15.お弁当
お弁当、美味しそうに食べている人っていいですよね.
女性にしろ、男性にしろ、たくさん食べている人を見ていると
何だか元気が出るような気がします.
自分が作ったお弁当なら尚更.
喜んで食べてもらえたら嬉しいものなんでしょうね.
うんしょ、うんしょ.
今朝方、頑張って3階まで上ったのも束の間.
私は今、苦労して上ってきた階段を下りている.
理由は簡単. 犬島が今朝の約束を果たしに来たからであった.
「猫乃先輩.ご飯の時間ですよー!」
一応、他の上級生の前では私のことを苗字+さん付けで呼んでくるあたりがいやらしい.
犬被りめが.
っていうか、まるで猫をご飯に呼ぶときみたいな言い方するな.
ふと、そんなことを思い出して、なんとなく一段下の階段を下りている犬島の背中に頭突きをした.
犬島が手に持っているお弁当がグラりと揺れる.
「∑うぉう!!?危ないよ笑ちゃん!」
「良いじゃん、私のお弁当なんだし.」
「え、俺の心配は??」
「ありんこ程もしてない.」
「えぇー!!ありんこ位は心配してくれたっていいじゃん!」
「えーっと、屋上に行くには….」
「うわー、笑ちゃんお得意のもろシカト攻撃キター.」
「はいはい.」
犬島を追い抜いて廊下に出たら、通路を右に. 突き当りをまた右に.
ずーっと行って、職員室の前の階段を上り切った先に屋上がある.
「よ、いしょっと.」
重厚な作りの扉.それのノブをゆっくりと回す.
見た目に反することなく、十分な重さの扉を、肩を使って押し開ける.
「うわー….」
背後から、感心したかのような声が聞こえてきた.
今日は天気が良いおかげで、空が近い.
この光景を見たら、きっと誰もが犬島のような反応をするだろう.
「隅っこのほうでいいか.」
「あ、うん.」
隅っこにレジャーシートを敷く.
ちょっとだけ、遠足のようだと思った.
「俺弁当買ってくるから、先に食ってていいよ.」
「大丈夫.」
「ん?待っててくれるの??」
「や、そっちの大丈夫じゃない.」
私の言葉を聞いて、途端に怪訝そうな顔つきになる犬島.
あれだな、何か. 近所の犬も時々そんな顔して蝶を眺めてる時があるな.
――…じゃなくって.
「お弁当、犬島の分も作ってきたから.良かったら食べて.」
「え、え――――!!」
「うるさい.」
「んどぅふ!!?本当にいいの?」
「いろいろ、お礼.」
溝乙を殴ったにも関わらず、コイツは普通に会話を進めてきた.
しかも目を輝かせながら.
やめてくれ. 何だか凄く自分が悪い人間のような気がしてくる.
いや、実際良い人間でもないんだけどさ.
というか、コイツを殴った拳がジンジンする.
犬島が持ってくれていたお弁当の包みを開く.
大きいお弁当箱のほうが、犬島の分. 一回り程小さいお弁当箱のほうが、私の分.
隣を見ると、犬島はきっちり靴を揃え、シートの上に正座をしていた.
デカい男の正座姿というのは、なかなか面白い.
「お茶は??」
「飲む!」
「はい、どうぞ.」
「ありがとー.」
水筒のカップに、お茶を煎れて渡してやる.
温かい、なんて言いながら嬉しそうに笑う姿は、無邪気な子どものようで.
「ね、もう食べていい??」
「うん、いいよ.」
「いっただっきまーっす!!」
寒空に届くくらいの大きな声を出し、犬島は勢いよくお弁当を手に取った.
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パシャ
パシャ、パシャ
かこかこかこ
パシャッ
「おい、」
「んー??」
「んー?じゃないわ. いい加減に写真撮るのやめて食べろ!」
「だって、初めて笑ちゃんが作ってくれたご飯だよ??記念にあと1枚….」
「よーし、今日はお昼ご飯いらなかったんだな.」
「∑いる!!いりますいります!!」
少し脅したら、やっとケータイを置いた.
まったく….
そんなに写真を撮るほどのものでもないと思うんだけど.
「いただきます.」
「いただきます.」
私に続いて、改めて手を合わせ、犬島はおかずを口に運んだ.
ここまでかかった時間.
何と23分.




