215.酒の場で国名を決める
国の名称は散々迷い、酒の入った家族で悩み抜いた結果……「ウルティア国」でいいのでは? という結論が出た。もちろん、分家の者にも確認を取る必要はある。だが、王国や帝国よりマシだろうと父上は笑った。もし王国や帝国になったら、肩書きが面倒くさい。
「その場合の肩書きはどうなるの?」
大量の酒を飲んでいるのに素面と変わらぬ母上は、こてりと首を傾げる。酔いが回った父上は隣に転がっていた。さり気なく母上の膝に手を乗せるも、ぺちんと叩かれる。引こうとした父上の手首を掴み、母上は引っ張った。
イチャつくなら、寝室でやってほしい。娘や息子の前でやめてくれ。そんな本音を溜め息に込めるベスは、ルカを捕まえて撫でまわし始めた。現実逃避だろうか。
「肩書き……殿下とか嫌なんだが」
「姫ならどうだ?」
「却下だ」
ガスパルは良かれと思ったらしいが、絶対に嫌だ。ベスなら姫でもいい。カランデリア様なら今まで通り「アリス」と呼び捨てでいいし、公式の場では「ベアトリス殿」で構わない。そう口にしたら、にっこり笑った。やはり綺麗な人だな。
「引き揚げるか」
私の一言で、解散となる。ベスはルカを連れていくと言い始め、ルカも素直についていくので許可した。イサベル様は酔い潰れ、夫のイグナシオ殿下が抱き上げて寝室へ移動となる。カランデリア様はグラスだけでなく、まだ手付かずだったワイン瓶も二本回収して引き揚げた。
父上と母上は放っておいても問題ない。適当に切り上げるだろうし、バシリオに任せられる。立ち上がった私に、ガスパルが真っ青な顔で寄りかかった。
「どうした?」
「……酔った」
そんなに飲んでいたか? 木箱の上に置いたグラスは、注いでやった記憶がない。自分で足して飲んだのかもしれないが……大した量ではないだろう。酒に弱いのは意外だったな。支えて立ち上がり、明らかに具合悪そうなガスパルを客間へ送り届ける。
送り狼になる心配は無用だが、すれ違い様にバシリオに注意された。
「お嬢様、まさかとは思いますが……襲ってはいけません。もちろん、誘うのも禁止です」
「……わかっている」
いくら鈍い私でもわかるぞ。だが、こんな夜遅い時間に手合わせを願うほど、非常識ではないつもりだ。襲い掛かったら反撃してくるだろうが、万全ではない相手を誘っても楽しくない。きっぱりと理由もつけて返したら、満面の笑みで見送られた。
理解してくれて嬉しい。ガスパルは「そうじゃ……ない」とか呟いていたが、よく聞こえないので放置した。自分より長身で大柄な男を運ぶと、凄く疲れる。そのまま倒れ込み、動くのが面倒で目を閉じたら……朝になっていた。
叱られる状況じゃないか!




