212.響きが似ているとは思ったが
「た……たかが、執事、風情がっ」
なんとか聞き取れる言葉を発するクズに視線を戻す。なんとも見苦しい。師匠の一撃はかなり手加減したというのに、と呆れた。もしバシリオが本気なら、とっくに息の根が止まっている。元暗殺者を舐めるなと言いたいが、余計な口は開かないのが吉だろう。
「たかが執事ですが、少なくともあなたよりは人としての道理を弁えております。それと……特に隠していたわけではありませんが……」
バシリオは言葉を止めて母上を見つめた。微笑んで頷く母上の承諾を見て取り、改めて口を開く。
「サンバドル王族の血なら私も受け継いでいますよ」
……は?
「え?」
「……嘘だろ」
様々な声が上がる中、カランデリア様も目を見開いていた。知らなかったぞ? 知っていたのは母上だけのようで、父上も顎が外れそうな顔をしている。どういうことだ? もしかして、本当にバシリオとセシリオの名前が似ているのは関係が……?!
混乱して言葉が出ない。喉に声が詰まったように感じ、ぱくぱくと口だけが動いた。イサベル様から「あらぁ……」と驚きの声が漏れ、無言のイグナシオ殿下も目を丸くして凝視している。セシリオに至っては驚きすぎて固まった。
ある意味、ベーア侯爵親子が凄い。話を聞いていなかったようで、セシリオを守る位置で周囲を見回している。
「あの……師匠? どういう」
「訓練中以外は、バシリオと呼ぶようにお願いしましたが?」
厳しく言われて「すまない」と謝った。いや、そうではないぞ。重要な部分を誤魔化されないため、深呼吸して切り出した。
「サンバドル王族の血とは、どういう意味だ?」
「そのままです。サンバドルの先代王が侍女に手をつけて産ませた子ですから。当代の王も同じことをなさったと伺い、非常に残念ですね」
「そういった面が緩い一族なのだろう」
思わず、本音で肯定してしまった。セシリオが「いやいや」と全力で否定するも、まったく信憑性がないぞ? そもそも出会った頃に平民のフリをしていたセシリオは、どう見てもチャラかった。女の子に声を掛けまくっていたし、先代と当代の王が庶子をこさえているのもおかしい。
王族の血が外へ漏れないよう、どの王家も注意している。そのため追放される王族は子が生まれぬよう処置されるほどだ。厳重に管理されているからこそ、王家の血は価値があるのに。
「……叔父上?」
「そのような呼ばれ方は不本意です」
セシリオの掠れ声での確認を、バシリオはばっさりと切り捨てた。




