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第二十四話 EX技

 キャシーもすでに逃げたかなと思い視線を送ると、キャシーは立っていた。顔は厳しいが諦めた顔ではない。現状で一番、肝が据わっている。


 キャシーが諦めていないのに先に瓦が匙を投げるわけにはいかない。最期の時が来るまで足掻くしかない。狂乱波砲拳を打とうとすると、体の奥に不思議な力が湧き上がってきた。


 理由はわからない。可能性があるとすれば、狂乱波砲拳は格闘ゲームに存在した技と同じ仕組みがある。格闘ゲームではダメージを受けたり、攻撃を当てたりすると必殺技ゲージが蓄積されていく。ゲームの仕様と同等で力が溜まっている。


 いまなら強力な攻撃を出せる。名付けるなら極・狂乱波砲拳だ。だが、おそらく極・狂乱波砲拳をもってしても黒い球体は破壊できない。


「待てよ、もし狂乱波砲拳がゲームと同じ扱いなら、ゲージの蓄積は最大で三本。ゲージ三つ消費では独自技が出るな」


 予想が当っていれば落雷が使える。瓦は座ると嘉納に頼んだ。

「いまから雷を落とす。全部避けてくれ。回復魔法系のカードがあれば俺に使ってくれ」


 瓦が何をしようとしているか、嘉納にはわからないはず。それでも嘉納は「承知」と請け合ってくれた。中々に気持ちのよい男だ。


 落雷を発動させた。今度は雷が落ちた。思った通りだった。ジ・アポカリプス・リボーンはボスの大技と同じ。一回の戦闘に二回は使えない。

 

 雷が降り注いだ。嘉納は器用に雷を避ける。瓦は座った状態なので避けられない。激しい痛みを感じるが、気を確かに持つ。二度、続けて雷が瓦を打った。意識が飛びそうになった時に体が温かくなる。


 お願いした通りに回復系の魔法カードを嘉納が瓦に使ってくれた。四度目の落雷が瓦を打った時に、力の蓄積がマックスになった。ゲージ三本が溜まった状態だ。瓦は心に浮かんだ技を叫んだ。


「大御所級漫画家有名連載休載特権!」


 自分で叫んでなんだが、瓦は技の効果がわからなかった。意味もわからなかった。だが、事態は動いた。黒い球体が白い光に包まれて消えた。安心はできない。先ほども消えたが黒い球体は現れない。


「助かったのか?」と嘉納がボソリと呟く。


 静けさの中、瓦は技の効果を理解した。黒い球体は消滅したわけでも、破壊されたわけでもない。黒い球体は時空を超えて未来に移動した。どれくらい未来に移動したかはわからない。来週には戻ってくるかもしれないし、十年待っても戻ってこないかもしれない。


 名声と権力を手にしたマンガ家は大御所である。大御所になればいつ再開されるかわからない有名連載の休載が許される。


「打ち切りでも、終了でも。予定休載でもない。いつかは戻って来るが、いつになるか、まるでわからないが、許される特権の如き効果、か」


「ドロー」と嘉納が叫ぶ声がした。嘉納の方を見ると、嘉納がカードを引いていた。嘉納は事態を理解していない。瓦は嘉納を落ちるかせるために言い聞かせる。


「大丈夫だ。問題ない。危機は去ったんだ」

瓦の言葉を聞いてないのか、嘉納は宣言を続ける。


 「魔法カード、攻撃強化を発動。これにより攻撃力は二倍になる。続いて魔法カードの疾風を発動、速度が二倍になる。魔法カード、太陽の女神を発動、ターン終了時まで状態異常効果を受けない」


 嘉納は興奮のあまり状況が理解できなくなっている。

「落ち着け嘉納、もう心配ない」


「ダイレクト・アタック!」


 嘉納が叫ぶと瓦に向かってきた。「おい、ちょっと待て」と止めようとしたところで嘉納の強烈な一撃が瓦の顎に入った。消えゆく意識の中で瓦は理解した。


「嘉納と戦いの途中だった」


 誰も戦いは中止といっていない。また瓦の技のせいで大きな問題になったので瓦は責められて当然。でも、これは、ないよなーと思ったところで意識は消えた。

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