09 クラスメイト再会
スキルポイントを使って、いくつかの技能を得たバンプ。
その使い心地を試すため、休憩所を出て、獲物となるゴブリンを探し歩く。
しかしふと、後ろから声を掛けられた。
「ワンッ! 待てよ、ゴミ野郎っ!」
無視していると、肩を掴まれる。
「ワンッ! シカトしてんじゃねぇよ! この学園でゴミ野郎っていったら、テメーしかいねぇじゃねぇか!」
仕方なく振り向くと、見覚えのあるニヤニヤ笑いの面々がいた。
彼らはバンプにとっては一応クラスメイトで、バンプのまわりの席の男子生徒たちだった。
初登校したバンプを徹底的にイジメ抜き、バンプを不登校に追いやった主要人物たちである。
そのリーダー格の少年は、『ワン』という名で……。
『ルーザードッグ』という、Fランクの犬型モンスターを連れている。
『ルーザードッグ』は一見して、動物の犬と同じように見えるが、生物学的な分類上は『モンスター』ということになっている。
能力も、動物の犬に比べて若干優れているような……。
いや、同程度か……。
ともすれば、劣るくらいであるといっていい。
そして愛らしさにいたっては、雲泥の差。
『間の抜けた犬』という形容がしっくりくる容姿をしていた。
ワン少年のまわりには、『ウインプラット』と呼ばれる、Fランクのネズミ型モンスターを連れた、5人の取り巻きたちが。
ネズミといっても、世界的マスコットのネズミたちとは大違い。
夢の国に招待してくれるどころか、電撃を放つこともできない。
容姿も完全に『ドブネズミ』であった。
バンプは彼らと口を聞くつもりはない。
それどころか目もそらしていたのだが、ワンは執拗に絡んでくる。
「ワンッ! ゴミ野郎! テメーなんで授業に出てこねぇんだよお?」
バンプが答えずにいると、取り巻きたちが半笑いでチャチャを入れてきた。
「ゴミ夫クン、みんな心配してまチュよぉ?」
「だからさ、僕たちがクラスを代表して、ゴミ夫クンを説得しに来たんでチュよねぇ」
「僕らが来たからには、今からでも一緒に授業に出てくれまチュよねぇ?」
「嫌といってもダメでチュよぉ? 悪い子は力ずくでも連れていきまチュからねぇ」
「あれあれぇ、どうしたんでチュか? ゴミ夫クゥン?」
「チュチュチュチュ! コイツ、震えてるでチュっ!」
わざとらしいほどの大声で、笑い出す取り巻きたち。
バンプは嵐が過ぎ去るのを待つつもりでいたのだが、気が変わった。
「俺と、『勝負』しろ……!」
すると、嘲笑は高波のように大きくなる。
「チュチュチュチュ! 聞いたでチュか!? 『勝負』しろ、でチュって!」
「Gランクのゴミ夫クンが、格上のチュウたちにマッチを挑んでくるだなんて!」
「どうやら恐怖のあまり、頭がおかしくなったようでチュっ!」
「このあとはお漏らしでもするんでチュかぁ!? チュチュチュチュチュチュチュッ!!」
『勝負』というのは、テイマーどうしで戦うこと、いわば『決闘』のようなもの。
テイマー学園の生徒は、まだテイマー見習いなので、学園の敷地内だけで行なうことができる。
ルールは単純で、相手のテイマーを倒した側の勝利。
相手が降参するか、『戦闘不能』となれば終了。
それ以上、すなわち殺すまでやるのは御法度となる。
戦いにはペットも参加するが、ペットの状態は勝敗には影響しない。
自分のペットを倒されても負けとはならず、また相手のペットは倒しても倒さなくてもかまわない。
勝つとご褒美があり、負けるとペナルティが与えられる。
それはふたつあり、まずひとつ目は、勝った側は負けた側の、1レベルぶんの経験値を貰える。
そしてふたつ目は、『マッチ順位の変動』
テイマー学園には、成績による順位付けとは別に、このマッチの勝敗による順位付けもなされている。
この順位が高いほど、対人戦において強いテイマーということになる。
もちろん高ければ高いほど良く、ランク評価の際にも考慮される。
現在のランキング1位は言うまでもなく『チャンプ・シルヴァーリーフ』。
そして最下位は『バンプ・シルヴァーリーフ』。
ちなみにこのマッチは、『挑戦』という形で発生するのだが、自分より低いランクの者には挑むことができない。
『挑戦』する場合は、相手が同格か格上である必要がある。
なお挑まれた相手は必ず受ける必要はなく、同じ相手に対して3回まで断ることができる。
3回目以降は断ることができないが、マッチをする日時を指定することができる。
これにより、不調時の狙い撃ちを避けることができる。
お互いベストなコンディションで戦いに臨むことができるというわけだ。
なお相手が承諾した場合は、即時、戦いが発生する。
ワンや取り巻きたちは、バンプことをさんざんゴミと罵ってきた。
そこまで嘲った相手に勝負を挑まれて、断れるはずもない。
「ワンっ! いいぜぇ! このワンが、受けてやるよ!」
しかしバンプは首を左右に振る。
「いいや、お前じゃダメだ」
「チュチュチュ! マッチを挑んでおきながら、ギッタギタにされるのを恐れているでチュ! だったらこのチュウが受けてやるでチュ! でもギッタギタになるのは変わらないでチュ!」
「いいや、お前でもダメだ」
「ワンッ!? テメーはいったいナニを言ってんだぁ!? 自分でマッチを挑んでおきながら、ダメだなんて……! でももう遅いぜぇ! テメーはどっちみち、ワンたちにギッタギタにされて、授業に引きずりだされるんだからなぁ!」
「マッチを受けてくれたら、授業には出てやるよ。お前ら全員が、俺の相手になるならな……!」
不敵な笑みとともに放たれた一言に、我が耳を疑うような表情になるワンたち。
「わ……ワンッ!? テメェ、いまなんつった!? 正気か!?」
「チュウッ!? チュウたち6人全員に、マッチを挑もうだなんて……!」
「マジで頭がイカレたようでチュッ!」
先ほどまでの嘲りはどこへやら、信じられないモノを見るかのようなワンたち。
彼らのペースはすっかり、バンプに握られてしまっていた。
「俺はお前たちと違ってヒマじゃないんだ。やるのか、やらないのか、さっさと決めろ」
「ぐっ……グワンッ!? さんざんワンたちにイジメられてたゴミのクセして、調子に乗りやがってぇ! いいぜっ、やってやるっ! ワンワン、ワーンッ!!」
ワンの遠吠えのような雄叫びとともに、バンプたちの身体が赤く輝く。
それは、マッチの開始を告げる光であった。




