202.地域格差を考慮するべき
領地の分割案が通ったうえ、城の取り壊しでも意見が一致した。残るは貴族の財産没収と、民への再分配だが……ここで思わぬ意見が出た。
「全額返す意見を聞いたけれど、先に大事なことがあるの」
イサベル様が指摘したのは、壊れたまま放置された橋やがたがたの街道だった。これらの公共工事を行う必要がある、と。確かに道は酷かった。あれだけ徴税しておいて、まったく還元してこなかった証だ。
「なるほど」
頷きながら、笑顔で先を促した。当然、指摘した人が次の案を出すのだろう? ウルティアでは当たり前のことで、モンタネールも同様。カランデリア様も「どうぞ」と先を急かす。
慌てる様子のないイサベル様の隣で、イグナシオ殿下が口を開いた。
「公共工事に民の手を借りたい。その分しっかり支払いをし、農閑期の収入源としてもらう。道や橋が整えば、商人達が活発に行き来するはずだ」
以前は公共工事の仕事で得られるのは、ごく少額だった。国や民のためになると言い聞かせ、ほぼ無償奉仕に近い状態で使役する。挙句、食事や寝床の代金を徴収する貴族もいたとか。それに比べたら、破格の金額を提示していた。
示された新しい案は、きちんとした収支のバランスが取れている。貴族から回収した金の半分を公共工事へ、残金の半分を飢饉対策の貯蓄へ。余った分をすべて均等に各家へ配る。
「いいと思う」
ベスはウルティアの代表として賛成を表明する。イサベル様の視線が向けられたので、私も同意を示した。カランデリア様はやや考えてから、一つだけ条件を出した。
「領地の管理者によって、かなり地域格差があるわ。やるなら、地域ごとに適用しましょう。全体にまぜて、旧アルダ王国として扱えば……負担が少なかった地域の民は得をするし、搾取された地域は恨みを募らせる結果になると思うの」
もっともな指摘だった。カランデリア様のモンタネール王国方面は、そもそも貴族の腐敗が少なかった。最低限、公共インフラは整っている。税率もさほど高くなかった。理由としてモンタネール領の存在がある。カランデリア様の統治が行き届いている分、近隣の貴族は搾取できなかったのだ。
無理に税額を上げれば、領民はモンタネール領へ逃げ込んでしまう。それを防ぐため、搾取しづらかったのだろう。同じことがウルティア領と接する領地でも起きていた。搾取が一番酷かったのは、王都周辺と王家の直轄領だ。
「元の貴族領ごとに変えて対応する。三年くらいかな」
目安を口に出せば、ガスパルが「俺は賛成だ」と騒いだ。イサベル様が「わかったわよ」と呆れ顔で賛同し、肩を竦めたカランデリア様も反論はなかった。
友人同士、ゲームのルールを決めるように……あっさりと統治方法が確立されていった。




