表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの姉が逆ハーレムを築く世界に転生しました〜推しを見守るだけのはずが、初恋が動き出しました〜  作者: ゆい
祝福の中で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/10

不思議な姉

2話です。

 生まれてから、どれくらいの時間が経ったのだろう。


 最初は光と音の塊みたいだった世界も、少しずつ形を持ち始めていた。


 ぼやけていた顔が見えるようになって、耳に入る言葉も、なんとなく意味を理解できるようになってきた。


 そして、その頃にはもう確信していた。


 ——アリアは、やっぱり普通じゃない。


 その日の朝、部屋の空気はいつもより少しだけ慌ただしかった。


 侍女たちが忙しなく動き回っている。


 柔らかな布で顔を拭かれ、髪を整えられる。窓から差し込む朝の光がかすかに揺れていた。


 何があるんだろう、と考えていると、見慣れない女の人が部屋へ入ってきた。


「本日より、お二人の言葉の教育を担当させていただきます」


 ああ、そういうことか。


 内心で少しだけ納得する。


 確かに、周囲の言葉はかなり分かるようになってきていた。まだ口は上手く動かないけれど、何を言っているかくらいなら理解できる。


 なら次は、話す側になる番なのだろう。


 少し胸が弾む。


「では、まずはアリア様から」


 自然と隣を見る。


 アリアは相変わらず静かだった。


 小さな子どもとは思えないくらい、落ち着いている。


「おはよう、ございます」


 澄んだ声が部屋に響いた。


 思わず目を見開く。


 発音も、間の取り方も、全部、あまりにも綺麗だった。


 まるで何度も練習してきた人みたいに自然で、幼い子どものたどたどしさがほとんどない。


「……さすが、アリア様でございます」


 家庭教師が感嘆したように呟く。


 その言葉に、私は妙に納得してしまった。


 だって、本当にすごいのだ。


 時々ぞっとするほどに、この子は生まれてからずっと静かで、どこか完成されている。


 ——小説の中のアリアもこんなふうだったんだろうか。


「では、リリア様」


 名前を呼ばれて、はっと意識を戻す。


 よし、と気合を入れた。


「……あー」


 口を開いて出てきたのは、間抜けな音だった。


 ……いや、分かってたけど。


 心の中でちょっとだけ落ち込む。


 頭では言葉を理解できるのに、上手く口が動かない。


 もどかしい。赤ちゃんの身体ってこんなに不便なんだ。


 隣でアリアが完璧に話していたせいで、余計に惨めな気分になる。


 しかも、私はアリアと違って人生2周目なのに……。


 まぁ仕方ない、私は私だ。


 そう自分に言い聞かせながら、もう一度口を開く。


「……お、は……」


 うまく言えない。


 舌がもつれる。


 焦るな、と思えば思うほど変な力が入った。


 その時だった。


「……おはよう、ございます」


 静かな声が隣から落ちてくる。


 アリアだった。


 一語ずつ、ゆっくり聞かせるみたいに言葉を置いていく。


 まるで、私が言えるまで待ってくれているみたいだった。


 胸の奥が少しだけざわつく。涙が溢れそうだった。


 どうして。


 この人は、どうしてこんなに。


「……お、は……よ……」


 つられるように声を出す。


「ええ、とてもよくできていますよ、リリア様」


 家庭教師が優しく微笑んだ。


 けれど私は、その言葉より隣のアリアが気になって仕方なかった。


 そっと視線を向けると、その紫の瞳と目が合った。


 アリアは静かに微笑む。


 優しい笑みだった。


 でも、笑っているのに、なぜかひどく遠くにいるように見えた。


 どうしてそんな顔をするんだろう。


 まだこんなに小さいのに。


 胸の奥が、ちくりと痛んだ。

読んでくださってありがとうございます。

少しずつ姉妹の関係を書いていけたらと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ