いでラウラにお願いした。
(ふたりは無理!!むしろ、ありがとうナギア!!)
サティアナもウンウンと頷いた。
「良いわよ、そのかわり教わるのは、わたくし一人よ?ナギアにも意見など求めることにしましょう。」
「じゃあナギアも休みの日の予定聞いといてね。」
「りょーかいっ!!」
こうしてサティアナとラウラは着々と距離を縮めることになるのである。




