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可愛い弟を溺愛しながら生きていく  作者: 綾雅(りょうが)9月は3冊!


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214/237

214.豪快な夕食を楽しむ

 元第三王子の実名を誰も聞いていなかった……いや、聞いたはずが覚えていないらしい。父上も首を傾げているので、記憶に残さなかったようだ。不要な知識は排除される、仕方のないことだ。結局呼び方に迷い「偽王子」で落ち着いた。


「偽王子との手合わせは期待できそうにないが、叩きのめしたかった」


「それでは虐めだろう」


 やれやれと思いながら、口を挟む。結局、バシリオの裏事情はわからないまま。それぞれ国ごとに客間へ移動し、着替えて戻ってきた。夕食は晩餐会扱いだが、豪快に済ませる。あくまでも豪華ではない。着替えの通達はバシリオ経由だが「汚れてもいい服装」の時点で、晩餐会かどうか怪しかった。


 庭先で野営と同じように、肉の塊を焼く。切り分けた肉を皿で受け取り、好き勝手な場所で食べるスタイルだった。我が家では珍しくないが、イサベル様は目を輝かせて喜んだ。やや驚いた顔をしたイグナシオ殿下も、場に馴染んでいる。


 堂々と芝生の上に座り、横の木箱にグラスを置いた。ワイングラスの形をしているが、金属製なのでカップと表現するほうが近いか。酒を流し込み、肉に齧り付く。


「今まで食べたどの肉より美味しいわ」


 ナイフとフォークで上品に切り分けていたイサベル様は、ついに手で骨を掴んだ。私達家族はもちろん、ガスパルやカランデリア様も同様だ。カランデリア様は不思議と口の周りを汚さずに食べ進め、肉を削いだ骨を綺麗に残した。


 ベスは両手で骨を掴み、小さく食べ進める。今日は羊肉で、ルカが骨付き肉をバリバリと豪快に齧った。いい音をさせて骨を砕くから、頭を撫でてやる。ベスが諦めた骨を受け取り、嬉しそうに走り回る。


「ルカ、骨は大丈夫なの?」


「狼と同じらしいから、問題ないだろう」


 以前から狼は羊を襲っていた。同じ種族なら、骨まで食べて問題ないはず。


「このタレうまいな」


 羊肉に合わせ、葡萄の酢を使ったソースが用意されている。隣にジャムを混ぜたコケモモのソースもあった。炎で照らされた状態では色の区別がつきにくい。


「どっちだ?」


「甘いほうだ」


「ああ、コケモモだ」


 頷いてまた齧り付くガスパルは両手も服も襟も、べったりとソースがついている。その姿に頬が緩んだ。上品に食べるのもいいが、こういった面も好ましい。一族に婿入りし、こういった環境に馴染めないなら気の毒だからな。


「お兄様はウルティアに馴染みそうね……ところで、ウルティアは王国にするのかしら?」


 イサベル様の言葉に、私とベスは顔を見合わせた。その間をルカが走り抜ける。


「王国?」


「なんだか似合わないわね」


 そう、王が治める国が王国だが……ウルティアには似合わないな。

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