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推しの姉が逆ハーレムを築く世界に転生しました〜推しを見守るだけのはずが、初恋が動き出しました〜  作者: ゆい
祝福の中で

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4/10

月の下で

4話です。

 その夜、ふと目が覚めた。


 部屋の中は静まり返っていて、窓から差し込む月明かりだけが薄く床を照らしている。ぼんやりした頭のまま視線を動かして、私は小さく瞬きをした。


 少し離れたベッドの上で、アリアが起きていた。


 暗い部屋の中で、白い横顔だけがぼんやり浮かんで見える。


 眠れないのだろうか。


 でも、そんなふうには見えなかった。アリアはただ静かに窓の外を見つめていた。まるで何かの迎えを待っているみたいに。


 胸の奥が妙にざわつく。声掛けなければ、アリアが遠くに行ってしまうように感じた。


「……アリア?」


 小さな声で呼ぶと、その瞬間、アリアの肩がびくりと揺れた。


 アリアにも、そんなふうに驚くことがあるんだ。


 アリアはゆっくりこちらを振り返る。


「起こしてしまったかしら?」


「……ん」


 眠気の残る頭で頷くと、アリアは少し黙ってから静かにベッドを降りた。足音はほとんどしない。


 そのままこちらへ歩いてきて、そっと毛布を引き上げる。


「冷えるわ」


 優しい声だった。


「アリア、ねないの?」


「眠れなかっただけ」


 短い返事。でも、どこか壁みたいなものを感じた。


 胸がちくりと痛む。


「……なに、みてたの?」


 一瞬だった。


 本当にほんの一瞬、アリアの表情が凍った気がした。


 月明かりの下で、その紫の瞳がわずかに揺れる。まるで、触れられたくないものを見透かされたみたいに。


 どうしてそんな顔をするの。私はアリアの味方なのに。


「……月よ」


 少し遅れて、アリアが静かに答えた。


 つられるように窓を見る。


 夜空に浮かぶ月は、怖いくらいに、憎たらしいくらいに綺麗だった。


「きれい」


 ぽつりと呟くと、アリアがほんの少しだけ笑った。


「そうね」


 その声は、ひどく遠い。


 静かな沈黙が落ちる。でも嫌じゃなかった。むしろ、苦しいくらい落ち着く。


 私はぼんやりアリアを見上げる。


 やっぱり綺麗な人だと思った。まだ子どもなのに、妙に大人びて見えた。いつも隣にいるはずなのに、どこか遠くにいるように感じる。


 胸の奥が、不安でぎゅっと痛くなる。


「アリア」


「なあに」


「……さみしい?」


 その瞬間、アリアの表情がはっきり揺れた。


 息を呑む音が聞こえた気がした。けれどアリアは何も言わず、ただじっと私を見つめている。


 その目が、なぜだか泣きそうに見えて、胸が苦しくなった。


 長い沈黙のあと、アリアがゆっくり目を伏せる。


「……どうして、そう思ったの?」


 少しだけ掠れた声だった。


「……なんとなく」


 本当に、なんとなく。


 でも、いつも笑っているのに本心から笑っていないような、ずっと一人ぼっちな人の顔に見えた。


 アリアはしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐いた。


「変な子」


 そう言って、私の髪を撫でる。


 その手は驚くほど優しかった。


 優しいのに、どうしてか泣きたくなる。胸の奥がぎゅうっとしめ付けられた。


 その手に縋りつきたくなる。でも上手く動かない身体がもどかしい。


 眠気がゆっくり戻ってくる。


 意識が沈んでいく、その直前。


 最後に見たアリアの表情は、まるで眩しいものを見るみたいだった。


「……あなたは、本当に何も知らないのね」


 ぽつりと落ちた声は、ひどく寂しそうだった。


 その声が胸に刺さったまま、私はゆっくり眠りへ落ちていった。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


静かな回ですが、アリアとリリアの距離感を書けていたら嬉しいです。

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