201.お隣さんとは仲良くしたいわ ***イサベル
とても素敵な姉弟と出会った。最初は姉妹かと思ったの。ウルティア一族の名は、どの王家も知っている。味方に付ければ最高だが、敵に回すと恐ろしい。人の裏をかいて頂点に立つ各国の王家に、そこまで言わせる傑物揃いだった。
一番恐ろしいのは、一族の中でほとんどが賄えること。外交と内政をそれぞれに担当する当主夫妻から始まり、戦士はもちろん、建築や農業、林業に至るまで。様々な分野の専門家がいる。戦う者がいれば武器を作る鍛冶屋があり、農業で使われる器具もすべて一族内で生産可能。
国としての機能を持つ街すべてが、一つの家族となって動く。他国から見れば、これ以上に恐ろしい敵はいなかった。つけ入る隙が無い。
キロス王国なら農業面が弱い。かつて奪われた領地が穀倉地帯であり、そこで育てた農作物の分が不足していた。何年もかけて徐々に他の領地へ振り分けているが、元から穀倉地帯が生まれたのは国の中で最も水が豊かで土が良質だからよ。他の地域が簡単に追いつけるはずがない。
アルダ王国なら鍛冶の技術が弱い。独立したモンタネール王国も他国から穀物の半分を輸入している。こういった弱点が見当たらないのが、ウルティアだった。小さな不足はあっても、他の部分で補えるのだ。穀物が不足すれば肉を狩り、川から魚を得る。その技術が揃っていた。
他国では簡単に切り替えられない部分を、臨機応変に受け入れる。その器こそが、ウルティアの真価だわ。そう考える私の意見に、夫イグナシオも反論しなかった。
今回の交渉の最大の目的は、リエラ侯爵ガスパル……私の兄をウルティアに縁付かせること。婿入りでもいいし、嫁にもらう形でも問題ない。ウルティアと良好な関係を築けと命じられた。
「ねえ、なんていうか……距離が縮まっている気がするの」
「王命がなくとも縁付きそうだ」
イグナシオから見ても、そう思えるのね。よかった。お兄様が自分の幸せを考えている。それだけで嬉しいのに、さらに可愛い義姉となる義妹と義弟が出来そうだなんて! 一応義姉だけど、事実上綺麗な妹よ。ベスちゃんも妹枠にしようかしら。
「最高だわ」
ふふっと笑う私の頬に唇を寄せ、軽く触れて離れる。引き寄せるイグナシオの腕に身を任せ、彼の肩に頭を預けた。
「兄上への報告はまだ先だ。それまでに、両方の『国』と距離を詰めておこうか」
外交を得意とする夫の言葉に、少し考えて頷いた。そうね、両方とも国だわ。モンタネールはすでに独立して王国を名乗っている。ウルティアは自らを王として国を興したことはなかった。それでも、実質的には国と匹敵する規模を誇る。ならば、国と同列の扱いをしましょう。
今後はお隣さんになるんですものね。仲良くしたいわ。




