21.体温
冬はひと肌恋しくなる季節ですよね.
あと、太陽が沈むのが早い早い.
寒い日は手を繋ぎたい.
温かい人とくっつきたい.
そんな考えを持つのは、この物語の子らとて例外ではないのです.
「さて、そろそろ帰るか.」
「うん、そうだね.」
俺が2つの逆三角のクッキー生地を食べ終わる頃、笑ちゃんは椅子からすっくと立ち上がった.
見れば、外はもう太陽が沈みかけて暗くなってきている.
「まだ4時すぎくらいなのに、もう暗くなってきてる.」
「冬だからな、仕方ない.」
「まぁそうなんだけどね.」
ただ、ちょっと残念なんだ.
そんな俺の気持ちを知るはずもなく、笑ちゃんはスタスタと歩いていってしまう.
小さな後姿を追いかけて、少し早歩きにするとすぐに追いついた.
「笑ちゃんってさ、小さいよね.」
「んー、まぁ、体格に恵まれたとは言えないな.」
「小さいほうが可愛いよ.」
「私は可愛さなんて求めてない.」
「それは….」
女の子としていいのか悪いのか.
笑ちゃんらしいと言えば笑ちゃんらしいんだけど.
ふと、ゆらゆらと手持無沙汰に揺れる小さな手が目に入った.
俺のと、どの位違うんだろ.
「∑何してるんだ//!?」
「え?何って….手を握ってるだけだけど?」
真っ赤になって、笑ちゃんは手をブンブン振った.
でも、今回は離してあげない.
きっと、今すごく意地悪な顔してるんだろうな、俺.
「~っ//」
言葉にならない声をあげる笑ちゃんにもっと意地悪したくなって、その手を自分の口元に運んだ.
途端に、俺の手の中にすっぽり入ってしまうほど小さな手はビクッと震えて.
その手の主はというと、林檎みたいに顔を真っ赤にして、眼を見開いている.
「ひ、ひ、卑猥だっ///!」
「∑え!? 全然卑猥じゃないでしょ!っていうか卑猥って、」
「卑猥だ//! そんな、手に、キス、とか//!」
「笑ちゃん、動揺し過ぎ(笑)」
「お前が冷静過ぎるんだチャラ男が//!」
「∑俺チャラくなんてないよ!!?」
「うるさい、放せバカ//!」
笑ちゃんが大きな声を出すのと、彼女が俺の手を振り切るのが同時だった.
途端、急に訳のわからない切なさが俺を襲う.
寂しい.
寂しい.
寂しい.
「笑ちゃん、」
「しばらく私に触るな//!」
「ごめ、本当に嫌だったなら謝るから、」
だから、そんな風に俺を拒絶しないで.
「∑何泣きそうな顔してるんだ?」
「別にそんな顔してないし….」
「いやしてるだろ. 涙目だぞ.」
「…少し目がゴロゴロするだけ.」
「ふーん?」
「まだ行きたい場所とかある?」
「うーん、ないかな.」
「じゃあ、帰ろうか.」
うん、そう言って君は頷いて、また足早に歩きだす.
近付きたい.
ぎゅってしたい.
大切なんだって伝えたい.
「笑ちゃん!」
小さな背中が振り返る.
揺れる金髪、ひらめく黒いスカート.
何、
そう言って振り返る、まだ幼さが残る女の子.
心拍数が上がる心臓.
耳に響く自分の脈動.
「あの、良かったら、」
言いたい言葉.
言ってしまって、もし失ってしまったら?
失いたくないと、言葉をせき止める口.
「おんぶ、してあげましょうか…?」
言いたい事と全く違う言葉.
あー、もうっ.
こんなんだから、2年も片思いするはめになるってのに.
何かもう、泣きたい.
色んな意味で.
「そうしてくれるとありがたい.」
え、
顔を見つめると、別段照れているわけでもない彼女の顔.
手を繋ぐのはダメでおんぶは平気って一体?




