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第3章 [20]

 

 盛夏月に入ると、王都アンハードゥンド邸に客人が訪れた。


 休日の朝、少し遅めの朝食を取った後。ラウンジでおしゃべりをしていた姉妹の前に現れたのは、叔父のカーティスである。


「やあ、サティアナ、ソフィアナ。元気にしていたかい?」


「叔父上!今お着きになられたのですか?」

「カーティス叔父様!お久しうございますわ。」

 それぞれ軽い抱擁をしながら挨拶を交わす。


「いや、実は昨日の夕刻に着いていたのだが、色々とあって夜遅くなってしまってね。街の宿に泊まったのだよ。」


「叔父上、王都へはお独りでいらしたのですか?」


「いや、今回は二人の従者を連れてきた。サティーもソフィーも知っている人間だぞ。今は仕事中だから、取り急ぎ私だけこちらに顔出しに来たのだ。私はこれからまた出かけるが、従者も一緒に今晩こちらにお邪魔して夕食を共にするから、よろしく頼むな。」


「「はい、お待ちしております。」」



 カーティスが屋敷を去った後、姉妹は焼き菓子作りに勤しむのだった。


「私たちが知っている人って誰だろうね?」


「姉様は騎士団の方々はほぼお知り合いでしょうが、わたくしが知っている人というと…、限られますわね?」


「そうだよね。たしかソフィーの体術の師匠は…アベルさんだっけ?」


「ええ。アベル先生です。アベル先生がいらしているのかしら?懐かしい、久々にお会いしたいですわ。」


「どなたが来るのかは夕刻までの楽しみにしておこうね!」


「ええ。いまは、おもてなしのお菓子に集中することにいたしましょう!」




 ――――――――――



 夕刻、屋敷の外に馬車が停まり、中から3人の客人が現れアンハードゥンド別邸の玄関扉をノックした。



 玄関で待機していた執事のレックスが扉を開け、歓迎の意を表し、ラウンジへと先導した。

「食事の準備が整うまで、こちらでおくつろぎくださいませ。」



 ラウンジではサティアナとソフィアナが客人の到着を待っていた。

「アベル先生ですわ!姉様!」

「本当だ!それと…デニスさんだ!」



 カーティスが姉妹に挨拶をする。カーティスの後ろにはアベルとデニスが控えていた。


「サティアナ、ソフィアナ、こんばんわ。今夜は楽しく食事をしよう。よろしく頼むよ。」


「叔父上、こちらこそどうぞよろしくお願いします。それと…、お二方も。お久しぶりです!」


「叔父様、いらっしゃいませ。ささ、皆様、お茶をお入れしますわ。お座りなさってくださいませ。」


 ソフィアナの提言で皆ラウンジのソファーに座る。ソフィアナがお茶を用意し、サティアナは焼き菓子を用意した。



「アベルさん、デニスさん、お元気そうで何よりです。」


「サティアナ様も、お元気そうで何よりです。」

「背が伸びましたね?お嬢様。」


「さみしいなぁ、デニスさん。お嬢と呼んでくれないのですか?」


「いやいや、サティアナ様はもう成人されたのだし、それに総隊長の前っスよ?ゼフラ隊長を習って、人前ではきちんとしますよ!」


「わかりました。私も大人しく従うことにいたしましょう!」


 ソフィアナがアベルにお茶を出しながら話しかけた。

「アベル先生、お久しぶりです。その節はお世話になりました。お陰様で、アカデミーでいじめられることも無く、楽しくやれておりますわ。」


「アベルさん、ソフィーは下級生達に大人気で、キャーキャー言われているのですよ!」


「そうでしょうそうでしょう。だんだんと大人になられ、拝見させていただく度、麗しいお姿になられておいでですから。」


「そんなっ!あまりからかわないでくださいましっ!」


 照れて赤面するソフィアナを、サティアナ含め全員が微笑ましく見守っていると、メイド長のリリーがやって来て、夕食の支度が整った旨を報告した。



「皆さま、食事の支度が整いました。食堂へいらしてくださいませ。殿方様みなさまは葡萄酒と発泡酒、どちらになさいますか?」



「私は葡萄酒を頼もうかな。」

 カーティスが言った。


 カーティスの発言を受けて、アベルとデニスは視線を交わすと、アベルが2人分の返事をした。

「我々も同じものをお願いいたします。」


「かしこまりました。ではみなさまどうぞ。」


 リリーを先頭に皆が食堂へ移動した。




 ―――――――――



「それでサティアナ、アーサー殿下は説得出来たのかい?」


「はい、父上のお力添えで、陛下の御前で型稽古をするのは何とかお断り出来ました。叔父上もお力添えありがとうございました。ですが―――」


 結局、アーサー王子と共に国王陛下の御前にて型稽古を披露する件についてはサティアナの父であるアンハードゥンド辺境伯から許可が下りず、サティアナとしては一安心したのであるが、サティアナの型稽古を習いたいという殿下の執心には根負けをし、クラスメイトの発案を実行するに至った旨をその場にいる皆に説明したサティアナであった。



「なるほど。そう言う事なら、まあ良いのではないか?確かに学生がしたこととして話が片付けられるしなあ。サティのクラスは皆の仲が良いみたいだな。」


「はい。歴代のビッグスタークラスの中でも人数が多い様なので、それも関係しているかも知れません。叔父上のクラスはどうでしたか?」


「ああ、私のクラスは女性が1人、男性が3人でな。その女性をめぐっては、私以外の男どもがお互いを出し抜こうと競争していたなぁ、若気の至りだ。ハハハ」


「「「そんなことが!」」」


「内緒だぞ?そもそもこれはビッグスターにまつわる話だから、内緒にしなきゃいけない事だけどな!」


「カーティス叔父様。内緒にするからもう少しお聞かせくださいませんこと?その女性はお美しい方でしたの?叔父様はその競争に参加なさらなかったのですか?」


「確かに綺麗な人だったが、()()()()()に比べたらそうでもないな。テルマはとても美しい!まあその当時の私は、女性に対しての下心とは無縁で、兄上のために自分の役目を果たそうと精一杯だったからな。彼女の事は眼中になかったが、…おっと、さすがに名前は言えないぞ?笑」


 ほろ酔いのカーティスは堂々と妻への惚気を垂れ流した。


「姉様のクラスはどうですの?そう言った色恋事は?」


「私のクラス、どこかでそう言った雰囲気を感じたことは、…無いなあ…。」


「ソフィアナお嬢様。サティアナお嬢様に聞いても無理かもしれませんよー?ははは」


「たしかに…すみません姉様。」


「あ、ふたりとも〜〜!私だってもう成人なんですからねっ!そう言うデニスさんのクラスはどうだったのですか?」


「俺ですか?…俺のクラスは野郎ばっかりだったもんで、隣のクラスが羨ましくて仕方ありませんでしたね!!隣のクラスには女の子が数人いたので!!」


「そりゃ残念だったなデニス。私のクラスには女子がいたよー。」


「いいなあ、アベルさん!…アベルさん顔が良いからモテたんじゃないですか?」


「そこ、わたくしもお聞きしたいですわ!」


「えー、私の話なんて面白くないですよ?まあ彼女はクラスにいましたけど。」


「「「やっぱり〜!!」」」


 3人の男性陣の懐かしい学生時代の話を聞いて、楽しく食事は進んだのであった。




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