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可愛い弟を溺愛しながら生きていく  作者: 綾雅(りょうが)9月は3冊!


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228/254

228.ウルティアは家族を切り売りしない

 父上を殺そうとした暗殺者を、母上は味方に引き入れた。その辺も複雑でややこしい話があるらしい。母上はからりと明るく笑い「私に勝てたら教えてあげても良くてよ」と言い放った。


 戦う相手が増えたな。苦笑いして曖昧に頷く。母上にもバシリオにも勝てる気がしなかった。たとえ二人が年老いて衰えたとしても、勝てないだろう。だからこの部分は謎で終わる。それで構わないと思った。人は何でも知りたがるが、届かないものもある。


「話してくれてありがとう、バシリオ。ひとまず……アルダ王国の件を片付ける!」


 国は滅びたが、貴族が残っている。彼らから財産と権力を回収し、民に再分配しなければならない。領地を治める者を分家から選び出し、任命して管理させる。やることはいっぱいあった。


「よい心がけです、お嬢様」


 バシリオは立ち上がって一礼し、執事の立ち位置に戻った。壁際に控える彼は背筋を伸ばし、いつもと変わらない。なぜか誇らしくなった。これほど立派な執事がいる家もそうはないだろう。


「お姉様、分家への通達なら手配したわ」


「……は?」


 せっかく褒められたのに、もう終わった? 私は何もしていないぞ。振り返った先で、ベスが綴じた書類を差し出した。父上が手に取って捲り、目を通して頷く。


「よく出来ている。やはりシルベストレが跡を取り、現場でベアトリスが動く形が最良だな」


「そうね、アリスは実行力があるのに考えることを後回しにするから」


 父上の意見には賛同するが、母上はちょっと酷いぞ? それでは脳筋ガスパルと同じ扱いではないか。私はもっと知的なのに。むすっと口を尖らせた。


「そういうところよ、お姉様。安心なさって。私がお姉様を上手に使うから……ね?」


 唇に人差し指を当てて可愛く言われたら、反論できないな。確かにそのほうがいいだろう、と大きく頷いた。


 アルダ王国は分家の管轄となり、本家はサンバドル王国と対峙する。聖獣のルカがいる以上、無関係を貫くのは無理があるだろう。先代と当代の王の下半身事情はともかく、国としての形も揺らいでいた。


 うっかり関わり続けると、倒れてきた際に寄りかかられる。それは迷惑だった。だが、ルカを差し出して犠牲にする選択肢はない。私の我が儘ではない。一族の決断だった。


「家族に迎えた子を、どんな理由があろうと放り出すなんてしないわ」


「ウルティアの誇りに懸けて、そんな愚行は許さん」


 母上と父上の断言に、わかっていても嬉しさがこみ上げる。ガスパルが分かったような顔で、私の肩を叩くので手の甲を抓った。なぜお前が得意そうなんだ!

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