195.平民にするなら公平に
女装が好きなだけで、女性になりたいわけではなかった……はず。こてりと首を傾げたものの、つい癖で出た可能性もある。それなら指摘されたら恥ずかしいだろう。女言葉は無視して、内容を吟味した。
戦争に勝った以上、敗戦国であるアルダ王国を解体するのはこちらの自由だ。王は責任を取る形で首を落とされ、他の王族も捕らえて牢に放り込んだと聞く。アルダ王国を復活させたいなら、残った貴族の中から王を決めて一から立ち上げるしかない。
「国が亡びれば、王侯貴族の肩書きも消える。当然だな」
「お姉様は理解が早くて助かるわ。肩書きがないのに、財産や領地を得る理由はないわよね? もう管理人としての貴族は不要だもの。だから、平民になった貴族から財産は没収する」
言うまでもなく、領地は我らが分割する。財産まで奪ったら、生きていけないのでは? と思うも、今まで地位に胡坐をかいて好き勝手してきた。それに下手に金を持たせたままにすれば、連中は反逆してくるだろうし。
「あの者達に財力を残せば、すぐに傭兵を集めて挑んでくるわ。馬鹿だから仕方ないけれど、それでは民が巻き込まれてしまうでしょう?」
領主によっては、土地を取り戻すために民を脅して戦わせる可能性もある。没収が妥当だな。
「奪ったお金は、すべて……民へ均等に分けるわ。領地替えでごたごたする間、民の生活を支えないといけないものね。貴族のお金は元をたどれば、すべて民の血税よ。彼らには受け取る権利があるわ」
「なるほど」
民は領主が代わっても、今までと同じかそれ以上の生活が保障されれば問題ない。新しい領主が、以前の税金を取り返してくれるなら、諸手を挙げて喜ぶだろう。モンタネールとウルティアは、国境沿いに広がるため交易も盛んだ。他国から穀物を仕入れられる。
民は次の収穫まで安心して暮らせるうえ、多少なり手元にお金が残る。苦しい家計も助かるはずだった。いままでの徴収額が多過ぎたのだが、取り返せるなら多少は溜飲が下がるだろう。
「いい案だな」
「カランデリア様に承認を頂いて、それからキロス王国側と共有しましょう」
にこりと笑うベスの額を、指先でつんと突いた。きょとんとした顔のベスに「女性言葉になっているぞ」と告げる。直るかと思ったら、そのままだからな。気恥ずかしい思いをするなら、外で指摘されるより私が告げるべきだ。
「え? あ、……うん、ありがとう」
今気づいたようで、ぱちぱちと何度も瞬きしたベスはきゅっと唇を引き結んだ。首からじわじわと赤が広がり、頬や耳も染めていく。うん、これは文句なしに可愛い。




