197.女傑同士の水面下の探り合い
アルダ王の首を城門前に安置したのは、奪われること前提だった。そのため護衛として配置した兵士も、ケガをしないよう言い聞かされている。危ないと思ったら、さっさと引いて王の首を渡せ。そう言われた兵士は、きょとんとしていたが。
奪った相手を追跡する班は別にあり、探索を得意とする者に任せた。アルダ王の首を得た賊の居場所を突き止める頃だろう。
「アリス、ベス! ついでにお兄様。もう戦いが終わりましたのね」
笑顔で挨拶するイサベル様へ、一礼して挨拶に代える。興味深そうな顔で立つカランデリア様を紹介すると、二人はしばらく見つめ合った。無言の時間が怖いのだが? と口に出そうか迷う私に「やめておけ」とガスパルが首を横に振った。
こういう時は放置が一番だ。関わると巻き込まれるぞ。その忠告に、何がとかどういう風にとか。無粋な発言は出なかった。なんとなく察するものがある。
「キロス国王代理として、王弟イグナシオが参上した。我が国の騎士は立派に戦っただろうか?」
イグナシオ殿下が思わぬ蛮勇で割って入る。妻を守るつもりなのかもしれないが、少し顔色が悪いな。
「あら。モンタネール女王カランデリアですわ。お見知りおきを……」
にこりと笑った美女に、イグナシオ殿下は顔を赤らめることはなかった。代わりに一歩下がる。本能なのか? ある意味、凄いな。
モンタネールはカランデリア様、キロス王国はイグナシオ殿下とイサベル様、ウルティアはベスと私が話し合いに出る。手招きされて、肩を落とした。ベスの補佐をすると決めたのは私だ。自分で決めたのだから守るが……この面子での話し合いは恐ろしい。
うっかりした一言が数十年祟りそうだった。
王城の一室、外交用に使われてきた客間に籠る。アルダ王国の領地の分割案、王城の取り壊し、今後の貴族や民の扱いについて。まとめて話し合いの場が持たれた。紛糾する箇所がないので、そのまま承認されていく。
拍子抜けするほど順調だったが、カランデリア様がこのまま終わるはずもなく。獲物と定めたイサベル様と睨みあっている。表面上は淑女の微笑みなのに、裏で毒蛇同士が威嚇するような……。
「話し合いが終わったなら、ウルティアは離れていいか? 馬の手入れがある」
私やベスが愛馬を大切にしていることは、カランデリア様もイサベル様も知っている。あっさり承諾されて、退室できた。この後の始末は、イグナシオ殿下に丸投げだ。
「助かった、姉上」
「いや……ぎりぎりだった」
ベスと顔を見合わせて苦笑いし、言葉通り愛馬の元へ向かう。モニカとブリサは、他の馬と草を食んでいた。近くには警護役として、分家が数人立っている。手を挙げて合図し、モニカに近づいた。ぽんぽんと叩いてからブラシを取り出す。ぶるんと首を振って擦り寄る姿は、本当に可愛い。
やっぱり可愛いものがすべてだな。美しいものは棘が多過ぎる。




