225.ルカが何か出したぞ?
ぴりりとした空気の中で睨み合う……前に、ルカが引導を渡した。可愛い「きゃう」はとんでもない威力を秘めていた。可愛いが限界突破したのもあるが、まさかの実力行使だ。
どんっ!
ツノの先から……いま、何か……出たか? 抱っこする私にも衝撃が来た。咄嗟に後ろへ左足を下げて堪えたが、事前に予告してほしい。
「ルカ、今のはなんだ?」
得意げに胸を張るルカのツノが少し伸びていた。長くなった角の先が、ぼんやり光る。指先でつついたら、ぴりっと痺れた。あれだ、冬に起きるぱちっとした刺激に似ている。
「凄い! ルカったら、可愛いだけじゃなくて強いのね」
ベスが褒めたことで、ルカは調子に乗った。きゃう、きゃうと二発の追加発射だ。発射でいいんだよな? 光る何かが飛び出て、騎士が剣から手を離した。痺れているようだ。
「大丈夫か?」
顔を寄せたら、ぽっと赤面された。ガスパルがぐいと間に割り込む。なんだ? 礼儀のなってない男だな。
「痺れていますが、痛みはありません」
丁寧に私に報告されたので、大丈夫かと尋ねた返答だろう。ご苦労と労いそうになり、他国の騎士だったと気づく。
「そうか、問題なくてよかった」
ルカのためにも良かった。その意味に気づいたベスが声を立てて笑う。その間に父上と母上が距離を詰めていた。ルカを覗き込み、母上がツノの周りを撫でる。
「凄いわね、立派な戦力だわ」
「どういう仕組みだ? 何が出ていたか興味がある」
カランデリア様も驚いて目を丸くしたあと、私に両手を広げて待っている。近づいたら、ルカごと抱きしめられた。
「聖獣は眉唾だと思っていたのよ。まさか本物だなんて」
ルカが潰れないよう腕に力を込めていたら、ガスパルに助け出された。
「俺の婚約者だ、お返し願おう」
「私、無礼な子も嫌いじゃないわ」
ふふっと笑う余裕のカランデリア様にとって、ガスパルは「無礼な子」と表現されるらしい。年齢的にも「子」ではないと思うが? 首を傾げる私は、カランデリア様からガスパルへと腕を移動しただけ。強く抱きしめたら、ルカが潰れる!
「ルカが潰れるだろ!」
叫んで、勢いでガスパルの脛を蹴った。さすがにカランデリア様相手なら迷うが、ガスパルなら遠慮なくいける!
ここでようやく起き上がったセシリオが、騎士に肩を借りて到着した。
「いまのは……聖獣、の……?」
受け身をきちんと取らなかったのか? 背中が痛くて息が切れると文句を言うセシリオに呆れた。王子と名の付く人種は、ほとんどが役立たずだな。
「バシリオ、もう済んだのか」
「はい、ゴミは敷地外へ出すよう手配いたしました」
侵入者である偽王子は生きている。もし殺したなら、バシリオが証拠隠滅しているはずだ。引き摺っている時点で、生存確定だった。周囲を見回すと、セシリオに同行した騎士に受け渡しが終わっている。これで事件は終わりだな。
カランデリア様の見送りをしないと。




