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推しの姉が逆ハーレムを築く世界に転生しました〜推しを見守るだけのはずが、初恋が動き出しました〜  作者: ゆい
祝福の中で

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はじまりは、祝福の中で

初投稿です。楽しんでいただけたら嬉しいです。

 眩しい。


 焼けつくような光が、沈みかけていた意識を無理やり引きずり上げる。


 息を吸った瞬間、肺の奥がひりついた。


 苦しい、うまく息ができない。


 喉が勝手に震えて、掠れた泣き声が漏れる。嫌でも空気が肺に流れ込んできて、胸が痛かった。


 そのすぐ隣で、もう一つ小さな産声が響く。


「……双子です! おめでとうございます!」


 弾んだ声が耳に刺さる。


 誰かが泣いていて、誰かが笑っていた。


 慌ただしい足音。布の擦れる音。甘ったるい香油の匂いが鼻の奥にこびりつく。


 ぼんやりした意識の中で、私は思った。


 ——えっ、赤ちゃんになってる?!


 しかも、双子。隣にはもう一人、同じ日に生まれた赤ん坊がいる。


 けれど、その存在に気づいた瞬間、背筋が凍りそうになった。


 その赤ん坊はあまりにも静かすぎる。


 私はこんなにも慌てて驚いて必死に泣いているのに、隣から伝わってくる気配は妙に落ち着いていた。


 赤ん坊って、もっとぐちゃぐちゃで、無意味に泣いて、生きるだけで精一杯なものじゃないの?


 なのに、隣にいるその子は、まるで全部知っているみたいだった。


 ぞわり、と鳥肌が立つ。


 怖い。でも、目を逸らせない。


 なんでこんなに惹かれてしまうのだろう。


「アリア様……なんてお美しい……」


「リリア様も、とても愛らしいです」


 アリア、リリア。


 その名前が耳に落ちる。


 ——リリア。


 それが自分の名前なのだと、不思議なくらい自然に理解できた。


 私はリリア。そして隣にいるのが、姉のアリア。


 そこまで考えた瞬間だった。


 頭の奥で、何かが弾ける。勢いよく記憶が溢れ出して頭がズキズキする。


 白い蛍光灯、講義室のざわめき、スマートフォンの通知音、机に広げたノート、書き殴った化学式、薬学部。


 息が止まりそうになる。


 私は知っている。


 見たことないはずの世界を。


 夜中にレポートをやって、コンビニのおにぎりで夕飯を済ませて、眠い目を擦りながら講義を受けていた。


 あの生活を、私は知っている。


 じゃあ、ここは何?夢?死後の世界?


 それとも。


 そこまで考えて、ぐちゃぐちゃの頭のまま、つい笑いそうになった。


 だって、これ、転生じゃん。


 転生するにしてもさ、もっとこう、普通何かあるじゃん。神様とか、使命とか、「君には特別な力があります」とか。


 でも、何もない。あるのは前世の記憶だけ。


 ……いや、十分凄いけどさ。


 私には死んだ記憶なんて存在しないのに何故か生まれ変わってる。


 意味がわからなさすぎて怖い。なのに、胸の奥が熱かった。


 最低だ。きっと親を泣かせてしまっているのに、本来生まれるはずのリリアを奪い取ったのに。


 それなのに、わくわくしている自分がいた。物語の始まりみたいだ、なんて思ってしまった。


 その間にも、周囲は少し騒がしい。


 出来る限り静かな足音、抑えられた声、張りつめた空気。誰も彼もが忙しなく、無駄な動きをしない。


「アヴェーヌ公爵家に双子のご令嬢……これほどの慶事はございません」


 その言葉に、胸がどくりと跳ねた。


 アヴェーヌ公爵家。その響きに、記憶の奥を強く引っ掻かれる。


 そして、ばらばらだったものが一気に繋がった。


 アリア。


 アヴェーヌ公爵令嬢。


 悪役令嬢。


 ——本当に?


 心臓が跳ねる。首を締め付けられたように苦しい。


 ここ、あの小説の世界?


 息が浅くなる。


 私は知っている。


 この先、アリアがどうなるのかを。


 彼女は最後、全てを失う。


 愛されないまま、誰にも理解されないまま、嫌われたまま破滅する。


 彼女の家族や使用人、攻略対象にヒロイン、その上ファンのほとんどが彼女を嫌っていたけど、私は彼女に憧れていた。


 コメント欄で彼女を嫌う言葉ばかり並んでるのを見るたび、苦しくなった。


 どうして誰も、この人の苦しさに気づかないんだろうって、ずっと思ってた。


 強くて、誇り高くて、でも不器用で。


 絶対に傷ついているくせに、絶対に助けを求められない人だった。


 誰かに助けて!って言えばいいのにってずっと思っていた。


 誰かに縋ればいいのに、彼女は最後まで笑っていた。


 だから、苦しかった。


 ただのキャラクターのはずなのに、気づけば私は、彼女が泣く場面を見るたび胸が痛くなっていた。


 アリアから目を離せなくなっていた。


 その時だった。ふいに、隣から気配がした。


 びくり、と身体が強ばる。


 ほんの一瞬。けれど確かに、何かがこちらを見た気がした。


 息が止まる。ぞくり、と背筋が冷える。


 まだ赤ん坊だしそんなはずがない、と思う。


 でも、隣にいるこの子は、こんなにも小さいのに、気のせいだと済ませられないほどに完成されていた。


 そのくせ、小さな身体が、ほんのわずかに強ばって見えた。


 本当に、この子が破滅するの?


 もし。


 もしも、あの結末を変えられたなら。


 誰にも愛されないこの子を私が幸せにできたら。


 胸の奥がぐちゃぐちゃになる。


 怖すぎて泣きそうなのに、笑いそうだった。


 どうしても放っておけなかった。


 たとえこの先、私の人生がどうなったとしても助けたいと思ってしまった。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

次回から少しずつ日常が動き始めます。


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