194.赤面するほど熱い告白
王城に大量の部屋が余っているため、勝手に使用することにした。許可する人の首と胴が離れてしまったので仕方ない。死人をそれ以上辱めないのは、モンタネールもウルティアも同じだった。キロス王国にはそういった習慣がないらしく、不思議そうにしている。
王の首は丁重に……城門前に安置した。一応護衛もつけておく。こうしないと、盗まれる可能性があるのだ。だが王の死を民に知らしめるには、展示するのが一番だった。石を投げるのも禁止と札を立てる。
「この札の必要性がわからん」
ガスパルが首を傾げるので、この国の王侯貴族がいかに腐っているか説明した。その中には、婚約者を罵って婚約破棄を叫んだ元婚約者の話も含まれる。
「淑女を公然と辱めるのは、万死に値する」
「まあ、相手が私なので淑女には程遠かったが」
擁護するわけではないが、謙遜でもない。一応ドレスで着飾るが、ウルティア独自のドレスだった。いつでも戦えます仕様なのだ。その辺を説明する前に、ガスパルは私に向き直った。
「いや、淑女だ。たとえ違ったとしても、女性は大切に慈しむ存在だぞ? ましてやアリス殿は、一騎当千の実力者だ。敬意を表して当然ではないか」
怒っているぞと滲む口調で、淡々と並べる。その言葉が、今までに聞いたどの口説き文句より響いた。じわじわと首や耳が熱くなり、赤く染まっていくのが自分でもわかる。恥ずかしさに両手で耳を覆った。
「お姉様、部屋に戻りましょう」
結婚には賛成を表明していたはずのベスが、私の腕を掴んで引っ張る。素直に腕を組んで割り振られた部屋へ飛び込んだ。扉を閉めて、足早にベッドを目指す。腰の剣帯を外して、そのまま寝転んだ。
「お姉様、落ち着いたら打ち合わせよ。カランデリア様と相談しているのだけれど」
細かな部分の調整があると言われ、呻くように了承を伝える。もう少し待ってほしい。深呼吸して、ベッドのシーツに顔を押し付ける。うぅ……と声を絞り出し、ついでに思いも吐き捨てた。あの羞恥はなんだ? 今まで口説かれても気にならなかったのに。
実力を認めて褒めた。ただそれだけなら、一族の者に何度も称えられた。一度もこんな状態にならなかったのだ。何か不可思議な力を使ったのではないか? そう疑うほど、自分の感情の乱れが理解できなかった。
「お姉様、まだかかる?」
「いや……今行く」
私情は後回しだ。深く息を吐いて気持ちを切り替え、頬をパチンと叩く。大股に歩いて、ベスの向かいに腰かけた。間のテーブルには白い紙が置かれている。
「まず、アルダの貴族をすべて平民に落としましょう」
「難しいのではないか?」
「戦勝国の権利ですわ。文句があれば、戦って勝ち取るべきですもの」
ベス……男性の姿で女性の言葉はその……可愛い範疇に入らないぞ??




