196.王の首はどこへ消えた?
「あの人が提案した施策とほぼ同じね。モンタネールは賛同するわ」
カランデリア様はあっさりと頷いた。彼女の言う「あの人」は夫であるエルネスト殿のことだろう。武に長けたカランデリア様を補佐し、愛し愛される男性だ。戦う能力はないが、様々な処理を担当している。書類だけでなく、不穏なことも片付けてきた。策略に長けていると聞いたが。
ある意味、ベスと重なるタイプの策士だ。まあ、うちのベスは可愛くて、馬の扱いも上手なうえ、戦えて可愛い。表現が重なったか? まあいい、可愛いのは事実だからな。
ベスとの打ち合わせが終わり、すぐに私はカランデリア様を訪ねた。同じ階の客間を使用していたので、すぐに顔合わせが叶った。革鎧を脱ぎ、煽情的な室内着を纏った美女はソファーで微笑む。
向かいに座っているのが、私でなければ襲われるぞ? カランデリア様は本当に美しく妖艶だが、私は可愛いほうが好きだからな。いや、そもそも女性なので襲うもないか。
「キロス王国との協調だけか」
「そんなの簡単よ。あなたがリエラ侯爵にしなだれかかって、お願いしたらすぐだもの」
「……カランデリア様、ガスパルは王ではない」
キロス王が決めることを、勝手にガスパルが判断できるはずないだろう。揶揄われていると知りながら、一応苦言を呈しておく。が、心底不思議そうに首を傾げられた。同じ方向へ首を倒す。
「まあいいわ」
何がいいのか、彼女の中で話は終わったようだ。弧を描いた真っ赤な唇に食われそうなので、そそくさと逃げ出した。
数日後、キロス王国から使者が到着した。予想通り、王弟イグナシオ殿下と妃のイサベル様だ。これから戦うのかと思うほど大量の護衛を連れて到着し、カランデリア様とベスが迎える。私は少し離れた城壁の近くにいた。当然のように隣にいるガスパルだが、出迎えなくていいのか?
「構わんだろ。お偉方同士で話せばいい」
「……ガスパルもキロス王国ではお偉方ではないのか?」
「剣を振り回す武骨な男だぞ」
まあ、本人が気にしないならいいか。
「王の首、どこへ消えたと思う?」
わかり切っている問いを口に出す。ガスパルは無言で肩を竦めた。近くにいるアマンダが「もう腐ってるだろうに」とぼやいた。カンデラは嫌そうに「ちょっと、やめてよ。想像しちゃったじゃない」と眉根を寄せる。
この数日の間に、王の首は奪われた。見張りを置いたのに、首は持ち去られる。眠らされた見張りに心当たりはないようで、食べ物への混入か煙などの吸引か。どちらにしろ用意周到らしい。
「もう使い道はないと思うが……」
青い空を見上げながら、口元が緩むのを誤魔化した。




