226.茶は出さんから帰れ
カランデリア様は自国の騎士団を引き連れ、当然のように騎乗して去った。あの人が、たとえドレス姿であろうと馬車に乗るのは想像できない。意識を失っても馬の背で揺られていそうだぞ? そう口にしたら、母上が大笑いした。
バンバンと叩かれた背中が痛い。
「よくわかってきたわね」
ルカは抱っこが嬉しいらしく、ご機嫌で鼻を鳴らす。可愛いのでこのまま抱っこだ。ガスパルが「下ろしたらどうだ?」「獣だろう」と騒がしいので、睨んでおいた。
可愛さでルカに勝てたら、話を聞いてやる!
カランデリア様に随行するのは、騎士団のみ。後衛の兵士や荷馬車は、追いかける形となった。イグナシオ殿下達のように、全員で移動する意味がないからな。兵士の数が多いので、荷馬車を襲撃される危険は少ない。騎士団は足が速いうえ、強いので不安はなかった。
そもそも、王都から先はモンタネールの領地に変わったのだ。貴族の粛清も必要だが、ひとまず襲う馬鹿は……いないと思う。いたら返り討ちにされるだろう。
「セシリオは結局、何をしに来たんだ?」
「異母弟が逃げたので追ってきた」
背中の痛みに顔を顰めながら、腰にも手を当てている。受け身を取る間もなかったらしい。痛いとぼやきながら、バシリオの視線を避けている。私を盾にするな。
「触るな! 減る!!」
ガスパルが唸る。私はそう簡単に減らないぞ、たぶん。婚約者のガスパルが隣に立つので、バシリオの視線を遮る役目は果たしていた。
「バシリオ、構うな」
「申し訳ございません、お嬢様。反応されると狩りたくなりまして」
丁寧に言っても「面白いから揶揄った」わけか。バシリオは甥にあたるセシリオに興味はない。投げ飛ばされた段階で、対象外になった。鍛えても将来使えるようにならないと判断されたわけだから、セシリオにとって良かったのか悪かったのか。
バシリオの中では「能無し」の烙印を押された状態だった。
「あの偽王子を連れて、さっさと帰ってくれ」
「偽、王子? いい綽名だな、私も使おう」
お茶は出さんから、はよ帰れ。言葉を飾らずに追い返す。だが、セシリオの用事はまだ終わっていなかった。
ルカに手を伸ばして触れようとしたので、ガスパルが防ぐ。気が利くな!
「お姉様、たぶん思っているのと違うわ」
苦笑いするベスが追い付いて、こそこそと教えてくれた。ルカは今、私の腕に抱かれている。つまり胸元にいるわけだ。ルカの頭を撫でようとすれば、その手が胸に当たるかもしれない。ガスパルが気にしているのはそこだと言われて、自分の胸を見下ろす。
ぺたんこではないが、そんなに膨らんでいないぞ? 触れようとしても探さないと無理だろう。そう口にしたら、一斉に反論が返ってきた。
「恥じらいを持て」
「絶対に違うし、俺のだ!」
なぜセシリオに言われなければならないんだ? あと、ガスパルは手が空いたら殴る! 私の胸は私のだ!




