210.王族がずらりと並ぶ中の俗物
穏やかに収める気はない。どれだけ華々しく散らせるか、が勝負の分かれ目だな。カランデリア様は期待の眼差しで、次の一手を待っている。大人しく並んで座るイサベル様は、ゆったりと扇を広げた。顔を半分隠し、夫にしな垂れかかる。イグナシオ殿下はそんな妻を引き寄せた。
「なぜ、わしらが」
「おや? お年を召したせいで混乱しておられるようだ。モンタネール王国の女王陛下、ならびにキロス王国の王弟殿下と妃殿下に対して……ご自分が優先されると? いやはや、ボケは怖いですなぁ」
ボケたと決めつけ、父上がぐさりと突き刺す。ちくちくと針の筵を用意する程度では満足できないのだ。何度も押しかけては、ウルティアを味方につけようと余計な画策をしてきた。過去の鬱憤を晴らしたいのだろう。ロエラ公爵の愚かな独り言を拾って利用した。
反論したいが、何を言っても藪蛇になる。そう判断する程度の知能はあるようだ。ロエラ公爵は悔しそうに口を噤んだ。その隣に立たされた自称第三王子は、凄い形相でセシリオを睨んでいる。どうやら自分が席を追われたのに、悠々と座っている義兄が許せないらしい。
次に突くならここか。
「王族がずらりと豪勢ですわね」
おほほと笑いながら、イサベル様が油を投下する。火を点けるのは夫の仕事か? イグナシオ殿下がすらりと長い足を組んだ。その膝の上へ、組んだ両手を載せる。
「そういえば、ウルティアもついに国を興されるとか。我がキロス王国とも末永く、良好な関係を築いて頂きたいものです」
サンバドル王国はまだ知らない情報だ。三カ国が共同でアルダ王国を攻め落とし、その領地を分割するなど。何も知らないセシリオは驚きの表情をすぐに取り繕った。
目を見開いてロエラ公爵が、父上を見る。その視線が母上へ移動し、ぐるりと回って私で止まった。その表情から、彼の考えが手に取るようにわかる。あまりにも浅はかだが……自称第三王子と私を結婚させれば、両方の国に食い込めると皮算用しているはず。
サンバドル王家の血を引くことは確実な男を、私の夫に? それ以外の取り柄がないのに、無理だろう。そもそもガスパルがぐいぐい食い込んできているしな。しっかり私の腕を確保したガスパルは、威嚇するように目つきが鋭い。ガルル……と唸る声が聞こえそうだぞ。
「それに、サンバドル王国の聖獣ルカの主人もアリスですもの」
イサベル様が油を撒き、着火したイグナシオ殿下。その炎に新たな薪を焚べたカランデリア様は、機嫌が良さそうだった。三人の王族の隣で、セシリオの顔色が青くなって……徐々に白くなっていく。らしくもなく色が抜けているぞ? 色男。




